広義積分とは、積分区間が無限に広がる場合や、被積分関数がある点で発散する場合に定義される積分のことです。
本記事では、その定義と計算方法、さらに収束・発散の考え方を例題を通して丁寧に解説します。
1. 広義積分って何?
広義積分とは、簡単に言葉で説明すると
「積分区間が無限に広がっている場合や、積分区間内で被積分関数が発散する場合に、極限を使って定義される積分」
のことです。
具体的には、以下のような形の積分を広義積分と呼びます。
\begin{equation}
\displaystyle \lim_{b \to t} \int_a^{b} f(x)dx (※上限極限パターン)\\
\displaystyle \lim_{a \to t} \int_a^{b} f(x)dx (※下限極限パターン) \\
\displaystyle \lim_{t \to \infty} \int_{-t}^{t} f(x)dx (※両端極限パターン)
\end{equation}
2. 広義積分を使うタイミングはどんなとき?
例えば、以下のような定積分があったとします。
\begin{equation}
\displaystyle \int_{0}^{\infty} e^{-x}dx \tag{1}
\end{equation}
これをそのまま計算すると、
\begin{equation}
\displaystyle \int_{0}^{\infty} e^{-x}dx = -[e^{-x}]_{0}^{\infty} = -(e^{-\infty}-1) = 1 \tag{2}
\end{equation}
となります。一方、(1)式を広義積分を用いて解いてみると、
\begin{equation}
\displaystyle \lim_{t\to \infty} \int_{0}^{t} e^{-x}dx = \lim_{t\to \infty} -[e^{-x}]_{0}^{t} = \lim_{t\to \infty} -(e^{-t}-1) = 1 \tag{3}
\end{equation}
となります。
この結果だけ見ると、広義積分を使った場合と使わない場合で結果は変わらないため、どちらを使用しても問題なさそうに見えますが、数学的に見ると(3)式の方がより正確な解き方となります。
理由としては、(2)式では途中で \(x=\infty\) とみなして回答しているのに対し、(3)式では \(x→\infty\)(\(x\)を限りなく\(\infty\)に近づける)としています。
\(x\)に0とか1とかの定数を代入する際には特に問題なく \(x=0\) とか \(x=1\) としてしまって問題ないのですが、\(\infty\) のような概念的な記号を \(x=\infty\) のように扱うことは数学的には正しくありません。
そのため、積分区間として \(\infty\) とか \(-\infty\) が出てきた場合は、広義積分の形に変換することを意識すると良いですね。
3. 広義積分の計算方法
広義積分の計算方法は、積分や極限をある程度理解している方であれば、そこまで難しくありません。
以下に手順をまとめます。
STEP1:対象の定積分を確認し、広義積分を用いる必要があるかどうか確認する
対象の定積分を、以下の観点で確認します。
- 積分区間が無限に広がっているか
- 積分区間に、被積分関数が発散する値が存在するか
上記2点のいずれかが当てはまる場合、広義積分を利用する必要があります。
「1」の場合については先ほどの章「■広義積分を使うタイミングはどんなとき?」で説明した通りです。
「2」の場合については、被積分関数が発散する時の値だけを除くように積分区間を分割し計算する必要があり、その過程で広義積分を利用します。具体的な例については、後程「■例題②:注意が必要な広義積分」の章を参照してください。
STEP2:極限を使った積分に書き換える
STEP1で述べた観点で対象の定積分を確認し、「1」もしくは「2」のいずれかの場合に当てはまるならば、広義積分の形に変形します。
例えば、定積分 \(\displaystyle \int_{a}^{b} f(x) dx\) について、被積分関数 \(f(x)\) が \(x=c\) で発散し、かつ \(a<c<b\) を満たすとき、この定積分は以下のように積分範囲を分割し、広義積分の形にする必要があります。
\begin{equation}
\displaystyle \int_{a}^{b} f(x) dx=\lim_{s \to c-0}\int_{a}^{s} f(x) dx+\lim_{t \to c+0}\int_{t}^{b} f(x) dx
\end{equation}
また細かいところですが、右辺の2つの広義積分はそれぞれ独立に極限を考える必要があります。混乱を避けるため、s と t のように別の文字を用いると分かりやすいです。
STEP3:最後に広義積分を『定積分』⇒『極限』の順で計算する
広義積分の形が出てきたら、先ほど示した(1)式~(3)式までの流れのように、『定積分』⇒『極限』の順で計算し求めます。
最後に極限を取った段階で、有限の値になれば収束、有限の値にならなければ発散という結果となります。
4. 例題①:普通に解けちゃう広義積分
実はフライングで既に例題として出してしまった、(1)式がその「普通に解けちゃう広義積分」に該当します。
(2)式のような解き方は数学的に正しくないだけで、先ほど見た通り、そのまま計算しても結果としては広義積分を使った場合と同じ結果を得ることができます。
このように、特に広義積分を意識せずとも解けちゃう問題は特に注意は不要なのですが、次に示すような例題のように、広義積分を意識できていないと誤った回答となるケースもあります。
5. 例題②:注意が必要な広義積分
以下の定積分の問題を考えてみましょう。
\begin{equation}
\displaystyle \int_{-1}^{1} \frac{1}{x^2}dx \tag{4}
\end{equation}
まず、上記式の誤答例を以下に示します。
\begin{equation}
\displaystyle \int_{-1}^{1} \frac{1}{x^2}dx = [-\frac{1}{x}]_{-1}^{1} = -(1+1) = -2 \tag{5}
\end{equation}
さて、(5)式のどこが間違っているかわかりますか?
そう、積分区間(\(\displaystyle -1~1\))の間に、0が含まれていますが、被積分関数\(\dfrac{1}{x^2}\)は \(x=0\) で定義されないため、このまま積分をしてしまったことが誤り、となります。
じゃあどうすればよいのかというと、以下のように \(x=0\) を除いて計算できるように、広義積分を利用する形に(4)式を変形して解きます。
\begin{eqnarray}
\displaystyle \int_{-1}^{1} \frac{1}{x^2}dx = \underset{積分区間①}{\underline{\lim_{s \to -0} \int_{-1}^{s} \frac{1}{x^2}dx}} + \underset{積分区間②}{\underline{\lim_{t \to +0} \int_{t}^{1} \frac{1}{x^2}dx}} \tag{6}
\end{eqnarray}
上式のように、積分区間(\(\displaystyle -1~1\))を、積分区間①(\(\displaystyle -1~0\))と積分区間②(\(\displaystyle 0~1\))の2つの区間に分割します。
そして、 \(x=0\) の部分を変数 \(s, t\) で置き換え、最終的に極限 \(s \to -0, t \to +0\) を取れば、計算が可能となるというわけです。
さて、最後に(6)式を計算してみましょう。はたして(5)式と同じ回答をなるのでしょうか、、?
\begin{eqnarray}
\displaystyle \int_{-1}^{1} \frac{1}{x^2}dx &=& \lim_{s \to -0} \int_{-1}^{s} \frac{1}{x^2}dx + \lim_{t \to +0} \int_{t}^{1} \frac{1}{x^2}dx \\
\displaystyle &=& \lim_{s \to -0}\left[-\frac{1}{x}\right]_{-1}^{s} + \lim_{t \to +0}\left[-\frac{1}{x}\right]_{t}^{1} \\
\displaystyle &=& \underset{\infty に発散}{\underline{\lim_{s \to -0} \left(-\frac{1}{s}-1\right)}} + \underset{\infty に発散}{\underline{\lim_{t \to +0} \left(-1+\frac{1}{t}\right)}} \\
\displaystyle &\to& \infty
\end{eqnarray}
となり、解は発散します。
結果として、(5)式と(6)式で異なる回答となりました。
そして、結果として正しいのは(6)式の回答、となります。
ちなみに上の問題のように積分区間を分割して考えた際、元々の定積分が収束するための条件は
分割した広義積分が全て収束すること
です。仮に分割した広義積分の1つでも解が発散するような場合には、元々の定積分の解は収束しません。
つまり、上の問題では積分区間①と積分区間②のどちらも一応求めましたが、片方が発散することが示せれば、もう片方が発散することを示さずとも、元々の定積分の解は発散することが示せるわけです。
6. 例題③:広義積分が収束するか判定してみよう
ここでは、以下2種の積分が収束するかどうか、確認してみましょう。
\begin{equation}
\displaystyle ① \ : \ \int_{1}^{\infty} \frac{1}{x^2}dx \tag{7}
\end{equation}
\begin{equation}
\displaystyle ② \ : \ \int_{1}^{\infty} \frac{1}{x}dx \tag{8}
\end{equation}
まずは①の積分から確認していきます。広義積分の形にし計算していくと、
\begin{eqnarray}
\displaystyle \int_{1}^{\infty} \frac{1}{x^2}dx &=& \lim_{t \to \infty} \int_{1}^{t} \frac{1}{x^2}dx \\
\displaystyle &=& \lim_{t \to \infty} \left[-\frac{1}{x}\right]_{1}^{t} \\
\displaystyle &=& \lim_{t \to \infty} \left(-\frac{1}{t}+1\right) \\
\displaystyle &=& 1
\end{eqnarray}
となるため、①の積分は収束することがわかります。
次に、②の積分を確認していきます。先ほどと同様に計算していくと、
\begin{eqnarray}
\displaystyle \int_{1}^{\infty} \frac{1}{x}dx &=& \lim_{t \to \infty} \int_{1}^{t} \frac{1}{x}dx \\
\displaystyle &=& \lim_{t \to \infty} \left[\log{x}\right]_{1}^{t} \\
\displaystyle &=& \lim_{t \to \infty} \left(\log{t}-0\right) \\
\displaystyle &\to& \infty
\end{eqnarray}
となるため、②の積分は発散することがわかります。
①の積分と②の積分は、積分範囲が同じであり、かつ被積分関数も形は似ていますが、計算結果は全く異なる結果となりました。
非常に興味深い結果ですね。
7. 広義積分の「収束」と「発散」とは?
広義積分を計算したとき、その極限が有限の値になる場合を収束といいます。
一方、極限が無限大になったり、極限そのものが存在しなかったりする場合を発散といいます。
\begin{eqnarray}
\displaystyle \int_{0}^{\infty} e^{-x} dx = 1 \ \ (※収束パターン)
\end{eqnarray}
\begin{eqnarray}
\displaystyle \int_{1}^{\infty} \frac{1}{x}dx = \infty \ \ (※発散パターン)
\end{eqnarray}
まとめ:広義積分を使いこなそう!
例題②の問題のように、被積分関数の定義域に注意し、必要に応じて広義積分を利用しないと解けない問題も存在します。
そのような場合はもちろん広義積分を利用する必要があるのですが、例題①で説明したように、積分端点が「\(\infty\)」、もしくは「\(-\infty\)」のような場合も、広義積分を用いることを推奨します。
本記事が、皆様が広義積分を理解する参考となれば幸いです。
ここまで本記事を読んでいただき、ありがとうございました!
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