積分を勉強していると、\[ \int x e^x\,dx \]
や\[ \int x\sin x\,dx \]
のように、2つの関数を掛け合わせた式を積分する問題が登場します。
このような積分でよく使われるのが「部分積分」です。
部分積分では、\[ \boxed{ \int f(x)g'(x)\,dx = f(x)g(x)-\int f'(x)g(x)\,dx } \]
という公式を使います。
しかし、この公式を初めて見たとき、
「なぜ積分したはずなのに、右辺にまた積分が出てくるの?」
「そもそも、この公式はどこから出てきたの?」
「どちらの関数を微分すればいいの?」
と疑問に思った方も多いのではないでしょうか。
実は、部分積分の公式は突然出てきたものではありません。
積の微分公式\[ (f(x)g(x))' = f'(x)g(x)+f(x)g'(x) \]
から簡単に導くことができます。
この記事では、
- 部分積分とは何か
- 部分積分の公式はなぜ成り立つのか
- 積の微分公式から部分積分を導出する方法
- 部分積分を使った積分の解き方
- どちらの関数を微分すればよいのか
- 部分積分を繰り返して使う方法
について、途中式を省略せずに順番に解説していきます。
1. 部分積分とは?
まずは、部分積分がどのような計算なのか確認してみましょう。
たとえば、\[ \int x e^x\,dx \]
という積分を考えます。
これは、\[ x \]
と\[ e^x \]
という2つの関数の積になっています。
しかし、\[ \int x e^x\,dx \]
をそのまま積分しようとしても、簡単には計算できません。
そこで使われるのが部分積分です。
部分積分では、積の一方を微分し、もう一方を積分することで、元の積分を別の積分へ変形します。
部分積分の基本公式は、\[ \boxed{ \int f(x)g'(x)\,dx = f(x)g(x) - \int f'(x)g(x)\,dx } \]
です。
この公式だけを見ると、少し複雑に感じるかもしれません。
なぜ、積分の公式なのに右辺にも積分が残っているのでしょうか?
実は、部分積分は積分を一発で求める公式ではありません。
元の積分を、より計算しやすい積分に変形するための公式なのです。
では、なぜこのような公式が成り立つのでしょうか。
その理由を、積の微分公式から確認してみましょう。
2. 部分積分の公式を積の微分から導出
部分積分の公式のもとになっているのは、積の微分公式です。
2つの関数 \(f(x)\)、\(g(x)\) の積を微分すると、\[ \boxed{ (f(x)g(x))' = f'(x)g(x)+f(x)g'(x) } \]
となります。
この式を少し変形してみましょう。
両辺から\[ f'(x)g(x) \]
を引き、左辺と右辺を入れ替えると、\[ f(x)g'(x) = (f(x)g(x))' - f'(x)g(x) \]
となります。
ここで、両辺を \(x\) について積分します。\[ \int f(x)g'(x)\,dx = \int \left\{ (f(x)g(x))' - f'(x)g(x) \right\}dx \]
積分を分けると、\[ \int f(x)g'(x)\,dx = \int(f(x)g(x))'\,dx - \int f'(x)g(x)\,dx \]
となります。
ここで、\[ (f(x)g(x))' \]
を積分すると、微分する前の\[ f(x)g(x) \]
に戻ります。
したがって、\[ \boxed{ \int f(x)g'(x)\,dx = f(x)g(x) - \int f'(x)g(x)\,dx } \]
となります。
これが部分積分の公式です。
つまり、部分積分はまったく新しい考え方から生まれた公式ではなく、
積の微分公式を変形して、両辺を積分したもの
なのです。
部分積分の公式は、積の微分公式から導くことができます。そのため、公式だけを丸暗記するよりも「積の微分を逆向きに利用している」と理解しておくと覚えやすくなります。
-
-
微分の基本公式を証明|
和・差・積・定数倍・\(x^n\) をわかりやすく導出微分計算では、定数・定数倍・和・差・積・\(x^n\) など、さまざまな基本公式を使います。 これらの公式を覚えておけば計算はできますが、「なぜこの公式が成り立つの?」と疑問に思ったことはないでしょう ...
3. 部分積分では何をしているの?
公式は導出できましたが、\[ \int f(x)g'(x)\,dx = f(x)g(x)-\int f'(x)g(x)\,dx \]
を見ただけでは、なぜこの変形が役に立つのか分かりにくいかもしれません。
ポイントは、\[ \int f(x)g'(x)\,dx \]
という計算しにくい積分を、\[ \int f'(x)g(x)\,dx \]
という計算しやすい積分に変えることです。
たとえば、\[ \int x e^x\,dx \]
を考えてみましょう。
ここで、\[ f(x)=x \]
とすると、\[ f'(x)=1 \]
になります。
一方、\[ g'(x)=e^x \]
とすると、\[ g(x)=e^x \]
です。
すると、部分積分によって、\[ \int x e^x\,dx \]
を、\[ \int e^x\,dx \]
という簡単な積分へ変えることができます。
部分積分の目的は、「積分をなくすこと」ではなく、「難しい積分を、より簡単な積分へ変えること」です。
ここを理解しておくと、部分積分を使う理由がかなり分かりやすくなります。
4. 部分積分を実際に使ってみよう
それでは、\[ \int x e^x\,dx \]
を実際に計算してみましょう。
部分積分の公式は、\[ \int f(x)g'(x)\,dx = f(x)g(x)-\int f'(x)g(x)\,dx \]
でした。
今回は、\[ f(x)=x \]\[ g'(x)=e^x \]
とします。
それぞれ微分・積分すると、\[ f'(x)=1 \]\[ g(x)=e^x \]
です。
したがって、\[ \int x e^x\,dx = xe^x-\int e^x\,dx \]
となります。
ここで、\[ \int e^x\,dx=e^x \]
なので、\[ \int x e^x\,dx = xe^x-e^x+C \quad (\text{ただし、}C\text{ は積分定数})\]
です。
したがって、\[ \boxed{ \int x e^x\,dx = e^x(x-1)+C } \]
となります。
元の\[ \int xe^x\,dx \]
よりも、\[ \int e^x\,dx \]
の方が簡単になっていますね。
これが部分積分の基本的な使い方です。
5. どちらの関数を微分すればいいの?
部分積分で迷いやすいのが、
2つの関数のうち、どちらを微分して、どちらを積分すればいいの?
という点です。
基本的には、
微分することで簡単になる関数を \(f(x)\) にする
と考えると分かりやすいでしょう。
先ほどの、\[ \int xe^x\,dx \]
なら、\[ x \]
を微分すると、\[ x\rightarrow1 \]
となって簡単になります。
一方、\[ e^x \]
は積分しても、\[ e^x \]
のままです。
そのため、\[ f(x)=x,\qquad g'(x)=e^x \]
とするのが自然です。
たとえば、\[ \int x\sin x\,dx \]
でも同じです。
\(x\) を微分すれば、\[ x\rightarrow1 \]
となります。
一方、\[ \sin x \]
は積分できるので、\[ f(x)=x,\qquad g'(x)=\sin x \]
とすると計算しやすくなります。
部分積分では、「微分すると簡単になる方」を微分するのが基本です。
ただし、これは絶対的なルールではありません。
最終的に、変形後の積分が元の積分より簡単になるかを考えることが重要です。
逆に、微分した結果が複雑になってしまう関数を \(f(x)\) にすると、部分積分をしても計算が簡単にならない場合があります。
6. 三角関数を含む部分積分
次に、\[ \int x\sin x\,dx \]
を計算してみましょう。
今回は、\[ f(x)=x \]\[ g'(x)=\sin x \]
とします。
すると、\[ f'(x)=1 \]
です。
また、\[ \sin x \]
を積分すると、\[ g(x)=-\cos x \]
となります。
部分積分の公式に代入すると、\[ \int x\sin x\,dx = x(-\cos x) - \int1\cdot(-\cos x)\,dx \]
となります。
整理すると、\[ =-x\cos x+\int\cos x\,dx \]
です。
したがって、\[ \boxed{ \int x\sin x\,dx = -x\cos x+\sin x+C } \]
となります。
この問題では、\[ \int x\sin x\,dx \]
という積分を、\[ \int\cos x\,dx \]
という簡単な積分へ変えることができました。
7. \(\log x\) の積分にも部分積分が使える
部分積分は、一見すると「関数の積」になっていない積分にも使えます。
代表例が、\(x>0\) における\[ \int\log x\,dx \]
です。
\(\log x\) しかないのに、どうやって部分積分を使うのでしょうか?
ポイントは、\[ \log x = 1\cdot\log x \]
と考えることです。
そこで、\[ f(x)=\log x \]\[ g'(x)=1 \]
とします。
すると、\[ f'(x)=\frac1x \]\[ g(x)=x \]
です。
部分積分を使うと、\[ \int\log x\,dx = x\log x - \int\frac1x\cdot x\,dx = x\log x-\int1\,dx \]
となります。
したがって、\[ \boxed{ \int\log x\,dx = x\log x-x+C } \]
です。
このように、見た目が積になっていなくても、\[ \log x=1\cdot\log x \]
と考えることで、部分積分を利用できる場合があります。
8. 部分積分を繰り返して使う場合
部分積分は、1回使えば必ず計算が終わるとは限りません。
たとえば、\[ \int x^2e^x\,dx \]
を考えてみましょう。
今回は、\[ f(x)=x^2,\qquad g'(x)=e^x \]
とします。
すると、\[ f'(x)=2x,\qquad g(x)=e^x \]
なので、\[ \int x^2e^x\,dx = x^2e^x-\int2xe^x\,dx \]
となります。
しかし、\[ \int2xe^x\,dx \]
という積分がまだ残っています。
そこで、もう一度部分積分を使います。
先ほどの計算結果から、積分定数を省略して書くと、\[ \int xe^x\,dx = xe^x-e^x \]
なので、\[ \int2xe^x\,dx = 2xe^x-2e^x \]
です。
したがって、\[ \int x^2e^x\,dx = x^2e^x-\left(2xe^x-2e^x\right)+C \]
となります。
整理すると、\[ =x^2e^x-2xe^x+2e^x+C \]
です。
よって、\[ \boxed{ \int x^2e^x\,dx = e^x(x^2-2x+2)+C } \]
となります。
このように、\[ x^2\rightarrow2x\rightarrow2\rightarrow0 \]
と、微分するたびに簡単になる関数が含まれている場合は、部分積分を繰り返すことで積分を求められます。
9. 定積分でも部分積分は使える
部分積分は、不定積分だけでなく定積分でも使えます。
不定積分の公式\[ \int f(x)g'(x)\,dx = f(x)g(x)-\int f'(x)g(x)\,dx \]
に積分区間を付けると、\[ \boxed{ \int_a^b f(x)g'(x)\,dx = \left[f(x)g(x)\right]_a^b - \int_a^b f'(x)g(x)\,dx } \]
となります。
例として、\[ \int_0^1 xe^x\,dx \]
を求めてみましょう。
先ほど、\[ \int xe^x\,dx = xe^x-\int e^x\,dx \]
と変形できることを確認しました。
したがって、\[ \int_0^1xe^x\,dx = \left[xe^x\right]_0^1 - \int_0^1e^x\,dx \]
となります。
第1項は、\[ \left[xe^x\right]_0^1 = e \]
です。
また、\[ \int_0^1e^x\,dx = \left[e^x\right]_0^1 = e-1 \]
なので、\[ \int_0^1xe^x\,dx = e-(e-1) \]\[ =1 \]
となります。
したがって、\[ \boxed{ \int_0^1xe^x\,dx=1 } \]
です。
10. 部分積分を使うべき積分の見分け方
最後に、どのような問題で部分積分を使うのか整理しておきましょう。
部分積分が特に使いやすいのは、
| 積分の形 | 例 |
|---|---|
| 多項式 × 指数関数 | \(\displaystyle\int xe^x\,dx\) |
| 多項式 × 三角関数 | \(\displaystyle\int x\sin x\,dx\) |
| 対数関数 | \(\displaystyle\int\log x\,dx\) |
| 多項式 × 対数関数 | \(\displaystyle\int x\log x\,dx\) |
などです。
特に、\[ x,\quad x^2,\quad x^3 \]
のような多項式は、微分を繰り返すと、\[ x^3\rightarrow3x^2\rightarrow6x\rightarrow6\rightarrow0 \]
のように簡単になります。
特に \(n\) が正の整数の場合、\[ \int x^ne^x\,dx \]
や\[ \int x^n\sin x\,dx \]
のような積分では、\(x^n\) を微分するたびに次数が下がるため、部分積分が有効です。
一方で、部分積分を使った結果、元より複雑な積分になってしまう場合は、関数の選び方が適切でないか、別の積分方法を使うべき可能性があります。
部分積分を使うか迷ったら、「一方を微分することで、残る積分が簡単になるか?」を確認してみましょう。
まとめ
この記事では、部分積分の公式がなぜ成り立つのか、積の微分公式から導出しながら解説しました。
部分積分の公式は、\[ \boxed{ \int f(x)g'(x)\,dx = f(x)g(x) - \int f'(x)g(x)\,dx } \]
です。
この公式は、積の微分公式\[ (f(x)g(x))' = f'(x)g(x)+f(x)g'(x) \]
を変形して、\[ f(x)g'(x) = (f(x)g(x))'-f'(x)g(x) \]
とし、両辺を積分することで導くことができます。
つまり、部分積分は新しい公式を丸暗記するものではなく、積の微分公式を積分に応用したものと考えることができます。
また、部分積分の目的は積分を一度で消すことではありません。\[ \int xe^x\,dx \]
を\[ \int e^x\,dx \]
へ変形するように、計算しにくい積分を、より簡単な積分へ変えることが重要です。
部分積分を使うときは、
「どちらを微分すれば、残る積分が簡単になるか?」
を意識すると、関数の選び方も分かりやすくなるでしょう。