三角形の辺の長さの比を求める問題で、「メネラウスの定理」という公式を使ったことはありませんか?
メネラウスの定理は、三角形の3辺またはその延長線と、1本の直線との交点について成り立つ定理です。
この定理を使うと、複雑な図形の問題でも、線分の比を簡単に求められることがあります。
しかし、
「なぜ3つの比を掛けると1になるのか?」
「どの順番で線分の比を書けばよいのか?」
と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。
この記事では、メネラウスの定理の使い方や覚え方を具体例とともに解説した後、三角形の相似を利用して公式を証明します。
特に証明では、補助線を引く理由や途中式をできるだけ省略せず、数学が苦手な方にも理解できるよう丁寧に説明していきます。
1. メネラウスの定理とは?
メネラウスの定理とは、三角形の3辺またはその延長線を1本の直線が横切るとき、線分の比について成り立つ定理です。
三角形 \(ABC\) において、次のように点 \(D,E,F\) を取ります。
- 点 \(F\):辺 \(AB\) 上
- 点 \(E\):辺 \(AC\) 上
- 点 \(D\):辺 \(BC\) を \(C\) 側に延長した直線上
ただし、点 \(D,E,F\) は一直線上にあるものとします。

このとき、次の等式が成り立ちます。
\[ \boxed{ \frac{AF}{FB}\times \frac{BD}{DC}\times \frac{CE}{EA}=1 } \]
これがメネラウスの定理です。
3つの線分の比を決まった順番で掛け合わせると、積が1になります。
なお、これはメネラウスの定理が成り立つ代表的な配置の一例です。
上の図や次章以降に出てくる図は∠Bが90°の直角三角形のように見えますが、
直角三角形でなくとも、上で述べた条件を満たせばメネラウスの定理は成り立ちます。
2. メネラウスの定理の使い方・計算例
まずは、具体的な問題で使い方を確認してみましょう。
2.1 線分の長さを求める問題

まず、メネラウスの定理より、
\[ \frac{AF}{FB}\times \frac{BD}{DC}\times \frac{CE}{EA}=1 \]
が成り立ちます。
ここで、求める長さ \(CD\) を \(x\) とおきます。
点 \(D\) は辺 \(BC\) の延長線上にあるので、
\[ \begin{aligned} BD&=BC+CD\\ &=6+x \end{aligned} \]
となります。
また、問題文より、
\[ \frac{AF}{FB}=\frac23 \]
\[ \frac{CE}{EA}=\frac34 \]
です。
これらをメネラウスの定理に代入すると、
\[ \frac23\times\frac{6+x}{x}\times\frac34=1 \]
となります。
左辺を整理すると、
\[ \frac12\times\frac{6+x}{x}=1 \]
両辺を2倍して、
\[ \frac{6+x}{x}=2 \]
両辺に \(x\) を掛けると、
\[ 6+x=2x \]
したがって、
\[ \boxed{x=6} \]
となります。
よって、求める長さは、
\[ \boxed{CD=6} \]
です。
2.2 線分の比を求める問題

メネラウスの定理より、
\[ \frac{AF}{FB}\times \frac{BD}{DC}\times \frac{CE}{EA}=1 \]
が成り立ちます。
ここで、
\[ \frac{CE}{EA}=x \]
とおくと、
\[ \frac23\times\frac52\times x=1 \]
となります。
分数を整理して、
\[ \frac53x=1 \]
両辺に \(\frac35\) を掛けると、
\[ x=\frac35 \]
となります。
したがって、
\[ \boxed{CE:EA=3:5} \]
です。
このように、メネラウスの定理を使うと、3つの比のうち2つが分かっている場合に、残りの1つを求めることができます。
3. メネラウスの定理の証明・導出
ここからは、メネラウスの定理がなぜ成り立つのかを証明していきます。
証明には、中学校で学ぶ三角形の相似を利用します。
3.1 証明の方針を考える
まず、今回の証明では、メネラウスの定理の公式を先に示し、その左辺が \(1\) に等しくなることを証明します。
証明したい式は、次のとおりです。
\[ \frac{AF}{FB}\times\frac{BD}{DC}\times\frac{CE}{EA}=1 \]
この式の左辺には、3つの線分の比が登場します。
そこで、三角形の相似を利用して線分の比を書き換え、最終的に分子と分母を約分できる形に変形することを考えます。
具体的には、次の手順で証明を進めます。
- 補助線を引いて、相似な三角形を2組作る。
- 相似な三角形の対応する辺の比を利用し、公式の左辺に含まれる線分の比を書き換える。
- 3つの分数を掛け合わせ、分子と分母を約分することで、積が \(1\) になることを示す。
それでは、まず補助線を引いて、相似な三角形を探していきましょう。
3.2 補助線を引く
点 \(C\) を通り、辺 \(AB\) に平行な直線を引きます。
この直線と、点 \(D,E,F\) を通る直線との交点を \(G\) とします。

なぜ、このような補助線を引くのでしょうか?
それは、辺 \(AB\) と補助線 \(CG\) を平行にすることで、相似な三角形を作るためです。
この図では、次の2組の三角形が相似になります。
\[ \boxed{\triangle DBF\sim\triangle DCG} \]
\[ \boxed{\triangle EAF\sim\triangle ECG} \]
それぞれの相似関係を確認していきましょう。
3.3 1組目の相似から線分の比を求める
まず、三角形 \(DBF\) と三角形 \(DCG\) に注目します。

点 \(B,C,D\) は一直線上にあり、点 \(F,G,D\) も一直線上にあるため、
\[ \angle BDF=\angle CDG \]
が成り立ちます。
また、
\[ BF\parallel CG \]
なので、平行線の性質より、
\[ \angle DBF=\angle DCG \]
となります。
したがって、2組の角がそれぞれ等しいため、
\[ \triangle DBF\sim\triangle DCG \]
となります。
相似な三角形では、対応する辺の比が等しいので、
\[ BD:DC=BF:CG \]
となります。
したがって、
\[ \boxed{ \frac{BD}{DC}=\frac{BF}{CG} } \tag{1} \]
が得られます。
3.4 2組目の相似から線分の比を求める
次に、三角形 \(EAF\) と三角形 \(ECG\) に注目します。

点 \(A,E,C\) は一直線上にあり、点 \(F,E,G\) も一直線上にあるため、対頂角の関係から、
\[ \angle AEF=\angle CEG \]
が成り立ちます。
また、\(AF\parallel CG\) なので、平行線の錯角の関係から、
\[ \angle AFE=\angle CGE \]
が成り立ちます。
したがって、2組の角がそれぞれ等しいため、
\[ \triangle EAF\sim\triangle ECG \]
となります。
これにより、対応する辺の比から、
\[ \frac{EA}{EC}=\frac{AF}{CG} \]
が得られ、両辺の逆数を取ると、
\[ \boxed{ \frac{CE}{EA}=\frac{CG}{AF} } \tag{2} \]
が得られます。
3.5 2つの式を代入して証明を完成させる
ここまでで、次の2つの式が得られました。
\[ \frac{BD}{DC}=\frac{BF}{CG} \tag{1} \]
\[ \frac{CE}{EA}=\frac{CG}{AF} \tag{2} \]
これらを、証明したい式
\[ \frac{AF}{FB}\times \frac{BD}{DC}\times \frac{CE}{EA} \]
に代入します。
すると、
\[ \begin{aligned} &\frac{AF}{FB}\times \frac{BD}{DC}\times \frac{CE}{EA}\\[4pt] &=\frac{AF}{FB}\times \frac{BF}{CG}\times \frac{CG}{AF}\\[4pt] &=\frac{AF\cdot BF\cdot CG} {FB\cdot CG\cdot AF}\\[4pt] &=1 \end{aligned} \]
となります。
したがって、
\[ \boxed{ \frac{AF}{FB}\times \frac{BD}{DC}\times \frac{CE}{EA}=1 } \]
が成り立つことが分かりました。
以上で、メネラウスの定理を証明できました。
今回の証明で重要なのは、補助線によって2組の相似な三角形を作り、線分の比を約分できる形に変換したことです。
4. メネラウスの定理の覚え方
メネラウスの定理は、線分の比を掛ける順番が分からなくなりやすい公式です。
そこでおすすめなのが、三角形の頂点と直線上の交点を交互にたどる方法です。

今回の図では、次の順番で点をたどります。
点A(頂点) → 点F(交点) → 点B(頂点)
点B(頂点) → 点D(交点) → 点C(頂点)
点C(頂点) → 点E(交点) → 点A(頂点)
この順番で、隣り合う線分の長さの比を作ると、
\[ \underbrace{\frac{AF}{FB}}_{\text{A→F→B}} \times \underbrace{\frac{BD}{DC}}_{\text{B→D→C}} \times \underbrace{\frac{CE}{EA}}_{\text{C→E→A}} =1 \]
となります。
このように、頂点から交点へ進み、次の頂点へ移動することを繰り返せば、公式の順番を覚えやすくなります。
なお、今回の配置では点 \(D\) が辺 \(BC\) の延長線上にあるため、\(BD\) と \(DC\) は延長部分を含む線分の長さとして考えます。
5. メネラウスの定理とチェバの定理の違い
メネラウスの定理とよく似た定理に、チェバの定理があります。
チェバの定理では、三角形の各頂点から向かい合う辺上の点へ線分を引き、その3本が1点で交わる場合を考えます。
どちらも3つの線分の比の積が1になる定理ですが、図形の条件が異なります。
| 比較項目 | メネラウスの定理 | チェバの定理 |
|---|---|---|
| 特徴 | 3つの交点が一直線上にある | 3本の線分が1点で交わる |
| 主な用途 | 線分の比、3点の共線性の判定 | 線分の比、3本の線分の共点性の判定 |
| 公式 | 3つの比の積が1 | 3つの比の積が1 |
覚える際には、
メネラウスの定理:3つの点が一直線上にある。
チェバの定理:3本の線分が1点で交わる。
という違いを意識しましょう。
チェバの定理も、メネラウスの定理と同じように、3つの線分の比を掛け合わせると1になる公式です。
ただし、公式を利用できる条件が異なるため、2つの定理の違いを理解しておくことが大切です。
チェバの定理の使い方・証明・覚え方については、以下の記事で詳しく解説しています。
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チェバの定理とは?証明・覚え方・使い方を
図解でわかりやすく解説三角形の辺の長さの比を求める問題で、「チェバの定理」という公式を使ったことはありませんか? チェバの定理は、三角形の3つの頂点から、それぞれ向かい合う辺に引いた線分が1点で交わるときに成り立つ定理です ...
6. メネラウスの定理を使う際の注意点
6.1 3点が一直線上にあることを確認する
メネラウスの定理を使う際には、三角形の辺またはその延長線との3つの交点が、一直線上にあることを確認しましょう。
交点が一直線上にない場合、メネラウスの定理をそのまま使うことはできません。
6.2 線分の比の順番に注意する
メネラウスの定理では、線分の比を正しい順番で書く必要があります。
例えば、
\[ \frac{AF}{FB}\times \frac{BD}{DC}\times \frac{CE}{EA}=1 \]
が成り立つ場合、3つの分数をすべて逆数にした、
\[ \frac{FB}{AF}\times \frac{DC}{BD}\times \frac{EA}{CE}=1 \]
も成り立ちます。
しかし、一部の分数だけを逆数にすると、一般には等式が成り立たなくなります。
まとめ
この記事では、メネラウスの定理の使い方・覚え方・証明について解説しました。
メネラウスの定理は、三角形の3辺またはその延長線と1本の直線との交点について、線分の比の積が1になることを表す定理です。
今回の図では、
\[ \boxed{ \frac{AF}{FB}\times \frac{BD}{DC}\times \frac{CE}{EA}=1 } \]
が成り立ちました。
証明では、辺 \(AB\) に平行な補助線を引き、2組の相似な三角形を利用しました。
相似によって線分の比を書き換えることで、3つの分数が約分でき、積が1になることが分かりました。
メネラウスの定理は、公式を暗記するだけでなく、なぜ成り立つのか、どの順番で線分の比を作るのかまで理解しておくことが大切です。