積分を勉強していると、\[ \int 2x(x^2+1)^3\,dx \]
や\[ \int \frac{2x}{x^2+1}\,dx \]
のように、そのままでは積分しにくい式が登場します。
このような積分でよく使われるのが「置換積分」です。
置換積分では、式の一部分を\[ t=g(x) \]
のように別の文字へ置き換えることで、複雑な積分を簡単な積分へ変形します。
しかし、初めて置換積分を勉強すると、
「どこを \(t\) と置けばいいの?」
「\(t=g(x)\) とすると、なぜ \(dt=g'(x)\,dx\) になるの?」
「定積分では、なぜ積分区間まで変えるの?」
と疑問に思うことも多いのではないでしょうか。
実は、置換積分は単なる計算テクニックではありません。
合成関数の微分を逆向きに利用したものと考えることができます。
この記事では、
- 置換積分とは何か
- 置換積分の公式
- なぜ置換積分ができるのか
- 置換積分の基本的なやり方
- どこを \(t\) と置けばよいのか
- 定積分で置換積分を使う方法
について、途中式を省略せずに順番に解説していきます。
1. 置換積分とは?
まずは、置換積分がどのような計算なのか確認してみましょう。
たとえば、\[ \int 2x(x^2+1)^3\,dx \]
という積分を考えます。
このまま展開して積分することもできますが、\[ x^2+1 \]
という部分を、\[ t=x^2+1 \]
と置いてみます。
すると、\[ \frac{dt}{dx}=2x \]
なので、\[ dt=2x\,dx \]
と考えることができます。
したがって、\[ \int 2x(x^2+1)^3\,dx \]
は、\[ \int t^3\,dt \]
へ変形できます。
これなら、\[ \int t^3\,dt = \frac14t^4+C \]
と簡単に積分できます。
最後に、\[ t=x^2+1 \]
を戻せば、\[ \boxed{ \int 2x(x^2+1)^3\,dx = \frac14(x^2+1)^4+C } \]
となります。
2. 置換積分の公式
一般的に、\[ t=g(x) \]
と置くことを考えます。
\(t\) を \(x\) で微分すると、\[ \frac{dt}{dx}=g'(x) \]
です。
これを、\[ dt=g'(x)\,dx \]
と表します。
したがって、\[ \int f(g(x))g'(x)\,dx \]
は、\[ \int f(t)\,dt \]
へ変形できます。
つまり、\[ \boxed{ \int f(g(x))g'(x)\,dx = \int f(t)\,dt \qquad (t=g(x)) } \]
というのが置換積分の基本的な考え方です。
3. なぜ置換積分ができるの?
置換積分のもとになっているのは、合成関数の微分公式です。
関数\[ F(t) \]
について、\[ F'(t)=f(t) \]
とします。
さらに、\[ t=g(x) \]
とします。
すると、\[ F(g(x)) \]
を \(x\) について微分すると、合成関数の微分公式から、\[ \frac{d}{dx}F(g(x)) = F'(g(x))g'(x) \]
となります。
ここで、\[ F'(t)=f(t) \]
なので、\[ F'(g(x))=f(g(x)) \]
です。
したがって、\[ \frac{d}{dx}F(g(x)) = f(g(x))g'(x) \]
となります。
両辺を積分すると、\[ \int f(g(x))g'(x)\,dx = F(g(x))+C \]
です。
ここで、\[ t=g(x) \]
と置いているので、右辺の \(F(g(x))\) は \(F(t)\) と表すことができます。
したがって、\[ \int f(g(x))g'(x)\,dx = F(t)+C \]
となります。
一方、\[ F'(t)=f(t) \]
なので、\[ \int f(t)\,dt = F(t)+C \]
です。
したがって、前章の最後で示した\[ \boxed{ \int f(g(x))g'(x)\,dx = \int f(t)\,dt } \]
が成立します。
置換積分は、合成関数の微分を逆向きに利用したものと考えることができます。
4. \(dt=g'(x)\,dx\) ってどういう意味?
\[ t=g(x) \]
を微分すると、\[ \frac{dt}{dx}=g'(x) \]
です。
ここから形式的に、\[ dt=g'(x)\,dx \]
と書きます。
ただし、\[ \frac{dt}{dx} \]
を普通の分数のように考えて、単純に \(dx\) を右辺へ「移項した」と考えるのは、高校数学では少し注意が必要です。
置換積分では、\[ dt=g'(x)\,dx \]
という記号を利用することで、\[ g'(x)\,dx \]
の部分を \(dt\) に置き換えている、と理解するとよいでしょう。
たとえば、\[ t=x^2+1 \]
なら、\[ \frac{dt}{dx}=2x \]
なので、\[ dt=2x\,dx \]
と表します。
そのため、\[ \int 2x(x^2+1)^3\,dx \]
にある\[ x^2+1\rightarrow t \]
だけでなく、\[ 2x\,dx\rightarrow dt \]
も同時に置き換えられるわけです。
5. どこを \(t\) と置けばいいの?
置換積分では、\[ t=g(x) \]
と置くことで、複雑な積分を簡単な積分へ変形します。
しかし、実際に問題を解くときに迷いやすいのが、
「どこを \(t\) と置けばいいの?」
という点です。
置換する部分を探すときは、「ある式」と「その式を微分したもの」が、積分の中に含まれていないかを確認してみましょう。
たとえば、\[ \int 2x(x^2+1)^3\,dx \]
では、\[ x^2+1 \]
を微分すると、\[ (x^2+1)'=2x \]
となります。
そして、元の積分にも \(2x\) が含まれています。
そのため、\[ t=x^2+1 \]
と置けば、\[ dt=2x\,dx \]
となり、\[ \int 2x(x^2+1)^3\,dx = \int t^3\,dt \]
と簡単な積分へ変形できます。
もう一つ、\[ \int\frac{2x}{x^2+1}\,dx \]
を考えてみましょう。
この場合も、\[ (x^2+1)'=2x \]
であり、分子に \(2x\) があります。
したがって、\[ t=x^2+1 \]
と置くことができます。
置換積分では、複雑になっている部分を見つけ、その部分を微分した式がほかに含まれていないかを確認するのが基本です。
置換する部分に迷ったら、「ある式を微分したものが、積分の中に含まれていないか?」を確認してみましょう。
6. 置換積分の例題
ここからは、実際にいくつかの積分を置換積分で求めてみましょう。
6-1. 基本的な置換積分
まずは、\[ \int(3x+1)^4\,dx \]
を求めます。
今回は、\[ t=3x+1 \]
と置きます。
両辺を \(x\) で微分すると、\[ \frac{dt}{dx}=3 \]
なので、\[ dt=3\,dx \]
となります。
したがって、\[ dx=\frac13dt \]
です。
これを元の積分に代入すると、\[ \int(3x+1)^4\,dx = \int t^4\cdot\frac13\,dt \]\[ = \frac13\int t^4\,dt \]
となります。
よって、\[ \frac13\int t^4\,dt = \frac13\cdot\frac15t^5+C \]\[ = \frac1{15}t^5+C \]
です。
最後に、\[ t=3x+1 \]
を戻すと、\[ \boxed{ \int(3x+1)^4\,dx = \frac1{15}(3x+1)^5+C } \]
となります。
6-2. 係数が一致しない場合
次に、\[ \int x(x^2+1)^3\,dx \]
を考えます。\[ t=x^2+1 \]
と置くと、\[ dt=2x\,dx \]
となります。
しかし、元の積分に含まれているのは \(2x\,dx\) ではなく、\[ x\,dx \]
です。
そこで、\[ dt=2x\,dx \]
の両辺を2で割って、\[ x\,dx=\frac12dt \]
とします。
したがって、\[ \int x(x^2+1)^3\,dx = \frac12\int t^3\,dt \]
となります。
積分すると、\[ = \frac12\cdot\frac14t^4+C \]\[ = \frac18t^4+C \]
です。
最後に \(t=x^2+1\) を戻して、\[ \boxed{ \int x(x^2+1)^3\,dx = \frac18(x^2+1)^4+C } \]
となります。
6-3. 三角関数を含む置換積分
次は、\[ \int\sin x\cos^2x\,dx \]
を求めてみましょう。
この積分では、\[ \cos x \]
を微分すると、\[ (\cos x)'=-\sin x \]
となることに注目します。
そこで、\[ t=\cos x \]
と置きます。
すると、\[ dt=-\sin x\,dx \]
なので、\[ \sin x\,dx=-dt \]
です。
したがって、\[ \int\sin x\cos^2x\,dx = -\int t^2\,dt \]
となります。
積分すると、\[ -\int t^2\,dt = -\frac13t^3+C \]
です。
最後に、\[ t=\cos x \]
を戻せば、\[ \boxed{ \int\sin x\cos^2x\,dx = -\frac13\cos^3x+C } \]
となります。
積分結果が合っているかどうか不安な方は、求めた結果を微分した関数が被積分関数と一致しているかどうかを確認してみましょう。
7. 定積分で置換積分を使う方法
置換積分は、不定積分だけでなく定積分でも使うことができます。
ただし、定積分で置換積分をするときには、一つ重要なポイントがあります。
それは、
積分する変数を変えたら、積分区間も一緒に変える
ということです。
例として、\[ \int_0^1 2x(x^2+1)^3\,dx \]
を求めてみましょう。
まず、\[ t=x^2+1 \]
と置きます。
すると、\[ dt=2x\,dx \]
です。
ここまでは不定積分の場合と同じです。
しかし今回は、\[ 0\leq x\leq1 \]
という積分区間があります。
そこで、\(x\) の値に対応する \(t\) の値を求めます。
\(x=0\) のとき、\[ t=0^2+1=1 \]
です。
また、\(x=1\) のとき、\[ t=1^2+1=2 \]
です。
したがって、\[ x:0\rightarrow1 \]
に対応して、\[ t:1\rightarrow2 \]
となります。
よって、\[ \int_0^1 2x(x^2+1)^3\,dx = \int_1^2t^3\,dt \]
と変形できます。
定積分の置換積分では、積分区間の変換を忘れないように注意しましょう!
あとは、\[ \int_1^2t^3\,dt = \left[\frac14t^4\right]_1^2 \]\[ = \frac14(2^4-1^4) \]\[ = \frac{15}{4} \]
となります。
したがって、\[ \boxed{ \int_0^1 2x(x^2+1)^3\,dx = \frac{15}{4} } \]
です。
定積分で \(x\) を \(t\) に置換した場合は、積分区間も \(x\) の値から \(t\) の値へ変更します。
積分区間を \(t\) に変更したあとは、最後に \(t\) を \(x\) に戻す必要はありません。
8. 置換積分の見分け方まとめ
最後に、置換積分を使いやすい形を整理しておきましょう。
| 積分 | \(t\) と置く部分 | 注目する関係 |
|---|---|---|
| \(\displaystyle\int2x(x^2+1)^3\,dx\) | \(x^2+1\) | \((x^2+1)'=2x\) |
| \(\displaystyle\int\frac{2x}{x^2+1}\,dx\) | \(x^2+1\) | \((x^2+1)'=2x\) |
| \(\displaystyle\int(3x+1)^4\,dx\) | \(3x+1\) | \((3x+1)'=3\) |
| \(\displaystyle\int\sin x\cos^2x\,dx\) | \(\cos x\) | \((\cos x)'=-\sin x\) |
置換積分を使うときは、まず積分の中にあるまとまった式に注目します。
そして、\[ \text{「この式を微分すると、ほかの部分が現れないか?」} \]
と考えてみましょう。
たとえば、\[ (x^2+1)'=2x \]
なので、\[ x^2+1 \]
と \(2x\) が同時に含まれている積分では、\[ t=x^2+1 \]
という置換が候補になります。
また、微分した結果が完全に一致していなくても、\[ x \quad\text{と}\quad 2x \]
のように定数倍の違いであれば調整できる場合があります。
置換積分を使うか迷ったら、「ある式」と「その式を微分したもの」が積分の中に含まれていないか確認してみましょう。
まとめ
この記事では、置換積分のやり方と、なぜ置換積分ができるのかについて解説しました。
置換積分では、\[ t=g(x) \]
と置いたとき、\[ dt=g'(x)\,dx \]
と表すことで、\[ \boxed{ \int f(g(x))g'(x)\,dx = \int f(t)\,dt } \]
と積分を変形できます。
この考え方のもとになっているのは、合成関数の微分公式\[ \frac{d}{dx}F(g(x)) = F'(g(x))g'(x) \]
です。
そのため、置換積分は合成関数の微分を逆向きに利用したものと考えることができます。
また、実際に置換する部分を探すときは、
「ある式を微分したものが、積分の中に含まれていないか?」
を確認することがポイントです。
微分した式が完全に一致していなくても、定数倍の違いであれば調整できる場合があります。
さらに、定積分で置換積分を使う場合には、変数だけでなく積分区間も新しい変数に合わせて変更することを忘れないようにしましょう。