「1は素数なの?」
「1の約数は1しかないのに、どうして素数ではないの?」
素数について勉強していると、このような疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。
結論から言うと、1は素数ではありません。
現在、素数は「1より大きい自然数のうち、正の約数が1とその数自身の2つだけである数」と定義されています。
そのため、1は素数の定義には当てはまりません。
しかし、ここで新たな疑問が生まれます。
「では、なぜわざわざ1を素数から除外しているのでしょうか?」
単に「そう定義されているから」で終わってしまうと、少し納得しにくいですよね。
そこでこの記事では、
- そもそも素数とは何か
- なぜ1は素数ではないのか
- 1を素数にすると何が困るのか
- 素因数分解の一意性と1の関係
について、具体例を使いながらわかりやすく解説します。
1. そもそも素数とは?
まずは、素数の定義を確認しましょう。
素数とは、
「1より大きい自然数のうち、正の約数が1とその数自身の2つだけである数」
のことです。
例えば、2の正の約数は、\[ 1,\ 2 \]
の2つだけです。
3の正の約数も、\[ 1,\ 3 \]
の2つだけです。
そのため、2と3はどちらも素数です。
同じように、\[ 2,\ 3,\ 5,\ 7,\ 11,\ 13,\ 17,\cdots \]
などが素数になります。
一方、例えば6の正の約数は、\[ 1,\ 2,\ 3,\ 6 \]
です。
1と6以外にも2と3という約数が存在するため、6は素数ではありません。
2. 1は素数なの?
それでは、1について考えてみましょう。
先ほど確認した素数の定義は、
「1より大きい自然数のうち、正の約数が1とその数自身の2つだけである数」
でした。
1は「1より大きい自然数」ではありません。
したがって、
1は素数ではありません。
また、1は合成数でもありません。
合成数とは、1より大きい自然数のうち、素数ではない数のことです。
したがって1は、
「素数でも合成数でもない特別な数」
として扱われます。
ただし、ここまでの説明では、
「素数の定義から1が除外されているから、1は素数ではない」
と説明しただけです。
すると、
そもそも、なぜ素数の定義から1を除外しているの?
という疑問が残りますよね。
ここからが、この記事で一番重要な部分です。
3. なぜ1は素数ではないの?
1を素数に含めない重要な理由の一つとして、素因数分解の一意性が挙げられます。
少し難しい言葉なので、具体例を使って考えてみましょう。
例えば、30を素因数分解すると、\[ 30=2\times3\times5 \]
となります。
2、3、5はすべて素数ですね。
もちろん、\[ 30=5\times3\times2 \]
のように順番を入れ替えることもできます。
しかし、掛ける順番を無視すれば、\[ 30=2\times3\times5 \]
という素因数分解は1通りに決まっています。
このように、2以上の整数は、素数の積として表すことができ、その表し方は素因数の順序を除いて一意に定まります。
これを算術の基本定理といいます。
ここでいう「一意」とは、掛ける順番を入れ替えたものは同じ素因数分解として考える、という意味です。
4. もし1を素数にするとどうなる?
ここで、もし1も素数として扱うことにしたらどうなるのか考えてみましょう。
先ほど、\[ 30=2\times3\times5 \]
と素因数分解しました。
しかし、1を掛けても数の値は変わらないため、\[ 30=1\times2\times3\times5 \quad (n=1,2,3,\cdots)\]
とも書けます。
さらに、\[ 30=1\times1\times2\times3\times5 \]
とも書けますし、\[ 30=1\times1\times1\times2\times3\times5 \]
とも書けます。
一般的には、\[ 30=1^n\times2\times3\times5 \]
のように、1を何個でも追加できてしまいます。
つまり、1を素数として扱うと、\[ 30=2\times3\times5 \]\[ 30=1\times2\times3\times5 \]\[ 30=1^2\times2\times3\times5 \]\[ 30=1^3\times2\times3\times5 \]\[ \vdots \]
というように、同じ30に対して異なる形をいくらでも作れてしまいます。
すると、1を素因数として何個付け加えるかによって、同じ整数に対して異なる形の素因数分解をいくらでも作れてしまいます。
そのため、1まで素数に含めると、
「2以上の整数は、素数の積として順序を除いて一意に表せる」
という算術の基本定理を、そのままの形では述べられなくなります。
そこで1を素数から除外することで、
2以上の整数は、素数の積として順序を除いて一意に表すことができる。
という非常に重要な性質を、すっきりと表すことができます。
これが、1を素数に含めないことの数学的な重要性を理解する代表的な考え方です。
5. 「1の約数は1だけ」だから素数ではないの?
ここで、もう一つ混乱しやすいポイントがあります。
「素数は約数が少ない数なんだから、約数が1個しかない1も素数なのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、素数は単純に「約数が少ない数」と定義されているわけではありません。
素数は、
「1より大きい自然数で、正の約数が1とその数自身の2つだけである数」
です。
例えば2なら、\[ 1,\ 2 \]
という異なる2つの正の約数があります。
一方、1の場合は、\[ 1 \]
しかありません。
「1」と「その数自身」が同じ数なので、正の約数は1個しかありません。
したがって、
- 2 → 正の約数は1と2の2個 → 素数
- 3 → 正の約数は1と3の2個 → 素数
- 1 → 正の約数は1の1個 → 素数ではない
となります。
つまり、約数が1個しかないから素数なのではなく、むしろ現在の素数の定義には当てはまらないということです。
6. 昔から1は素数ではなかったの?
実は、「1は素数ではない」という扱いが、歴史上ずっと共通していたわけではありません。
過去には、1を素数として扱った数学者や文献もありました。しかし現在では、1を素数に含めず、2を最小の素数として扱います。
(※参考:Wolfram MathWorld『Prime Number』)
つまり、
「1が素数ではない」という扱いは、単なる数の見た目から自動的に決まるものではなく、数学で使いやすいように整理された定義でもある
と考えると分かりやすいでしょう。
現在では、\[ 2,\ 3,\ 5,\ 7,\ 11,\cdots \]
が素数であり、1は素数にも合成数にも含めません。
まとめ
今回は、「なぜ1は素数ではないのか?」について解説しました。
素数とは、
「1より大きい自然数のうち、正の約数が1とその数自身の2つだけである数」
です。
そのため、定義上1は素数ではありません。
しかし、より重要なのは、
「なぜ素数の定義から1を除外しているのか?」
という疑問です。
1を素数として扱うと、例えば30について、\[ 30=2\times3\times5 \]
だけでなく、\[ 30=1\times2\times3\times5 \]\[ 30=1^2\times2\times3\times5 \]\[ 30=1^3\times2\times3\times5 \]
のように、1をいくらでも追加できてしまいます。
1を素数から除外することで、「2以上の整数は、素数の積として順序を除いて一意に表せる」という算術の基本定理を、すっきりとした形で扱うことができます。
したがって、
1は素数でも合成数でもありません。
1を素数に含めないことには、素因数分解の一意性をきれいに扱えるという数学的な重要性があります。
「1は素数ではない」と丸暗記するだけでなく、なぜそのような定義になっているのかまで理解しておくと、素数や素因数分解についてより深く理解できると思います。