おもしろ数学(数学コラム)

トレミーの定理とは?
公式・証明・使い方をわかりやすく解説

高校数学の図形問題では、円に内接する四角形が登場することがあります。

そのような問題で役立つのが、トレミーの定理です。

トレミーの定理を使うと、円に内接する四角形について、\[ AC\cdot BD=AB\cdot CD+AD\cdot BC \]

という関係が成り立ちます。

しかし、公式だけを見ると、

「なぜこんな公式が成り立つの?」

と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

特にトレミーの定理の証明では、補助線を1本引くことで相似な三角形を作りますが、その補助線を思いつく理由が分からないと、証明を丸暗記することになってしまいます。

この記事では、トレミーの定理とは何かを確認したうえで、なぜその補助線を引くのかまで含めて、途中式を省略せずに証明します。

最後に実際の問題での使い方も確認していきましょう。

1. トレミーの定理とは?

まずは、トレミーの定理がどのような定理なのか確認しましょう。

円に内接する四角形 \(ABCD\) を考えます。

このとき、4つの辺と2本の対角線の間には、\[ \boxed{ AC\cdot BD = AB\cdot CD+AD\cdot BC } \]

という関係が成り立ちます。

これをトレミーの定理といいます。

トレミーの定理は、プトレマイオスの定理と呼ばれることもあります。

公式を言葉で表すと、

対角線の積=向かい合う辺どうしの積の和

です。

ただし、この公式を利用するためには重要な条件があります。

トレミーの定理は、4つの頂点が同じ円周上にある四角形、つまり円に内接する四角形に対して使うことができます。

したがって、どのような四角形に対しても\[ AC\cdot BD = AB\cdot CD+AD\cdot BC \]

が成り立つわけではない点には注意しましょう。


2. トレミーの定理の公式の覚え方

トレミーの定理は、\[ AC\cdot BD = AB\cdot CD+AD\cdot BC \]

という公式ですが、文字だけで丸暗記すると、どの辺を掛ければよいのか分からなくなりやすいです。

そこで、\[ \boxed{ \text{対角線の積} = \text{向かい合う辺の積} + \text{もう1組の向かい合う辺の積} } \]

と図形の位置関係で覚えるのがおすすめです。

四角形 \(ABCD\) の対角線は、\[ AC,\qquad BD \]

なので、左辺は\[ AC\cdot BD \]

です。

一方、向かい合っている辺の組は、\[ AB\text{ と }CD \]

および\[ AD\text{ と }BC \]

です。

したがって、\[ AB\cdot CD+AD\cdot BC \]

となります。

よって、\[ \boxed{ AC\cdot BD = AB\cdot CD+AD\cdot BC } \]

です。

文字の並びをそのまま覚えるよりも、「対角線の積=向かい合う辺の積の和」と覚えておくと、頂点の名前が変わった場合にも対応しやすくなります。


3. トレミーの定理を三角形の相似で証明

それでは、トレミーの定理\[ AC\cdot BD = AB\cdot CD+AD\cdot BC \]

を証明してみましょう。

3-1. 2組の三角形が相似になることを示す

円に内接する四角形 \(ABCD\) を考えます。

ここで、対角線 \(AC\) 上に点 \(E\) をとり、\[ \angle ABE=\angle DBC \]

となるように線分 \(BE\) を引きます。

おろち
おろち

角Bの二等分線を引いているわけではなく、\[ \angle ABE=\angle DBC \]となるように線分 \(BE\) を引くことがポイントです。

この補助線を利用すると、2組の相似な三角形を作ることができます。

まず、\[ \triangle ABE \]

と\[ \triangle DBC \]

について考えてみましょう。

補助線 \(BE\) は、\[ \boxed{\angle ABE=\angle DBC} \]

となるように引いているため、この2つの角は等しくなります。


一方、\(\angle BAC\) と \(\angle BDC\) は、どちらも弧 \(BC\) に対する円周角です。

同じ弧に対する円周角は等しいので、\[ \boxed{\angle BAC=\angle BDC} \]

となります。

つまり、2組の角がそれぞれ等しいので、\[ \color{red}{\triangle ABE \sim \triangle DBC} \]

となります。

おろち
おろち

日本の教科書などでは、相似を表す記号として「∽」が使われることもあります。本記事では、国際的に広く使われている「\(\sim\)」を相似記号として使用します。

次に、\[ \triangle BEC \]

と\[ \triangle BAD \]

について考えてみましょう。

まず、\(\angle CBE\) と \(\angle ABD\) が等しいことを確認します。

\(\angle CBE\) は、\(\angle CBD\) と \(\angle EBD\) を足した角度として表せます。

\[ \angle CBE=\angle CBD+\angle EBD \]

一方、\(\angle ABD\) は、\(\angle ABE\) と \(\angle EBD\) を足した角度なので、

\[ \angle ABD=\angle ABE+\angle EBD \]

です。

ここで、補助線 \(BE\) は、

\[ \boxed{\angle ABE=\angle CBD} \]

となるように引いていました。

したがって、

\[ \begin{aligned} \angle CBE &=\angle CBD+\angle EBD\\ &=\angle ABE+\angle EBD\\ &=\angle ABD \end{aligned} \]

となります。

よって、

\[ \boxed{\angle CBE=\angle ABD} \]

が成り立ちます。


一方、\(\angle BCA\) と \(\angle BDA\) は、どちらも弧 \(BA\) に対する円周角です。

同じ弧に対する円周角は等しいので、

\[ \angle BCA=\angle BDA \]

が成り立ちます。

以上より、

\[ \boxed{\angle BCE=\angle BDA} \]

となります。

ここまでで、

\[ \angle CBE=\angle ABD \]

\[ \angle BCE=\angle BDA \]

という2組の角がそれぞれ等しいことが分かりました。

したがって、2組の角がそれぞれ等しいので、

\[ \color{red}{\boxed{\triangle BEC\sim\triangle BAD}} \]

となります。


3-2. 相似関係からトレミーの公式を導く

ここまでで、\[ \triangle ABE\sim\triangle DBC \]\[ \triangle BEC\sim\triangle BAD \]

という2組の相似関係を確認しました。

それでは、この2組の相似を利用して、トレミーの公式\[ AC\cdot BD=AB\cdot CD+AD\cdot BC \]

を導いていきましょう。

まず、\[ \color{red}{\triangle ABE\sim\triangle DBC} \]

に着目します。

おろち
おろち

図中の一本線・二本線は、相似な三角形の対応する辺を分かりやすく示すための印です。

通常、図形の問題では同じ印が付いた辺の長さが等しいことを表しますが、今回の図では辺の長さが等しいことを意味しないので注意してください。

対応する辺の比は等しいので、\[ \frac{AE}{CD} = \frac{AB}{BD} \]

となります。

両辺を整理すると、\[ AE\cdot BD = AB\cdot CD \]

となります。

したがって、\[ \boxed{ AE\cdot BD = AB\cdot CD } \]

という関係が得られます。


次に、\[ \color{red}{\triangle BEC\sim\triangle BAD} \]

に着目します。

相似な三角形の対応する辺の比は等しいので、\[ \frac{EC}{AD} = \frac{BC}{BD} \]

となります。

両辺を整理すると、\[ EC\cdot BD = AD\cdot BC \]

です。

したがって、\[ \boxed{ EC\cdot BD = AD\cdot BC } \]

という関係が得られます。


ここまでで、\[ AE\cdot BD = AB\cdot CD \]\[ EC\cdot BD = AD\cdot BC \]

という2つの式を導くことができました。

この2つの式を足してみましょう。\[ AE\cdot BD+EC\cdot BD = AB\cdot CD+AD\cdot BC \]

左辺では \(BD\) が共通しているので、\(BD\) でくくると、\[ (AE+EC)BD = AB\cdot CD+AD\cdot BC \]

となります。

ここで、点 \(E\) は線分 \(AC\) 上にあるため、\[ AE+EC=AC \]

です。

したがって、\[ AC\cdot BD = AB\cdot CD+AD\cdot BC \]

となります。

よって、\[ \color{red}{\boxed{ AC\cdot BD = AB\cdot CD+AD\cdot BC }} \]

が成り立つことが証明できました。

これが、トレミーの定理です。


4. トレミーの定理を使った例題

トレミーの定理は、円に内接する四角形の辺や対角線の長さを求める際に役立ちます。

ここでは、実際に数値を使いながら、トレミーの定理の使い方を確認してみましょう。

4-1. 例題:長方形の対角線を求める

例題1

縦の長さが \(3\)、横の長さが \(4\) の長方形 \(ABCD\) があります。

この長方形の対角線 \(AC\) の長さを、トレミーの定理を使って求めてみましょう。

長方形は、4つの頂点が同じ円周上にあるため、トレミーの定理を利用できます。

トレミーの定理より、

\[ AC\cdot BD=AB\cdot CD+AD\cdot BC \]

が成り立ちます。

長方形では、向かい合う辺の長さが等しいので、

\[ AB=CD=3 \]

\[ AD=BC=4 \]

です。

また、長方形の2本の対角線の長さは等しいため、

\[ AC=BD \]

が成り立ちます。

ここで、対角線の長さを \(x\) とおくと、

\[ AC=BD=x \]

となります。

これらをトレミーの定理に代入すると、

\[ x\cdot x=3\cdot3+4\cdot4 \]

\[ x^2=9+16 \]

\[ x^2=25 \]

となります。

対角線の長さは正の数なので、

\[ \boxed{x=5} \]

です。

したがって、長方形の対角線の長さは \(5\) と求められました。

このように、トレミーの定理を使うことで、三平方の定理を直接使わずに長方形の対角線の長さを求めることができます。


4-2. 例題:円に内接する四角形の対角線を求める

例題2

円に内接する四角形 \(ABCD\) があり、4辺と対角線 \(AC\) の長さが次のように与えられているとします。

\[ AB=3,\quad BC=4,\quad CD=4,\quad DA=3 \]

\[ AC=5 \]

このとき、もう一方の対角線 \(BD\) の長さを求めましょう。

トレミーの定理より、

\[ AC\cdot BD=AB\cdot CD+AD\cdot BC \]

が成り立ちます。

与えられた数値を代入すると、

\[ 5\cdot BD=3\cdot4+3\cdot4 \]

\[ 5BD=12+12 \]

\[ 5BD=24 \]

となります。

両辺を \(5\) で割ると、

\[ \boxed{BD=\frac{24}{5}} \]

です。

したがって、求める対角線の長さは \(\dfrac{24}{5}\) となります。

例題2で考えた四角形は、本当に円に内接できるの?

今回、

\[ AB=3,\quad BC=4,\quad AC=5 \]

なので、

\[ AB^2+BC^2=3^2+4^2=25=AC^2 \]

となり、三角形 \(ABC\) は \(\angle ABC=90^\circ\) の直角三角形です。

同様に、

\[ AD^2+DC^2=3^2+4^2=25=AC^2 \]

なので、三角形 \(ADC\) も \(\angle ADC=90^\circ\) の直角三角形になります。

点Bと点Dを線分ACの反対側に配置すれば、

\[ \angle ABC+\angle ADC=180^\circ \]

となるため、四角形 \(ABCD\) は円に内接します。

したがって、今回の条件を満たす四角形は実際に存在し、トレミーの定理を適用できます。


5. トレミーの定理に関するよくある疑問

5-1. トレミーの定理はどんな四角形でも使える?

トレミーの定理が等式として成立するのは、基本的に円に内接する四角形です。

一般の凸四角形(4つの内角がすべて180°未満であるような四角形)では、

\[ AC\cdot BD\leq AB\cdot CD+AD\cdot BC \]

という不等式が成り立ちます。

これは「トレミーの不等式」と呼ばれます。

そして、凸四角形について等号が成立するのは、その四角形が円に内接するときです。

そのため、トレミーの定理を使う前には、四角形が円に内接することを確認する必要があります。


5-2. 四角形が円に内接するかどうかは、どう判断する?

四角形が円に内接するかどうかを判断する代表的な方法として、向かい合う内角の和を調べる方法があります。

例えば、四角形 \(ABCD\) が円に内接するための必要十分条件は、

\[ \angle ABC+\angle ADC=180^\circ \]

です。

したがって、問題文に円が描かれていなくても、向かい合う角の和が \(180^\circ\) であると分かれば、トレミーの定理を利用できます。


5-3. トレミーの定理は覚えた方がいい?

トレミーの定理は、円に内接する四角形の辺や対角線の長さを求める際に便利な定理です。

特に、4辺と一方の対角線の長さが分かっている場合には、もう一方の対角線を簡単に求められることがあります。

ただし、公式を丸暗記するだけでなく、どの辺同士を掛け合わせるのかを理解することが重要です。

トレミーの定理は、

\[ \boxed{AC\cdot BD=AB\cdot CD+AD\cdot BC} \]

という形で表されます。

「対角線の積=向かい合う辺の積の和」と覚えると、公式の構造を思い出しやすくなります。


まとめ

今回は、トレミーの定理の公式とその証明、具体的な使い方について解説しました。

トレミーの定理は、円に内接する四角形 \(ABCD\) において、

\[ \boxed{AC\cdot BD=AB\cdot CD+AD\cdot BC} \]

が成り立つという定理です。

この定理を理解するうえで、特に重要なのは次の2点です。

  • トレミーの定理は、円に内接する四角形に適用できる。
  • 証明では、補助線を引いて相似な三角形を作ることがポイントになる。

トレミーの定理は一見複雑な公式に見えますが、三角形の相似を利用すると、なぜこの等式が成り立つのかを理解できます。

公式を覚えるだけでなく、証明の流れも理解しておくと、さまざまな図形問題に応用しやすくなるでしょう。

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