おもしろ数学(数学コラム)

0の0乗はなぜ未定義なのか?|
極限が1になる理由をわかりやすく解説

「0の0乗は何になるのだろう?」

指数法則だけを見ると \(0^0=1\) のようにも見えますが、
一方で 0 の正の整数乗は常に 0 になるため、
\(0^0=0\) と考えたくなる人もいるでしょう。

実際には、多くの数学書では \(0^0=0\) は未定義として扱われます。

しかし興味深いことに、

\(x^x\)

について \(x\) を正の値から限りなく 0 に近づけると、その値は 1 に近づいていくことが知られています。

本記事では、

  • \(x^x\) はグラフではどのような挙動を示すのか
  • なぜ \(x^x\) の極限は 1 になるのか
  • なぜ \(0^0\) が未定義なのか

を順番に確認しながら、「0の0乗」の不思議な性質について考察していきます。



本記事の結論

  • \(0\) の \(0\) 乗の値は未定義である。
  • しかし、\(x^x\) について \(x\) を正の値から限りなく \(0\) に近づけると、\(1\) になることが証明できる。

■(方針1)\(y=x^x\) のグラフがどうなるか、増減表を書いてみる

まずは以下の関数を定義し、考えて見ましょう。

\begin{eqnarray}
\displaystyle y=x^x \tag{1}
\end{eqnarray}

(1)式で、\(x=0\) のときの値がどうなるか、考えてみることにします。

ただし、単純に(1)式で \(x=0\) を代入することはできません。

何故ならば、指数関数の底の条件より、\(x\) については以下の条件の元、考える必要があるためです。

\begin{eqnarray}
\displaystyle x>0 \tag{2}
\end{eqnarray}

\(x<0\) の場合は考えません。なぜなら、\(x<0\) のとき(1)式を考えると、虚数が出てきたり、離散的な実数が出てきたりと、連続的な綺麗なグラフにならないからです。

おろち
おろち

上記の理解が難しい方は、試しに \(x=-2, x=-\frac{3}{2}\) を代入してみて、その時の \(y\) の値がどうなるか、確認してみるのがよいでしょう。

おろち
おろち

ちなみに底の条件として、以下も必要であると考える場合もあります。

\begin{eqnarray}
\displaystyle x \neq 1 \tag{3}
\end{eqnarray}

これは、底が1のとき、指数がどのような値を取るとしても必ず1となり、関数が直線的となってしまうことから、(3)の条件が必要なようです。(指数関数は曲線として定義したい、という思想があるようです)

しかし(1)式を考える上では \(x=1\) でも関数としては成立する(\(y=1\) という実数が出てくるだけの)ため、本記事では(2)の条件のみ考えることにします。

次に、①式の両辺について自然対数(※)を取り、そのうえで両辺を \(x\) で微分することを考えます。

おろち
おろち

自然対数とは、ネイピア数 \(e\) を底とする対数のことです。

ちなみに、底が10の対数は常用対数といいます。

両辺の自然対数を取ると、

\begin{eqnarray}
\displaystyle \log y=x\log x \tag{4}
\end{eqnarray}

となります。(4)式の両辺を \(x\) で微分すると、

\begin{eqnarray}
\displaystyle && \frac{d}{dx}(\log y)=\frac{d}{dx}(x\log x) \\
\displaystyle &\Leftrightarrow& \color{red}{\underset{=y'}{\underline{\color{black}{\frac{dy}{dx}}}}}\frac{d}{dy}(\log y)=\log x + x \cdot \frac{1}{x} \\
\displaystyle &\Leftrightarrow& \frac{y'}{y}=\log x+1 \\
\displaystyle &\Leftrightarrow& y'=y(\log x+1) \\
\displaystyle &\Leftrightarrow& y'=x^x(\log x+1) \tag{5}
\end{eqnarray}

これより、増減表は以下のようになります。

\(x\)\(0\)・・・\(\displaystyle \frac{1}{e}\)・・・
\(y'\)-\(0\)+
\(y\)?\(\searrow\)\(\displaystyle \left(\frac{1}{e}\right)^{\frac{1}{e}}\)\(\nearrow\)

上の増減表から、\(y=x^x\) のグラフは、\(\displaystyle x=\frac{1}{e}\) の時に最小値を取り、その値は \(\displaystyle \left(\frac{1}{e}\right)^{\frac{1}{e}}\) となることがわかります。

そのため、”0の0乗”の値がもし存在するならば、\(\displaystyle \left(\frac{1}{e}\right)^{\frac{1}{e}}\) よりも大きな値となりそう、ということまではわかります。

、、、しかし、それ以上のことはわからなさそうですね。

気を取り直して、別の方針で攻めて見ましょう。


■(方針2)\(y=x^x\) のグラフを、グラフ描画ツールで描いてみる

少しズルい気がしますが、グラフ描写ツールに頼ってみることにします。

グラフ描写ツールで \(y=x^x\) のグラフを描いてみると、以下のようになります。

※上記グラフ描写は、以下サイトのツールを使用させていただきました。
 GeoGebra:<https://www.geogebra.org/graphing?lang=ja>

上記グラフを見ると、”0の0乗”の値は1となっているように見えます。

「じゃあ、”0の0乗”の値は1になると結論付けられるのか?」というと、もちろん"No"です。

あくまでグラフを描いた結果、そう見えるだけですからね。

最後に、以下の「方針3」で \(\displaystyle \lim_{x \to +0} x^x\) の値がどのような結果になるのか、考えることにしましょう。


■(方針3)\(\displaystyle \lim_{x \to +0} x \log x=0\) を証明し、\(\displaystyle \lim_{x \to +0} x^x=1\) を証明する

過去に慶応大学が、以下が成立することを証明せよ、という問題を出題しました。

\begin{eqnarray}
\displaystyle \lim_{x \to +0} x \log x=0 \tag{6}
\end{eqnarray}

(6)式が成立すれば\(y=x^x\) のグラフを正の値から0に限りなく近づけると1に収束することが証明できます。

おろち
おろち

何故ならば、(6)式の左辺は

\begin{eqnarray}
\displaystyle \lim_{x \to +0} x \log x=\lim_{x \to +0} \log x^x
\end{eqnarray}

と変形でき、この値が 0 に収束するならば、\(\log\) の中身(\(x^x\))も 1 に収束することが言えるからです。

そのため、(6)式を以下の手順で証明してみましょう。

  1. \( \sqrt{x} \log x > -1\) を証明する
  2. \(0<x<1\) のとき、\( \sqrt{x} \log x < 0\) となることを証明する
  3. はさみうちの原理を利用して、\(\displaystyle \lim_{x \to +0} x \log x=0\) を証明する

① \(\displaystyle \sqrt{x} \log x > -1\) を証明する

こちらは「方針1」の時と同様に、微分して増減表を作成する方針で簡単に証明できます。

\(x>0\) という条件の元、

\begin{eqnarray}
\displaystyle y=\sqrt{x} \log x \tag{7}
\end{eqnarray}

という関数について増減表を作成してみます。(7)式を \(x\) で微分すると、

\begin{eqnarray}
\displaystyle y'&=&\frac{d}{dx}(\sqrt{x} \log x) \\
\displaystyle &=&\frac{1}{2\sqrt{x}} \log x+\sqrt{x} \cdot \frac{1}{x} \\
\displaystyle &=&\frac{1}{2\sqrt{x}} (\log x+2)
\end{eqnarray}

となるため、これを元に増減表を作成すると以下のようになります。

\(x\)\(0\)・・・\(\displaystyle e^{-2}\)・・・
\(y'\)-\(0\)+
\(y\)?\(\searrow\)\(\displaystyle -\frac{2}{e}\)\(\nearrow\)

増減表より、(7)式は \(\displaystyle x=e^{-2}\) の時に最小値を取り、その値は \(\displaystyle -\frac{2}{e}\) となります。

ここで \(e\) はネイピア数という定数であり、その値は約 2.71828 です。

以上より、

\begin{eqnarray}
\displaystyle \sqrt{x} \log x \geqq -\frac{2}{e} \gt -1
\end{eqnarray}

が成立するため、題意が示されました。


② \(0<x<1\) のとき、\(\displaystyle \sqrt{x} \log x < 0\) となることを証明する

これは、\(\sqrt{x}\) と \(\log x\) を個別に考えるとすぐにわかります。

まず、\(0<x<1\) のとき、\(\sqrt{x}\) が正の値となるのは自明ですね。

次に \(\log x\) についてですが、これは \(y=\log x\) の値を思い出していただければわかる通り、\(0<x<1\) で負の値を取ることは自明です。

以上より、\(\sqrt{x} \log x\) は \(0<x<1\) の範囲では必ず負の値を取ることから、題意が示されます。

おろち
おろち

「なんで突然、\(0<x<1\) の範囲について考えたの?」と疑問に思う方もいらっしゃると思います。

こちら何故かというと、最終的にはさみうちの原理を利用する想定で話を進めているため、最終的には \(x\) の値を正の値から限りなく0に近づけます。(\(\displaystyle \lim_{x \to +0} \) を利用します。)

ゆえに、\(0<x<1\) の範囲だけ考えれば十分というわけです。


③ はさみうちの原理を利用して、\(\displaystyle \lim_{x \to +0} x \log x=0\) を証明する

①、②より、\(\displaystyle \sqrt{x} \log x\) について、 \(0<x<1\) の範囲では以下を満たします。

\begin{eqnarray}
\displaystyle -1<\sqrt{x} \log x<0 \tag{8}
\end{eqnarray}

両辺に \(\sqrt{x}\) をかけると、

\begin{eqnarray}
\displaystyle -\sqrt{x}<x \log x<0 \tag{9}
\end{eqnarray}

となる。(9)の不等式に対し、\(\displaystyle \lim_{x \to +0} \) の極限を取ると、

\begin{eqnarray}
\displaystyle 0<\lim_{x \to +0} x \log x<0 \tag{10}
\end{eqnarray}

となるため、はさみうちの原理より、

\begin{eqnarray}
\displaystyle \lim_{x \to +0} x \log x=0 \tag{11}
\end{eqnarray}

が証明できるため、(11)式より、

\begin{eqnarray}
\displaystyle \lim_{x \to +0} x^x=1
\end{eqnarray}

であることも証明ができる。


■何故 0 の 0 乗は未定義なのか?

最後に、何故 \(0\) の \(0\) 乗は未定義なのか、について考察してみましょう。

先ほど \(x^x\) について考え、\(x\) を正の値から \(0\) に近づけることで \(1\) になることを証明しました。

では、負の値から \(0\) に近づけることはできるのでしょうか。

、、、少なくとも、私は出来る気がしません。

なぜなら先ほど述べた通り、\(x<0\) のとき、\(x^x\) の値は"離散的"かつ"虚数"が出てくるような値になるからです。

もし負の値から \(0\) に近づけて、\(\displaystyle \lim_{x \to -0} x^x=1\) になることが証明出来る日がきたら、

\begin{eqnarray}
\displaystyle 0^0=1
\end{eqnarray}

と定義できるのかもしれませんね。


■まとめ

この記事では、0の0乗について考察しました。

一般的な数学では 0^0 は未定義として扱われます。

その理由は、

・指数法則からは 1 と考えたくなる
・0 の正の整数乗の延長では 0 と考えたくなる

という複数の考え方が衝突するためです。

一方で、\(x\) について \(x\) を正の値から 0 に近づけた場合には、

\begin{eqnarray}
\displaystyle \lim_{x \to +0} x^x=1
\end{eqnarray}

が成り立ちます。

つまり、「\(0^0\) そのもの」は定義されていなくても、
関連する極限値は 1 になることが数学的に証明できるのです。

0の0乗は一見単純な式ですが、
極限や指数関数の考え方を理解するうえで非常に興味深いテーマと言えるでしょう。


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