数列・確率

くじをn回引いて1回以上当たる確率は?
「1/nをn回」で約63%になる理由

例えば、当たる確率が1/100のくじがあるとします。

このくじを100回引けば、「さすがに1回くらいは当たるのでは?」と思うかもしれません。

しかし実際に計算してみると、100回引いて1回以上当たる確率は約63.4%です。

つまり、100回引いても一度も当たらない確率が約36.6%もあります。

では一般に、当たる確率が \(1/n\) のくじを \(n\) 回引いたとき、1回以上当たる確率はいくらになるのでしょうか?

結論からいうと、その確率は\[ 1-\left(1-\frac{1}{n}\right)^n \]

で表すことができ、\(n\) を大きくしていくと\[ 1-\frac{1}{e}\fallingdotseq63.2\% \]

に近づいていきます。

本記事では、なぜこのような結果になるのかを、具体例から順番に計算しながらわかりやすく解説します。

1. くじをn回引いて1回以上当たる確率の求め方

まず、当たる確率が\[ \frac{1}{n} \]

のくじを \(n\) 回引いたとき、1回以上当たる確率を考えてみましょう。

直接「1回以上当たる場合」を数えるよりも、「一度も当たらない場合」を考えた方が簡単です。

そこで、余事象を利用します。

1回のくじで外れる確率は\[ 1-\frac1n=\frac{n-1}{n} \]

です。

各回の結果が独立であるとすると、\(n\) 回すべて外れる確率は\[ \left(1-\frac1n\right)^n \]

となります。

したがって、\(n\) 回のうち1回以上当たる確率は\[ \boxed{ 1-\left(1-\frac1n\right)^n } \]

です。

まずはこの公式がどのように出てくるのか、\(n=2,3,4,5,6\) の具体例で確認してみましょう。

\begin{eqnarray}
\displaystyle (nが2の場合) &=& 1-\underset{全て外れを引く確率}{\underline{\frac{1}{2}\times\frac{1}{2}}} \\
\displaystyle &=& 1-\frac{1}{4} \\
\displaystyle &=& \frac{3}{4} \\
\displaystyle &\fallingdotseq& 75 \% \\
\end{eqnarray}

\begin{eqnarray}
\displaystyle (nが3の場合) &=& 1-\underset{全て外れを引く確率}{\underline{\frac{2}{3}\times\frac{2}{3}\times\frac{2}{3}}} \\
\displaystyle &=& 1-\frac{8}{27} \\
\displaystyle &=& \frac{19}{27} \\
\displaystyle &\fallingdotseq& 70.4 \% \\
\end{eqnarray}

\begin{eqnarray}
\displaystyle (nが4の場合) &=& 1-\underset{全て外れを引く確率}{\underline{\frac{3}{4}\times\frac{3}{4}\times\frac{3}{4}\times\frac{3}{4}}} \\
\displaystyle &=& 1-\frac{81}{256} \\
\displaystyle &=& \frac{175}{256} \\
\displaystyle &\fallingdotseq& 68.4 \% \\
\end{eqnarray}

\begin{eqnarray}
\displaystyle (nが5の場合) &=& 1-\underset{全て外れを引く確率}{\underline{\frac{4}{5}\times\frac{4}{5}\times\frac{4}{5}\times\frac{4}{5}\times\frac{4}{5}}} \\
\displaystyle &=& 1-\frac{1024}{3125} \\
\displaystyle &=& \frac{2101}{3125} \\
\displaystyle &\fallingdotseq& 67.2 \% \\
\end{eqnarray}

\begin{eqnarray}
\displaystyle (nが6の場合) &=& 1-\underset{全て外れを引く確率}{\underline{\frac{5}{6}\times\frac{5}{6}\times\frac{5}{6}\times\frac{5}{6}\times\frac{5}{6}\times\frac{5}{6}}} \\
\displaystyle &=& 1-\frac{15625}{46656} \\
\displaystyle &=& \frac{31031}{46656} \\
\displaystyle &\fallingdotseq& 66.5 \% \\
\end{eqnarray}



2. n=1~6の結果から分かること

ここまで述べてきませんでしたが、 \(n=1\) の時の確率はもちろん 100% となります。

この結果も含めて、\(n=1,2,3,4,5,6\) の時の確率を以下にまとめてみます。

1回以上当たる確率1つ前の \(n\) における確率との差
\(n=1\)100 %-
\(n=2\)75 %25 ポイント
\(n=3\)70.4 %4.6 ポイント
\(n=4\)68.4 %2.0 ポイント
\(n=5\)67.2 %1.2 ポイント
\(n=6\)66.5 %0.7 ポイント
おろち
おろち

「1つ前の \(n\) における確率との差」が分かりづらいかもしれないので補足すると、例えば \(n=3\) の 4.6 ポイントというのは、

\begin{eqnarray}
\displaystyle \underset{n=2の時の確率}{\underline{75}} - \underset{n=3の時の確率}{\underline{70.4}} = 4.6 \\
\end{eqnarray}

として求めた数字となります。

上でまとめた結果から、以下のことが分かるかと思います。

① \(n\) の値が大きくなるにつれて、1回以上当たる確率は低くなる
② \(n\) の値が大きくなるにつれて、1つ前の \(n\) との確率の差は小さくなる

特に重要なのは②です。この②の結果を言い換えると、「\(n\) の値が大きくなるにつれ、確率の変化量はどんどん小さくなる」ということになります。

この結果を見ると、\(n\) が大きくなるにつれて確率はある一定の値に近づいているように見えます。

では、\[ n\to\infty \]

としたとき、この確率はいったい何%に近づくのでしょうか?


3. \(n\) を大きくすると当たる確率はどうなる?

まず、「当たる確率が \(1/n\) のくじを \(n\) 回引いたとき、1回以上当たる確率」は以下のようになるため、これを \(f(n)\) と定義します。

\begin{eqnarray}
\displaystyle f(n) &=& 1-\underset{全て外れを引く確率}{\underline{\left(1-\frac{1}{n}\right)^n}} \\
\end{eqnarray}

おろち
おろち

「上の \(f(n)\) の式がいきなり出てきて分かりづらい!」という方は、\(n=1,2,3,4,5,6\) を実際に代入してみて、先ほど求めた結果と同じになることを確認するといいかも!

\(n\) を大きくしたとき一定値に近づくことを確認するためには、グラフ描写ツールで実際にグラフを描いてみるのが一番早くてわかりやすいかなと思います。

縦軸を”\(f(n)\)”、横軸を”\(n\)”としてグラフを描写してみた結果が以下となります。

利用サイト様:<https://www.geogebra.org/graphing?lang=ja>

上のグラフを見ると、\(n=1,n=2\) のあたりでは \(f(n)\) の値が大きく変化している一方、\(n\) が大きくなるにつれて、\(f(n)\) の変化が徐々に小さくなっていることが分かるかと思います。

このグラフを見る限り、\(f(n)\) はある一定の値に近づいているように見えます。

もう少し具体的な値を知りたいので、次の項目で \(f(n)\) の式についてもう少しじっくり見ていきたいと思います。

おろち
おろち

この後の議論では、ネイピア数 \((e=2.71828・・・)\) が出てきます。ネイピア数の定義

\begin{eqnarray}
\displaystyle e = \lim_{n \to \infty} \left(1+\frac{1}{n}\right)^n
\end{eqnarray}

をまだ未履修の方は、以降の議論の理解が困難となる可能性がある旨、ご了承下さい。



4. n→∞では当たる確率は約63.2%になる

先ほど求めた\[ f(n)=1-\left(1-\frac1n\right)^n \]

について、\[ n\to\infty \]

の場合を考えてみましょう。\begin{eqnarray} \displaystyle \lim_{n\to\infty}f(n) &=& 1-\lim_{n\to\infty} \left(1-\frac1n\right)^n \end{eqnarray}

ここで、\[ \left(1-\frac1n\right)^n \]

の極限を求めます。

\(m=n-1\) とおくと \(n=m+1\) なので、\begin{eqnarray} \left(1-\frac1n\right)^n &=& \left(\frac{n-1}{n}\right)^n \\ &=& \left(\frac{m}{m+1}\right)^{m+1} \\ &=& \left(\frac{1}{1+\frac1m}\right)^{m+1} \\ &=& \frac{1}{\left(1+\frac1m\right)^{m+1}} \end{eqnarray}

となります。

さらに、\begin{eqnarray} \left(1+\frac1m\right)^{m+1} &= \left(1+\frac1m\right)^m \left(1+\frac1m\right) \end{eqnarray}

です。

ここでネイピア数 \(e\) の定義\[ e= \lim_{m\to\infty} \left(1+\frac1m\right)^m \]

を使うと、\[ \lim_{m\to\infty} \left(1+\frac1m\right)^{m+1} =e \]

となります。

したがって、\[ \lim_{n\to\infty} \left(1-\frac1n\right)^n =\frac1e \]

です。

よって、\begin{eqnarray} \displaystyle \lim_{n\to\infty}f(n) &=& 1-\frac1e \\ &\fallingdotseq& 0.63212 \end{eqnarray}

となります。

つまり、当たる確率が \(1/n\) のくじを \(n\) 回引いたとき、1回以上当たる確率は、\(n\) が大きくなるほど約63.2%に近づいていくことが分かります。


5. 100回引いたら実際に何%?

ここで、冒頭で紹介した

「当たる確率が1/100のくじを100回引く」

という例を実際に計算してみましょう。

1回外れる確率は\[ \frac{99}{100} \]

なので、100回すべて外れる確率は\[ \left(\frac{99}{100}\right)^{100} \]

です。

したがって、100回のうち1回以上当たる確率は\begin{eqnarray} \displaystyle 1-\left(\frac{99}{100}\right)^{100} &\fallingdotseq& 0.63397 \end{eqnarray}

となります。

つまり、

当選確率1%のくじを100回引いて、1回以上当たる確率は約63.4%

です。

「1%を100回なら100%近く当たりそう」と感じるかもしれませんが、実際には100回引いても約36.6%の確率で一度も当たりません。

確率は単純に\[ 1\%\times100=100\% \]

と考えることはできない、という面白い例ですね。


まとめ

本記事では、当たる確率が \(1/n\) のくじを \(n\) 回引いたとき、1回以上当たる確率について考えました。

1回外れる確率は\[ 1-\frac1n \]

なので、\(n\) 回すべて外れる確率は\[ \left(1-\frac1n\right)^n \]

です。

したがって、1回以上当たる確率は\[ \boxed{ 1-\left(1-\frac1n\right)^n } \]

となります。

さらに \(n\to\infty\) とすると、\[ \lim_{n\to\infty} \left[ 1-\left(1-\frac1n\right)^n \right] = 1-\frac1e \fallingdotseq63.2\% \]

となります。

つまり、当たる確率が \(1/n\) のくじを \(n\) 回引いても、1回以上当たる確率は100%にはならず、\(n\) が大きくなるほど約63.2%に近づいていくのです。

「当選確率1%のくじを100回引いても、当たる確率は約63.4%」という結果は、直感とは少し違っていて面白いですよね。

このように、確率では「少なくとも1回起こる確率」を求めるとき、余事象を使って「一度も起こらない確率」を考えると簡単に計算できる場合があります。

本記事が、確率や余事象について理解する助けになれば幸いです。

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