おもしろ数学(数学コラム)

立方完成とは?やり方・公式・証明を
具体例付きでわかりやすく解説

二次関数を学ぶとき、「平方完成」という計算方法が登場します。

平方完成とは、二次式を

\[ a(x-p)^2+q \]

という形に変形することです。

それでは、三次式でも同じような変形ができるのでしょうか?

実は、三次式にも「立方完成」と呼ばれる変形方法があります。

立方完成を使うと、三次式の二次の項を消去することができ、三次方程式を解きやすい形に変形できます。

しかし、

「立方完成はどのように計算するのか?」

「なぜ二次の項を消すことができるのか?」

と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。

この記事では、立方完成の基本的なやり方を具体例とともに解説した後、公式の導出や三次方程式への応用について説明します。

おろち
おろち

平方完成の具体的なやり方や公式の導出については、以下の記事で詳しく解説しています。

平方完成のやり方をわかりやすく解説!
公式・例題・分数の場合まで

2026/10/25    

二次関数の問題を解いていると、「平方完成」という計算方法が登場することがあります。 平方完成とは、二次式を \[ a(x-p)^2+q \] という形に変形することです。 例えば、 \[ x^2+6x ...

1. 立方完成とは?

立方完成とは、三次式

\[ ax^3+bx^2+cx+d \]

を、二次の項が現れない形に変形することです。

具体的には、

\[ \boxed{a(x-p)^3+q(x-p)+r} \]

という形に変形します。(ただし、\(a\neq0\) とします。)

例えば、

\[ x^3+6x^2+9x+4 \]

という三次式は、

\[ \boxed{(x+2)^3-3(x+2)+2} \]

と変形できます。

実際に立方完成した式を展開すると、

\[ \begin{aligned} &(x+2)^3-3(x+2)+2\\ &=x^3+6x^2+12x+8-3x-6+2\\ &=x^3+6x^2+9x+4 \end{aligned} \]

となり、元の式と一致します。

ここで重要なのは、\(x+2\) をひとまとまりとして見ると、二次の項が存在しないことです。

つまり、\(y=x+2\) と置くと、

\[ y^3-3y+2 \]

という形になります。

このように、立方完成は変数を置き換えたときに二次の項が消えるようにする変形なのです。


2. 立方完成のやり方

2.1. 三次の項の係数が \(1\) の場合

次の式を立方完成してみましょう。

\[ x^3+6x^2+9x+4 \]

まず、三次の展開公式を確認します。

\[ (x+p)^3=x^3+3px^2+3p^2x+p^3 \]

この公式を利用して、\(x^3+6x^2\) を含む立方の形を考えます。

\(3p=6\) なので、

\[ p=2 \]

です。

したがって、\((x+2)^3\) を利用します。

まず、\((x+2)^3\) を展開すると、

\[ (x+2)^3=x^3+6x^2+12x+8 \]

となります。

元の式 \(x^3+6x^2+9x+4\) と比較すると、\(x^3+6x^2\) の部分は一致していますが、残りの項が異なっています。

そこで、余分な \(12x+8\) を引き、元の式に含まれる \(9x+4\) を加えることで、次のように変形できます。

\[ \begin{aligned} &x^3+6x^2+9x+4\\ &=(x+2)^3-(12x+8)+9x+4\\ &=(x+2)^3-12x-8+9x+4\\ &=(x+2)^3-3x-4\\ &=(x+2)^3-3(x+2)+2 \end{aligned} \]

最後の変形では、\(-3x-4\) を \((x+2)\) を使って表すために、

\[ -3x-4=-3(x+2)+2 \]

としています。

よって、

\[ \boxed{(x+2)^3-3(x+2)+2} \]

となります。


2.2. 三次の項の係数が1でない場合

次の式を立方完成してみましょう。

\[ 2x^3-6x^2+8x-4 \]

まず、三次の項の係数である \(2\) でくくります。

\[ 2x^3-6x^2+8x-4 =2(x^3-3x^2+4x-2) \]

ここで、括弧内の

\[ x^3-3x^2+4x-2 \]

を立方完成します。

三次の展開公式

\[ (x+p)^3=x^3+3px^2+3p^2x+p^3 \]

を利用すると、\(x^2\) の係数を比較して、

\[ 3p=-3 \]

となるので、

\[ p=-1 \]

です。

したがって、\((x-1)^3\) を利用します。

これを展開すると、

\[ (x-1)^3=x^3-3x^2+3x-1 \]

となります。

元の式と比較すると、\(x^3-3x^2\) の部分は一致していますが、残りの項が異なっています。

そこで、余分な \(3x-1\) を引き、元の式に含まれる \(4x-2\) を加えることで、次のように変形できます。

\[ \begin{aligned} &x^3-3x^2+4x-2\\ &=(x-1)^3-(3x-1)+4x-2\\ &=(x-1)^3-3x+1+4x-2\\ &=(x-1)^3+x-1\\ &=(x-1)^3+(x-1) \end{aligned} \]

したがって、最初にくくった \(2\) を掛けると、

\[ \begin{aligned} &2x^3-6x^2+8x-4\\ &=2\{(x-1)^3+(x-1)\}\\ &=2(x-1)^3+2(x-1) \end{aligned} \]

となります。

よって、

\[ \boxed{2(x-1)^3+2(x-1)} \]

が求める立方完成の結果です。

このように、三次の項の係数が \(1\) でない場合は、最初にその係数でくくることで、係数が \(1\) の場合と同じ手順で立方完成できます。


3. 立方完成の公式を証明

ここからは、一般的な三次式

\[ ax^3+bx^2+cx+d \]

を立方完成する方法を考えます。

ただし、\(a\neq0\) とします。

まず、三次の項の係数 \(a\) でくくると、

\[ ax^3+bx^2+cx+d =a\left(x^3+\frac ba x^2+\frac ca x+\frac da\right) \]

となります。

ここで、三次の展開公式

\[ (x+p)^3=x^3+3px^2+3p^2x+p^3 \]

を利用します。

\(x^2\) の係数を比較すると、

\[ 3p=\frac{b}{a} \]

となるので、

\[ p=\frac{b}{3a} \]

です。

したがって、\(\left(x+\frac{b}{3a}\right)^3\) を利用します。

これを展開すると、

\[ \begin{aligned} \left(x+\frac{b}{3a}\right)^3 &=x^3+3\cdot\frac{b}{3a}x^2 +3\left(\frac{b}{3a}\right)^2x +\left(\frac{b}{3a}\right)^3\\ &=x^3+\frac{b}{a}x^2 +\frac{b^2}{3a^2}x +\frac{b^3}{27a^3} \end{aligned} \]

となります。

この式を見ると、最初の2項が、先ほどの

\[ x^3+\frac{b}{a}x^2 \]

と一致していることが分かります。

そこで、残りの項を調整するために、

\[ \begin{aligned} x^3+\frac{b}{a}x^2 ={}&\left(x+\frac{b}{3a}\right)^3\\ &-\frac{b^2}{3a^2}x-\frac{b^3}{27a^3} \end{aligned} \]

と変形します。

この関係を元の三次式に利用すると、

\[ \begin{aligned} &ax^3+bx^2+cx+d\\ &=a\left(x^3+\frac{b}{a}x^2+\frac{c}{a}x+\frac{d}{a}\right)\\ &=a\left\{ \left(x+\frac{b}{3a}\right)^3 -\frac{b^2}{3a^2}x -\frac{b^3}{27a^3} +\frac{c}{a}x+\frac{d}{a} \right\}\\ &=a\left(x+\frac{b}{3a}\right)^3 -\frac{b^2}{3a}x-\frac{b^3}{27a^2} +cx+d\\ &=a\left(x+\frac{b}{3a}\right)^3 +\left(c-\frac{b^2}{3a}\right)x +d-\frac{b^3}{27a^2} \end{aligned} \]

となります。

ここまでの計算により、

\[ \begin{aligned} ax^3+bx^2+cx+d ={}&a\left(x+\frac{b}{3a}\right)^3\\ &+\left(c-\frac{b^2}{3a}\right)x\\ &+d-\frac{b^3}{27a^2} \end{aligned} \]

と変形できました。

ここで、三乗の項は \(\left(x+\frac{b}{3a}\right)^3\) という形になっていますが、一次の項にはまだ \(x\) が残っています。

そこで、一次の項も \(\left(x+\frac{b}{3a}\right)\) を使って表すことを考えます。

まず、

\[ x=\left(x+\frac{b}{3a}\right)-\frac{b}{3a} \]

という関係が成り立つことに注目します。

この関係を先ほどの式に代入すると、

\[ \begin{aligned} &ax^3+bx^2+cx+d\\ &=a\left(x+\frac{b}{3a}\right)^3\\ &\quad+\left(c-\frac{b^2}{3a}\right) \left\{\left(x+\frac{b}{3a}\right)-\frac{b}{3a}\right\}\\ &\quad+d-\frac{b^3}{27a^2} \end{aligned} \]

となります。

次に、括弧を外して整理します。

\[ \begin{aligned} &ax^3+bx^2+cx+d\\ &=a\left(x+\frac{b}{3a}\right)^3\\ &\quad+\left(c-\frac{b^2}{3a}\right) \left(x+\frac{b}{3a}\right)\\ &\quad-\left(c-\frac{b^2}{3a}\right)\frac{b}{3a} +d-\frac{b^3}{27a^2}\\ &=a\left(x+\frac{b}{3a}\right)^3\\ &\quad+\left(c-\frac{b^2}{3a}\right) \left(x+\frac{b}{3a}\right)\\ &\quad-\frac{bc}{3a}+\frac{b^3}{9a^2} +d-\frac{b^3}{27a^2} \end{aligned} \]

ここで、定数項に含まれる

\[ \frac{b^3}{9a^2}-\frac{b^3}{27a^2} \]

を通分すると、

\[ \begin{aligned} \frac{b^3}{9a^2}-\frac{b^3}{27a^2} &=\frac{3b^3}{27a^2}-\frac{b^3}{27a^2}\\ &=\frac{2b^3}{27a^2} \end{aligned} \]

となります。

したがって、

\[ \boxed{ \begin{aligned} ax^3+bx^2+cx+d ={}&a\left(x+\frac{b}{3a}\right)^3\\ &+\left(c-\frac{b^2}{3a}\right) \left(x+\frac{b}{3a}\right)\\ &+d-\frac{bc}{3a}+\frac{2b^3}{27a^2} \end{aligned} } \]

となります。

これで、三次式を \(\left(x+\frac{b}{3a}\right)\) の三乗の項、一次の項、定数項だけで表すことができました。


4. なぜ立方完成で二次の項が消えるのか?

第3章では、三次の展開公式を利用して立方完成の公式を導出しました。

ここでは別の視点から、変数変換によって二次の項が消える理由を考えてみましょう。

一般的な三次式を

\[ ax^3+bx^2+cx+d \]

とします。

ここで、新しい変数 \(y\) を用いて、

\[ x=y+k \]

と置いてみます。

代入すると、

\[ a(y+k)^3+b(y+k)^2+c(y+k)+d \]

となります。

これを展開すると、

\[ \begin{aligned} &a(y+k)^3+b(y+k)^2+c(y+k)+d\\ &=ay^3+3aky^2+3ak^2y+ak^3\\ &\quad+by^2+2bky+bk^2+cy+ck+d\\ &=ay^3+(3ak+b)y^2\\ &\quad+(3ak^2+2bk+c)y\\ &\quad+ak^3+bk^2+ck+d \end{aligned} \]

となります。

ここで、二次の項を消したいので、

\[ 3ak+b=0 \]

とすればよいことが分かります。

この方程式を解くと、

\[ \boxed{k=-\frac{b}{3a}} \]

です。

したがって、

\[ \boxed{x=y-\frac{b}{3a}} \]

と置けば、二次の項を消去できます。

つまり、立方完成で使用する変数変換は、二次の項の係数が \(0\) になるように決められているのです。


5. 立方完成と三次方程式の関係

立方完成は、三次方程式を解くときにも利用できます。

一般的な三次方程式

\[ ax^3+bx^2+cx+d=0 \]

に対して、

\[ x=y-\frac{b}{3a} \]

と置くと、

\[ y^3+py+q=0 \]

という形に変形できます。

おろち
おろち

ここで用いる \(p,q\) は、立方完成後の三次方程式の係数を表すもので、第1章の \(p,q\) とは別のものです。

ただし、

\[ p=\frac{3ac-b^2}{3a^2} \]

\[ q=\frac{2b^3-9abc+27a^2d}{27a^3} \]

です。

このような二次の項を含まない三次方程式を、簡約三次方程式といいます。

簡約三次方程式は、カルダノの公式を使って解くことができます。

つまり、立方完成は、一般的な三次方程式をカルダノの公式が適用しやすい形に変形するための重要な計算方法なのです。

カルダノの公式の詳しい導出や、なぜこのような変数変換を行うのかについては、以下の記事で解説しています。

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まとめ

この記事では、立方完成のやり方と公式の導出について解説しました。

立方完成のポイントは、三次式の二次の項を消去することです。

一般的な三次式

\[ ax^3+bx^2+cx+d \]

に対して、

\[ x=y-\frac{b}{3a} \]

と置くことで、二次の項を含まない形に変形できます。

立方完成は平方完成と比べると扱う機会が少ないですが、三次方程式の解法を理解するうえで重要な考え方です。

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