三角関数

三角関数の合成とは?|
公式を加法定理からわかりやすく導出

「三角関数の合成ってどうやるの?」

「なぜ \(a\sin x+b\cos x\) を1つの三角関数にまとめられるの?」

高校数学では、\[ 3\sin x+4\cos x \]

のような式を、\[ 5\sin(x+\alpha) \]

のように、1つの三角関数にまとめることがあります。

この変形を三角関数の合成といいます。

しかし、\[ a\sin x+b\cos x = \sqrt{a^2+b^2}\sin(x+\alpha) \]

という公式だけを覚えようとすると、

「なぜ突然 \(\sqrt{a^2+b^2}\) が出てくるの?」

「\(\alpha\) はどうやって決めるの?」

と疑問に感じるかもしれません。

そこでこの記事では、

  • 三角関数の合成とは何か
  • 三角関数の合成公式
  • なぜ \(\sqrt{a^2+b^2}\) が出てくるのか
  • \(\alpha\) の求め方
  • 実際の合成のやり方
  • 合成を使って最大値・最小値を求める方法

について、途中式を省略せずに解説します。

1. 三角関数の合成とは?

まずは「三角関数の合成」とは何なのか確認しましょう。

例えば、\[ 3\sin x+4\cos x \]

という式を考えます。

この式には、\[ \sin x \]

と\[ \cos x \]

という2つの三角関数が含まれています。

三角関数の合成を利用すると、この式を\[ 5\sin(x+\alpha) \]

という1つの三角関数で表すことができます。

このように、\[ a\sin x+b\cos x \]

という形の式を、\[ r\sin(x+\alpha) \]

などの1つの三角関数にまとめることを、三角関数の合成といいます。

では、なぜこのような変形ができるのでしょうか。

そのカギになるのが、三角関数の加法定理です。

三角関数の加法定理とは?
公式・使い方・証明をわかりやすく解説

2026/9/29  

三角関数には、2つの角の和や差を扱うための「加法定理」と呼ばれる重要な公式があります。 代表的なものが、 \begin{eqnarray}\displaystyle \sin(\alpha+\beta ...


2. 三角関数の合成公式

最初に結論を確認しておきましょう。\[ a\sin x+b\cos x \]

は、\[ \boxed{ a\sin x+b\cos x = \sqrt{a^2+b^2}\sin(x+\alpha) } \]

と合成できます。

ただし、\(\alpha\) は、\[ \boxed{ \cos\alpha= \frac{a}{\sqrt{a^2+b^2}} } \]\[ \boxed{ \sin\alpha= \frac{b}{\sqrt{a^2+b^2}} } \]

を満たす角です。

ただし、\(a,b\) は同時に0ではないものとします。

ここで、

「どうして係数が \(\sqrt{a^2+b^2}\) になるの?」

と思う人もいるでしょう。

実は、この公式は加法定理から導くことができます。

次の章で詳しく見ていきましょう。


3. なぜ三角関数を合成できるの?

三角関数の合成公式を、加法定理から導いてみましょう。

次の式を考えます。\[ a\sin x+b\cos x \]

これを、\[ r\sin(x+\alpha) \]

という形に変形することを考えます。

STEP1 加法定理で展開する

三角関数の加法定理より、\[ \sin(x+\alpha) = \sin x\cos\alpha + \cos x\sin\alpha \]

です。

両辺を \(r\) 倍すると、\[ r\sin(x+\alpha) = r\sin x\cos\alpha + r\cos x\sin\alpha \]

となります。

順番を整理すると、\[ r\sin(x+\alpha) = r\cos\alpha\sin x + r\sin\alpha\cos x \]

です。

一方、合成したい式は、\[ a\sin x+b\cos x \]

でした。

この2つの式を比べてみましょう。\[ a\sin x+b\cos x \]\[ r\cos\alpha\sin x+r\sin\alpha\cos x \]

それぞれの係数が等しければよいので、\[ a=r\cos\alpha \]\[ b=r\sin\alpha \]

となります。


STEP2 \(r\) を求める

ここで、\[ a=r\cos\alpha \]\[ b=r\sin\alpha \]

をそれぞれ2乗します。\[ a^2=r^2\cos^2\alpha \]\[ b^2=r^2\sin^2\alpha \]

この2つの式を足すと、\[ a^2+b^2 = r^2\cos^2\alpha + r^2\sin^2\alpha \]

となります。

右辺を \(r^2\) でくくると、\[ a^2+b^2 = r^2 \left( \cos^2\alpha+\sin^2\alpha \right) \]

となります。

三角関数の基本公式\[ \sin^2\alpha+\cos^2\alpha=1 \]

を使うと、\[ a^2+b^2=r^2 \]

です。

三角関数の合成では、\(a,b\) が同時に0ではない場合を考えます。このとき\[ a^2+b^2>0 \]

なので、\[ \sqrt{a^2+b^2}>0 \]

です。

また、\(r\) が負の場合でも\[ -r\sin(x+\alpha) = r\sin(x+\alpha+\pi) \]

のように角度へ負号を吸収できます。

そのため、\[ \boxed{r=\sqrt{a^2+b^2}>0} \]

として問題ありません。

これが、三角関数の合成公式に\[ \sqrt{a^2+b^2} \]

が登場する理由です。


STEP3 \(\alpha\) を求める

先ほど、\[ a=r\cos\alpha \]\[ b=r\sin\alpha \]

という関係がありました。

ここに、\[ r=\sqrt{a^2+b^2} \]

を代入します。

すると、\[ a = \sqrt{a^2+b^2}\cos\alpha \]

なので、\[ \boxed{ \cos\alpha = \frac{a}{\sqrt{a^2+b^2}} } \]

となります。

同じように、\[ b = \sqrt{a^2+b^2}\sin\alpha \]

なので、\[ \boxed{ \sin\alpha = \frac{b}{\sqrt{a^2+b^2}} } \]

となります。

したがって、\[ \boxed{ a\sin x+b\cos x = \sqrt{a^2+b^2}\sin(x+\alpha) } \]

ただし、\[ \boxed{ \cos\alpha= \frac{a}{\sqrt{a^2+b^2}}, \qquad \sin\alpha= \frac{b}{\sqrt{a^2+b^2}} } \]

という三角関数の合成公式が得られます。


4. 三角関数の合成を実際にやってみよう

それでは、\[ 3\sin x+4\cos x \]

を実際に合成してみましょう。

STEP1 \(\sqrt{a^2+b^2}\) を求める

今回、\[ a=3,\qquad b=4 \]

です。

したがって、\[ \sqrt{a^2+b^2} = \sqrt{3^2+4^2} \]\[ = \sqrt{9+16} \]\[ = \sqrt{25} \]\[ = 5 \]

となります。

したがって、\[ 3\sin x+4\cos x = 5\sin(x+\alpha) \]

と表せます。


STEP2 \(\alpha\) を求める

\(\alpha\) は、\[ \cos\alpha=\frac35 \]\[ \sin\alpha=\frac45 \]

を満たす角です。

したがって、\[ \boxed{ 3\sin x+4\cos x = 5\sin(x+\alpha) } \]

ただし、\[ \boxed{ \cos\alpha=\frac35,\qquad \sin\alpha=\frac45 } \]

となります。

ここで、

「\(\alpha\) を具体的な角度まで求めなくていいの?」

と思うかもしれません。

\(\frac35\)、\(\frac45\) は30°や45°のような代表的な三角比ではないため、問題によっては\[ \cos\alpha=\frac35,\qquad \sin\alpha=\frac45 \]

のまま表して構いません。


5. なぜ \(\alpha\) の位置に注意する必要があるの?

三角関数の合成では、\[ \cos\alpha = \frac{a}{\sqrt{a^2+b^2}} \]\[ \sin\alpha = \frac{b}{\sqrt{a^2+b^2}} \]

を満たす \(\alpha\) を考えます。

ここで重要なのが、\(\alpha\) がどの象限にあるのかです。

なぜ象限を確認する必要があるのでしょうか。

例えば、\[ \sin\alpha=\frac45 \]

だけを見ても、\(\alpha\) は1つに決まりません。

\(0\leq\alpha<2\pi\) の範囲だけを考えても、\(\sin\alpha>0\) になる角は第1象限と第2象限にあります。

同じように、\[ \cos\alpha=\frac35 \]

だけを見ても、\(0\leq\alpha<2\pi\) の範囲では、\(\cos\alpha>0\) となる角は第1象限と第4象限にあります。

そこで、\[ \cos\alpha=\frac35>0 \]

かつ、\[ \sin\alpha=\frac45>0 \]

という両方の符号を確認することで、\(\alpha\) が第1象限にあることが分かります。


象限を間違えると合成した式も変わってしまう

例えば、\[ 3\sin x-4\cos x \]

を合成してみましょう。

この場合、\[ a=3,\qquad b=-4 \]

なので、\[ r = \sqrt{3^2+(-4)^2} = 5 \]

です。

したがって、\[ \cos\alpha = \frac35 \]\[ \sin\alpha = -\frac45 \]

となります。

ここで符号を見ると、\[ \cos\alpha>0 \]\[ \sin\alpha<0 \]

です。

したがって、例えば\[ -\frac{\pi}{2}<\alpha<0 \]

の範囲から \(\alpha\) を選ぶことができます。

実際、\[ 5\sin(x+\alpha) \]

を展開すると、\[ 5\sin(x+\alpha) = 5\cos\alpha\sin x + 5\sin\alpha\cos x \]

です。

ここに、\[ \cos\alpha=\frac35, \qquad \sin\alpha=-\frac45 \]

を代入すると、\[ 5\sin(x+\alpha) = 5\cdot\frac35\sin x + 5\cdot\left(-\frac45\right)\cos x \]\[ = 3\sin x-4\cos x \]

となり、元の式と一致します。

もし \(\alpha\) の象限を間違えて、\[ \sin\alpha=\frac45 \]

としてしまうと、\[ 5\sin(x+\alpha) = 3\sin x+4\cos x \]

となり、元の式とは違う式になってしまいます。

したがって、三角関数の合成では、\[ \boxed{ \cos\alpha\text{ と }\sin\alpha\text{ の符号を確認する} } \]

ことが重要です。

つまり、\(\alpha\) の象限を確認する目的は、元の \(\sin x\) と \(\cos x\) の係数の符号を正しく再現するためなのです。


6. \(\cos\) を使って合成することもできる

ここまでは、\[ a\sin x+b\cos x \]

を、\[ r\sin(x+\alpha) \]

の形に合成してきました。

しかし、実は\[ \cos \]

を使って合成することもできます。

余弦の加法定理より、\[ \cos(x-\beta) = \cos x\cos\beta + \sin x\sin\beta \]

です。

両辺を \(r\) 倍すると、\[ r\cos(x-\beta) = r\sin\beta\sin x + r\cos\beta\cos x \]

となります。

したがって、\[ a=r\sin\beta \]\[ b=r\cos\beta \]

となる \(\beta\) を選べば、\[ \boxed{ a\sin x+b\cos x = \sqrt{a^2+b^2}\cos(x-\beta) } \]

と表すこともできます。

ただし、\[ \sin\beta = \frac{a}{\sqrt{a^2+b^2}} \]\[ \cos\beta = \frac{b}{\sqrt{a^2+b^2}} \]

です。

つまり、三角関数の合成には、\[ \sin \]

を使う方法と、\[ \cos \]

を使う方法の両方があります。

問題に合わせて使いやすい方を選びましょう。


7. 三角関数を合成すると何がうれしいの?

ここまで三角関数の合成方法を説明してきました。

しかし、

「わざわざ1つの三角関数にまとめる意味はあるの?」

と思う人もいるでしょう。

三角関数を合成すると、最大値・最小値などを非常に簡単に調べられるようになります。

例えば、\[ 3\sin x+4\cos x \]

を考えてみましょう。

先ほど、\[ 3\sin x+4\cos x = 5\sin(x+\alpha) \]

と合成しました。

ここで、\[ -1\leq\sin(x+\alpha)\leq1 \]

なので、すべての実数 \(x\) を考えるなら、\[ -5 \leq 5\sin(x+\alpha) \leq 5 \]

となります。

したがって、\[ \boxed{ -5\leq3\sin x+4\cos x\leq5 } \]

となります。

つまり、\[ 3\sin x+4\cos x \]

の最大値は、\[ \boxed{5} \]

最小値は、\[ \boxed{-5} \]

です。

このように、2つの三角関数が混ざっている式でも、1つの三角関数に合成することで値の範囲を簡単に調べられます。

ただし、\(x\) の範囲が指定されている場合には、\(x+\alpha\) の範囲も確認して最大値・最小値を求める必要があります。


8. 合成したグラフはどうなる?

三角関数の合成には、もう1つ重要な意味があります。

例えば、\[ y=3\sin x+4\cos x \]

は、\[ y=5\sin(x+\alpha) \]

と表すことができます。

つまり、一見すると\[ \sin x \]

と\[ \cos x \]

が混ざった複雑な関数に見えますが、実際には横方向にずれた1本の正弦曲線として考えることができます。

また、\[ y=5\sin(x+\alpha) \]

なので、振幅は\[ \boxed{5} \]

です。

一般に、\[ y=a\sin x+b\cos x \]

の振幅は、\[ \boxed{\sqrt{a^2+b^2}} \]

となります。

これは、三角関数の合成で出てきた\[ r=\sqrt{a^2+b^2} \]

そのものです。

つまり、\[ \sqrt{a^2+b^2} \]

は単なる計算上の係数ではなく、合成後の三角関数の振幅を表しているのです。


9. 三角関数の合成についてよくある疑問

なぜ \(\sqrt{a^2+b^2}\) が出てくるの?

加法定理と係数比較から、\[ a=r\cos\alpha,\qquad b=r\sin\alpha \]

となるためです。

この2式を2乗して足し、\[ \sin^2\alpha+\cos^2\alpha=1 \]

を利用すると、\[ r=\sqrt{a^2+b^2} \]

が得られます。

詳しい導出は「3. なぜ三角関数を合成できるの?」で説明しています。


\(\sin\) と \(\cos\) のどちらで合成すればいいの?

どちらでも構いません。

例えば、\[ a\sin x+b\cos x \]

は、\[ \sqrt{a^2+b^2}\sin(x+\alpha) \]

と表すことも、\[ \sqrt{a^2+b^2}\cos(x-\beta) \]

と表すこともできます。

問題に合わせて使いやすい方を選びましょう。


\(\alpha\) を具体的な角度まで求める必要はあるの?

必ずしも必要ではありません。

例えば、\[ \cos\alpha=\frac35, \qquad \sin\alpha=\frac45 \]

となった場合、\(\alpha\) は30°や45°のような代表的な角ではありません。

そのため、\[ \cos\alpha=\frac35,\qquad \sin\alpha=\frac45 \]

という条件を示したまま合成結果を表すことがあります。


まとめ

今回は、三角関数の合成について解説しました。

三角関数の合成を利用すると、\[ a\sin x+b\cos x \]

を、\[ \boxed{ a\sin x+b\cos x = \sqrt{a^2+b^2}\sin(x+\alpha) } \]

という1つの三角関数にまとめることができます。

ただし、\[ \boxed{ \cos\alpha = \frac{a}{\sqrt{a^2+b^2}}, \qquad \sin\alpha = \frac{b}{\sqrt{a^2+b^2}} } \]

です。

この公式は丸暗記する必要はありません。

加法定理\[ \sin(x+\alpha) = \sin x\cos\alpha + \cos x\sin\alpha \]

から、\[ a=r\cos\alpha, \qquad b=r\sin\alpha \]

と係数を比較し、\[ \sin^2\alpha+\cos^2\alpha=1 \]

を利用すると、\[ r=\sqrt{a^2+b^2} \]

が自然に導かれます。

つまり、三角関数の合成は加法定理を逆向きに利用したものと考えることができます。

さらに、合成を利用すると、\[ a\sin x+b\cos x \]

の最大値・最小値やグラフの形も調べやすくなります。

公式だけを覚えるのではなく、

「なぜ1つの三角関数にまとめられるのか」

まで理解しておくと、三角関数の合成をさまざまな問題で応用できるようになります。

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