三角関数

sin10°の値は?|
三倍角とカルダノの公式から求め方を解説

\(\sin10^\circ\) の値はいくつになるのでしょうか?

\(\sin10^\circ\) は、\(\sin30^\circ=\frac12\) や \(\sin45^\circ=\frac{\sqrt2}{2}\) のような簡単な形で値を表すことが難しい角度です。

数値としては、\[ \boxed{\sin10^\circ\approx0.173648} \]

となります。

では、なぜこの値になるのでしょうか?

実は、三倍角の公式を使うと、\(\sin10^\circ\) は\[ 8x^3-6x+1=0 \]

という3次方程式の解として捉えることができます。

さらに、この3次方程式をカルダノの公式で解くと、途中で虚数が現れ、最終的には\[ \sin10^\circ,\qquad \sin50^\circ,\qquad -\sin70^\circ \]

という3つの値が同じ方程式の解として現れます。

本記事では、三倍角の公式から3次方程式を導き、カルダノの公式を使って解くことで、\(\sin10^\circ\) と3次方程式がどのようにつながっているのかを途中式を省略せず解説します。

1. sin10°を求めるために三倍角の公式を使う

\(\sin10^\circ\) を考えるとき、まず注目したいのが、\[ 10^\circ\times3=30^\circ \]

という関係です。

\(\sin30^\circ\) であれば、\[ \sin30^\circ=\frac12 \]

と簡単に値を求めることができます。

そこで利用するのが、次の三倍角の公式です。\[ \boxed{ \sin3\theta = 3\sin\theta-4\sin^3\theta } \]

この公式に\[ \theta=10^\circ \]

を代入すれば、左辺は \(\sin30^\circ\) になります。

つまり、\(\sin10^\circ\) を未知数とする方程式を作ることができるわけです。

三倍角の公式そのものがどのように導かれるのかについては、以下の記事で詳しく解説しています。

三角関数の倍角公式・三倍角公式の導出|
加法定理から証明

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2. sin10°が満たす3次方程式を作る

それでは、三倍角の公式\[ \sin3\theta = 3\sin\theta-4\sin^3\theta \]

に \(\theta=10^\circ\) を代入してみましょう。

すると、\[ \sin30^\circ = 3\sin10^\circ-4\sin^310^\circ \]

となります。

ここで、\[ \sin30^\circ=\frac12 \]

なので、\[ \frac12 = 3\sin10^\circ-4\sin^310^\circ \]

です。

ここで、\[ x=\sin10^\circ \]

とおくと、\[ \frac12=3x-4x^3 \]

となります。

両辺を2倍すると、\[ 1=6x-8x^3 \]

です。

すべて左辺へ移項すると、\[ \boxed{ 8x^3-6x+1=0 } \]

となります。

したがって、\(\sin10^\circ\) は\[ 8x^3-6x+1=0 \]

という3次方程式の解の1つであることが分かりました。

\(\sin10^\circ\) を調べる問題は、三倍角の公式を使うことで「3次方程式を解く問題」に変えることができます。


3. カルダノの公式を使って3次方程式を解く

それでは、\[ 8x^3-6x+1=0 \]

をカルダノの公式を使って解いていきましょう。

おろち
おろち

「カルダノの公式」については以下記事で丁寧に解説しています!

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まず、両辺を8で割ります。\[ x^3-\frac34x+\frac18=0 \]

カルダノの公式では、\[ x^3+3px+2q=0 \]

という形の3次方程式を考えます。

今回の方程式と比較すると、\[ 3p=-\frac34 \]

なので、\[ p=-\frac14 \]

です。

また、\[ 2q=\frac18 \]

なので、\[ q=\frac1{16} \]

となります。

したがって、\[ \boxed{ p=-\frac14,\qquad q=\frac1{16} } \]

です。

カルダノの公式では、\[ x=u+v \]

とおき、\[ u^3=-q+\sqrt{q^2+p^3} \]\[ v^3=-q-\sqrt{q^2+p^3} \]

を考えます。

まず、\[ q^2+p^3 \]

を計算してみましょう。\[ \begin{aligned} q^2+p^3 &= \left(\frac1{16}\right)^2 + \left(-\frac14\right)^3\\ &= \frac1{256}-\frac1{64}\\ &= \frac1{256}-\frac4{256}\\ &= -\frac3{256} \end{aligned} \]

となります。

したがって、\[ \sqrt{q^2+p^3} = \sqrt{-\frac3{256}} = \frac{\sqrt3}{16}i \]

です。

ここで、虚数 \(i\) が登場しました。

\(\sin10^\circ\) は実数なのに、なぜ3次方程式を解いている途中で虚数が現れるのでしょうか?

これは計算ミスではありません。

今回の方程式では、最終的な解はすべて実数になりますが、カルダノの公式による計算の途中では複素数が現れます。


4. 複素数をオイラーの公式で表す

先ほど求めた値から、\[ u^3 = -\frac1{16} + \frac{\sqrt3}{16}i \]\[ v^3 = -\frac1{16} - \frac{\sqrt3}{16}i \]

となります。

それぞれ \(\frac18\) でくくると、\[ u^3 = \frac18 \left( -\frac12+\frac{\sqrt3}{2}i \right) \]\[ v^3 = \frac18 \left( -\frac12-\frac{\sqrt3}{2}i \right) \]

となります。

ここで、\[ -\frac12+\frac{\sqrt3}{2}i = \cos120^\circ+i\sin120^\circ \]

なので、オイラーの公式\[ e^{i\theta} = \cos\theta+i\sin\theta \]

を使うと、\[ -\frac12+\frac{\sqrt3}{2}i = e^{i120^\circ} \]

と表せます。

同様に、\[ -\frac12-\frac{\sqrt3}{2}i = e^{-i120^\circ} \]

です。

したがって、\[ \boxed{ u^3=\frac18e^{i120^\circ}, \qquad v^3=\frac18e^{-i120^\circ} } \]

となります。

オイラーの公式について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

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公式・求め方をわかりやすく解説|
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マクローリン展開とは、関数を \(x=0\) のまわりで、\(x\) のべき乗を使ったべき級数の形に展開する方法です。 例えば、 \begin{eqnarray}\displaystyle \sin ...


5. 複素数の3乗根には3つの値がある

ここで非常に重要なポイントがあります。

\(u^3\) から \(u\) を求めるとき、\[ u=\frac12e^{i40^\circ} \]

だけを考えてはいけません。

0ではない複素数には、異なる3つの3乗根が存在します。

実際に、\[ u^3=\frac18e^{i120^\circ} \]

から \(u\) を求めてみましょう。

\(u\) の偏角を \(\theta\) とすると、\[ 3\theta = 120^\circ+360^\circ k \]

と表せます。

したがって、\[ \theta = 40^\circ+120^\circ k \]

です。

ここで \(k=0,1,2\) とすると、\[ 40^\circ,\qquad 160^\circ,\qquad 280^\circ \]

が得られます。

よって、\[ \boxed{ u= \frac12e^{i40^\circ},\quad \frac12e^{i160^\circ},\quad \frac12e^{i280^\circ} } \]

となります。

同様に、\[ v^3=\frac18e^{-i120^\circ} \]

についても、\[ \boxed{ v= \frac12e^{-i40^\circ},\quad \frac12e^{-i160^\circ},\quad \frac12e^{-i280^\circ} } \]

という3つの3乗根が存在します。

ただし、ここで \(u\) と \(v\) を自由に組み合わせてよいわけではありません。

カルダノの公式を導出するとき、\[ uv=-p \]

という条件を課しているからです。

今回は、\[ p=-\frac14 \]

なので、\[ \boxed{ uv=\frac14 } \]

を満たすように \(u\) と \(v\) を組み合わせる必要があります。


6. 3次方程式の3つの解を求める

それでは、\[ uv=\frac14 \]

を満たす \(u,v\) の組を使って、\[ 8x^3-6x+1=0 \]

の3つの解を順番に求めていきましょう。

6-1. 1つ目の解

まず、\[ u=\frac12e^{i40^\circ}, \qquad v=\frac12e^{-i40^\circ} \]

という組を考えます。

このとき、\[ uv = \frac14e^{i40^\circ}e^{-i40^\circ} = \frac14 \]

なので、条件を満たしています。

カルダノの公式では\[ x=u+v \]

なので、\[ x = \frac12e^{i40^\circ} + \frac12e^{-i40^\circ} \]

となります。

ここで、\[ e^{i\theta}+e^{-i\theta} = 2\cos\theta \]

より、\[ x=\cos40^\circ \]

です。

さらに、\[ \cos40^\circ=\sin50^\circ \]

なので、\[ \boxed{ x=\sin50^\circ } \]

となります。


6-2. 2つ目の解

次に、\[ u=\frac12e^{i160^\circ}, \qquad v=\frac12e^{-i160^\circ} \]

という組を考えます。

この場合も、\[ uv=\frac14 \]

を満たしています。

したがって、\[ \begin{aligned} x &= \frac12e^{i160^\circ} + \frac12e^{-i160^\circ}\\ &= \cos160^\circ\\ &= -\cos20^\circ\\ &= -\sin70^\circ \end{aligned} \]

となります。

よって、\[ \boxed{ x=-\sin70^\circ } \]

です。


6-3. 3つ目の解

最後に、\[ u=\frac12e^{i280^\circ}, \qquad v=\frac12e^{-i280^\circ} \]

という組を考えます。

この場合も、\[ uv=\frac14 \]

を満たします。

したがって、\[ \begin{aligned} x &= \frac12e^{i280^\circ} + \frac12e^{-i280^\circ}\\ &= \cos280^\circ\\ &= \cos80^\circ\\ &= \sin10^\circ \end{aligned} \]

となります。

よって、\[ \boxed{ x=\sin10^\circ } \]

です。

以上から、\[ 8x^3-6x+1=0 \]

の3つの解は、\[ \boxed{ x=\sin10^\circ,\quad \sin50^\circ,\quad -\sin70^\circ } \]

となることが分かりました。

つまり、\(\sin10^\circ\) から三倍角の公式を使って作った3次方程式を解くと、\(\sin10^\circ\) だけでなく、\(\sin50^\circ\) と \(-\sin70^\circ\) も解として現れることが分かります。


7. 3つの解を数値でも見てみよう

ここまでカルダノの公式を使って、\[ 8x^3-6x+1=0 \]

の3つの解が、\[ \boxed{ x=\sin10^\circ,\quad \sin50^\circ,\quad -\sin70^\circ } \]

と表せることが分かりました。

最後に、この結果を数値でも確認してみましょう。

三角関数の値を計算する

まず、関数電卓を使ってそれぞれの三角関数の値を計算します。

角度の設定を「度数法(DEG)」にして計算すると、\[ \sin10^\circ\approx0.173648 \]\[ \sin50^\circ\approx0.766044 \]\[ -\sin70^\circ\approx-0.939693 \]

となります。

3次方程式を直接解いてみる

3次方程式を解く機能を搭載した関数電卓であれば、\[ 8x^3-6x+1=0 \]

を直接解くこともできます。

方程式計算機能を搭載した関数電卓の場合は、3次方程式を選択し、\[ a=8,\qquad b=0,\qquad c=-6,\qquad d=1 \]

と入力します。

すると、3つの実数解として、およそ\[ x\approx0.173648 \]\[ x\approx0.766044 \]\[ x\approx-0.939693 \]

が得られます。
 ※解が表示される順番は、使用する関数電卓によって異なる場合があります。

したがって、三角関数として計算した\[ \sin10^\circ\approx0.173648 \]\[ \sin50^\circ\approx0.766044 \]\[ -\sin70^\circ\approx-0.939693 \]

と、3次方程式を直接解いて得られた3つの近似値がそれぞれ一致します。

これにより、第6章で求めた\[ \boxed{ x=\sin10^\circ,\quad \sin50^\circ,\quad -\sin70^\circ } \]

という結果を、数値の面からも確認できます。


まとめ

本記事では、三倍角の公式とカルダノの公式を使って、\(\sin10^\circ\) と3次方程式の関係について解説しました。

まず、三倍角の公式\[ \sin3\theta = 3\sin\theta-4\sin^3\theta \]

に \(\theta=10^\circ\) を代入することで、\[ \boxed{ 8x^3-6x+1=0 } \]

という3次方程式が得られます。

この方程式をカルダノの公式で解いていくと、途中で虚数 \(i\) が現れます。

さらに、複素数の3乗根には3つの値があることに注意し、\[ uv=\frac14 \]

を満たすように \(u\) と \(v\) を組み合わせることで、3つの解を\[ \boxed{ x=\sin10^\circ,\quad \sin50^\circ,\quad -\sin70^\circ } \]

と表すことができます。

このうち、\[ \sin10^\circ \]

の近似値は、\[ \boxed{ \sin10^\circ\approx0.173648 } \]

です。

\(\sin10^\circ\) の値を考えることから始めましたが、その背景をたどっていくと、三倍角の公式・3次方程式・カルダノの公式・複素数・オイラーの公式がつながっていることが分かります。

単に値を覚えるだけでなく、三角関数と3次方程式がどのようにつながっているのかを理解するきっかけになれば幸いです。

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