おもしろ数学(数学コラム)

黄金比(1:1.618)とは何?
意味・求め方・性質をわかりやすく解説

「黄金比」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?
黄金比は「最も美しい比」とも呼ばれ、数学だけでなく、芸術や建築など様々な分野で登場します。

しかし、「具体的にどのような比なのか」「なぜそのような値になるのか」については、意外としっかり理解している人は少ないかもしれません。

本記事では、黄金比の定義から実際の求め方、さらにはその性質や三角関数との関係まで、できるだけわかりやすく解説していきます。

本記事で解説する黄金比

\begin{eqnarray}
\displaystyle 1:\frac{1+\sqrt{5}}{2}&≒&1:1.618 \\
\end{eqnarray}

■黄金比とは?

まずは今回の主役、黄金比とは何者か確認しておきます。

黄金比とは、以下の比率のことです。

\begin{eqnarray}
\displaystyle 1:\frac{1+\sqrt{5}}{2} \tag{1}
\end{eqnarray}

おろち
おろち

人によっては、以下の値そのものを黄金比と呼ぶようです。

\begin{eqnarray}
\displaystyle \frac{1+\sqrt{5}}{2} \tag{2}
\end{eqnarray}

個人的には、黄金という名前である以上、比率の表現であるべきと考えているため、(1)の形を推します。

ここで、\(\sqrt{5}≒2.236067\) として(2)式に代入してみると、

\begin{eqnarray}
\displaystyle \frac{1+\sqrt{5}}{2}≒\frac{1+2.236067}{2}=\frac{3.236067}{2}=1.6180335
\end{eqnarray}

のような形になるので、(1)式の黄金比は、ざっくり

\begin{eqnarray}
\displaystyle 1:1.618 \tag{3}
\end{eqnarray}

のように表現することもできます。


■黄金比の求め方

黄金比がどのような形をしているのかはわかりました。

しかし、(2)の値はどのようにして求めることができるのでしょうか。

その正体について探るため、一旦(2)の値を以下のように \(x\) とおいてみます。

\begin{eqnarray}
\displaystyle x=\frac{1+\sqrt{5}}{2}
\end{eqnarray}

そしてこの式を、\(\sqrt{5}\)を消すように変形していくと、

\begin{eqnarray}
\displaystyle x&=&\frac{1+\sqrt{5}}{2} \\
\displaystyle 2x&=&1+\sqrt{5} \\
\displaystyle 2x-1&=&\sqrt{5} \\
\displaystyle (2x-1)^2&=&(\sqrt{5})^2 \\
\displaystyle 4x^2-4x+1&=&5 \\
\displaystyle 4x^2-4x-4&=&0 \\
\displaystyle x^2-x-1&=&0 \tag{4}
\end{eqnarray}

となり、最終的には比較的シンプルな形となります。

つまり、黄金比 \(\frac{1+\sqrt{5}}{2}\) は、(4)の2次方程式の解の1つであるということがわかります。

実は、世の中の黄金比と呼ばれているものは全て、この(4)式が元となって導かれています。

この後、具体的にどのような場面でこの(4)式が現れるのか、確認していきます。


■黄金比が出てくる例:長方形(黄金長方形)

以下のような、縦の長さが \(1\)、横の長さが \(x\) の長方形を考えて見ましょう。

辺BC上に点E、辺AD上に点Fを、四角形ABEFが正方形となるように定義すると、以下の図のようになります。

そしてここで、長方形ABCD長方形ECDF相似であることを仮定してみます。

すると、辺の長さの比より、以下の関係式が成立します。

\begin{eqnarray}
\displaystyle \underset{ABの長さ}{\underline{1}}:\underset{BCの長さ}{\underline{x}}=\underset{ECの長さ}{\underline{x-1}}:\underset{CDの長さ}{\underline{1}} \tag{5}
\end{eqnarray}

この(5)式を方程式の形に整理してみると、

\begin{eqnarray}
\displaystyle 1:x&=&x-1:1 \\
\displaystyle x(x-1)&=&1 \\
\displaystyle x^2-x-1&=&0 \tag{6}
\end{eqnarray}

となり、先ほど確認した黄金比の元となる式である(4)式の形が出てきます。

ちなみにこの(6)式を解の公式で求めると、以下の2つの解が出てきます。

\begin{eqnarray}
\displaystyle x&=&\frac{1\pm\sqrt{5}}{2}
\end{eqnarray}

2つの解のうち、\(\displaystyle \frac{1-\sqrt{5}}{2}\) の方は負の値となるため、辺の長さとしては不適です。

よって、\(x\) の値としては、先ほど黄金比として確認した値

\begin{eqnarray}
\displaystyle x&=&\frac{1+\sqrt{5}}{2}
\end{eqnarray}

として求められます。

以降、黄金比 \(\displaystyle \frac{1+\sqrt{5}}{2}\) のことを \(\varphi\) と書くことにします。

\begin{eqnarray}
\displaystyle \varphi := \frac{1+\sqrt{5}}{2}
\end{eqnarray}

今回のような、縦横の長さの比が \(1:\varphi\) となる長方形のことを黄金長方形と言います。

おろち
おろち

つまり、黄金長方形の定義は
長方形ABCD長方形ECDF相似となること」と
言うこともできます!



■黄金比が出てくる例:正五角形

次に、以下のような1辺の長さが1の正五角形を考えて見ましょう。

実はこの五角形の対角線の長さは、黄金比(\(\varphi\))となる、という特徴があります。

本当に対角線の長さが \(\varphi\) となるのか?確認してみましょう。

正五角形の辺と対角線の比が黄金比となることの証明

証明の前準備

  1. 五角形の内角の和が540°であることから、1つの角は108°となる。
  2. 三角形EADを考えると、辺EAと辺EDの長さは等しいので、三角形EADは二等辺三角形
  3. つまり、∠EDA=36° と求めることができるので、∠ADC=72° であることがわかる。
  4. ここで三角形ACDを考えると、対称性より三角形ACDは二等辺三角形であるため、∠CAD=36° とわかる。
  5. 次に、点Dから線分ACに対し、∠ADCを二等分するように線を引き、線分ACとの交点をFとする。
  6. そうすると、三角形ACDと三角形DFCが相似となる。
  7. またこのとき、三角形DFCは二等辺三角形であるため、DF=1となる。
  8. さらに、∠ADF=36° であり、三角形FDAも二等辺三角形となるため、AF=1 であることもわかる。

ここまでの議論で一通り準備ができました。
ACの長さを \(x\) とおいて AC:CD=DF:FC の関係式が成立することを利用して \(x\) を解いていくと、

\begin{eqnarray}
\displaystyle AC:CD&=&DF:FC \\
\displaystyle x:1&=&1:x-1 \\
\displaystyle x(x-1)&=&1 \\
\displaystyle x^2-x-1&=&0 \tag{7}
\end{eqnarray}

となり、(4)式、(6)式と同じ形が現れることがわかります。

つまり、\(\displaystyle x=\frac{1+\sqrt{5}}{2}\) となり、対角線が黄金比 \(\varphi\) となることが証明できます。


■三角関数との関係

実は、三角関数と黄金比には深い関係性があります。

先ほどの「正五角形に現れる黄金比」の話で、角度として36°、72°が出てきたと思います。

これをヒントとして、36°、72° の時の三角関数の値を確認してみましょう。



sin36°、cos36°、tan36° の値と黄金比の関係性の確認

まず、sin36°、cos36°、tan36° の値を確認します。

こちらについては別記事(以下の記事)で既に求めたものを利用します。

別記事で導出した sin36°、cos36°、tan36° の値

\begin{eqnarray}
\displaystyle \sin36^{\circ}&=&\frac{\sqrt{10-2\sqrt{5}}}{4} \\
\displaystyle \cos36^{\circ}&=&\frac{\sqrt{5}+1}{4} \\
\displaystyle \tan36^{\circ}&=&\sqrt{5-2\sqrt{5}}
\end{eqnarray}

sin36°・cos36°・tan36°の値の求め方|
倍角公式を使ってわかりやすく導出

本記事では sin36°・cos36°・tan36° の値の求め方について解説します。 36°は三角関数の有名角(30°や45°など)とは少し異なる角度ですが、三角関数の倍角公式を利用することで正確な ...

これらの値と黄金比 \(\varphi\) の値を見比べて、何か気づくことありますでしょうか。

そうです!実は、cos36° の値が黄金比の値を非常によく似ており、以下の関係性が成立します。

\begin{eqnarray}
\displaystyle \cos36^{\circ}&=&\frac{\varphi}{2} \tag{8}
\end{eqnarray}

一見無関係に見える「黄金比」と「三角関数」ですが、実はこのように密接な関係があることがわかります。



sin72°、cos72°、tan72° の値と黄金比の関係性の確認

sin72°、cos72°、tan72° を直接求めた別記事は用意していないのですが、
sin18°、cos18°、tan18° であれば以下の記事で導出しています。

別記事で導出した sin18°、cos18°、tan18° の値

\begin{eqnarray}
\displaystyle \sin18^{\circ}&=&\frac{\sqrt{5}-1}{4} \\
\displaystyle \cos18^{\circ}&=&\frac{\sqrt{10+2\sqrt{5}}}{4} \\
\displaystyle \tan18^{\circ}&=&\frac{1}{\sqrt{5+2\sqrt{5}}}
\end{eqnarray}

sin18°・cos18°・tan18°の値の求め方|
倍角・三倍角の公式から丁寧に導出

【18°】は準有名角と呼ばれています。 これらの角度は「有名角」ではありませんが、倍角公式や三倍角公式を利用することで、根号を含む形で正確に求めることができます。 本記事では三角関数の公式を利用しなが ...

上記の値と、以下関係式が成立することから sin72°、cos72°、tan72° を求めると、

sin72°、cos72°、tan72° の値

\begin{eqnarray}
\displaystyle \sin72^{\circ}&=&\sin(90^{\circ}-18^{\circ})=\cos18^{\circ}=\frac{\sqrt{10+2\sqrt{5}}}{4} \\
\displaystyle \cos72^{\circ}&=&\cos(90^{\circ}-18^{\circ})=\sin18^{\circ}=\frac{\sqrt{5}-1}{4} \\
\displaystyle \tan72^{\circ}&=&\tan(90^{\circ}-18^{\circ})=\frac{1}{\tan18^{\circ}}=\sqrt{5+2\sqrt{5}}
\end{eqnarray}

これは先ほどの cos36° と比べると少し関連性が分かりづらいですが、「cos72°」が比較的形が似ていますね。

試しに、cos72° の値の分母分子に \(\sqrt{5}+1\) をかけてみると。

\begin{eqnarray}
\displaystyle \cos72^{\circ}&=&\frac{\sqrt{5}-1}{4} \\
\displaystyle &=&\frac{\sqrt{5}-1}{4} \times \frac{\sqrt{5}+1}{\sqrt{5}+1} \\
\displaystyle &=&\frac{4}{4(\sqrt{5}+1)} \\
\displaystyle &=&\frac{1}{\sqrt{5}+1} \\
\end{eqnarray}

となり、ようやく関係性が見えてきます。つまり、cos72° の値と黄金比の値の間では、以下の関係式が成立します。

\begin{eqnarray}
\displaystyle \cos72^{\circ}&=&\frac{1}{2\varphi} \tag{9}
\end{eqnarray}


参考:cos36°とcos72°の関係性について

(8)式と(9)式の両辺をかけることで、以下のような非常に綺麗な関係式が成立します。

\begin{eqnarray}
\displaystyle \cos36^{\circ} \cdot \cos72^{\circ}=\frac{\varphi}{2} \cdot \frac{1}{2\varphi}=\frac{1}{4} \tag{10}
\end{eqnarray}

つまり、それぞれは根号付きの無理数で表現される「\(\cos36^{\circ}\)」と「\(\cos72^{\circ}\)」ですが、それらを掛け合わせることで

\(\displaystyle \frac{1}{4}(=0.25)\) という綺麗な値で表現することができます。


■黄金比って結局何?

黄金比の値や求め方や、図形の中で現れる例としてはこれまで説明してきた通りです。

では、結局この値は何で注目され、有名な単語として広まっているのでしょうか。


黄金比とは、人が「見てて心地よい」「バランスが取れている」と感じられる比率のことです。

感覚的なものなのでハッキリとした理由は判明していないようですが、1つの有力な説としては、

人間の顔に複数の黄金比が出てくる(顔の縦横比、顔の縦の長さと目から口までの長さの比、等)らしく、

頻繁に目にする身近なものの中に黄金比が自然と含まれているため、

違和感を感じない」という性質があるのではないかと言われています。

おろち
おろち

筆者はこの説明を聞いて、結構納得してしまいましたw


■まとめ

本記事では、黄金比の意味や求め方、そしてその性質について解説しました。

黄金比は単なる「美しい比」ではなく、方程式から導かれる明確な数学的構造を持っています。さらに、三角関数や図形とも深く関係しており、数学の様々な分野に現れる重要な概念です。

一見すると難しそうに感じるかもしれませんが、基本的な考え方を理解することで、その仕組みは非常にシンプルであることが分かります。

ぜひ他の関連記事も参考にしながら、数学の面白さを感じてみてください。

-おもしろ数学(数学コラム)
-,