数と式・方程式

因数定理とは?使い方・因数分解・
証明をわかりやすく解説!

高校数学で多項式の因数分解を学習すると、「因数定理」という定理が登場します。

因数定理は、多項式に特定の式が因数として含まれているかどうかを、数値の代入によって判定できる定理です。

ここで「因数」とは、ある式を掛け算の形で表したときの、それぞれの式のことです。

例えば、

\[ x^2-5x+6=(x-2)(x-3) \]

と因数分解できるので、\(\underline{x-2}\) と \(\underline{x-3}\) は \(x^2-5x+6\) の因数です。

それでは、次のような三次式ではどうでしょうか。

\[ x^3-4x^2+x+6 \]

この式は、一見すると簡単には因数分解できそうにありません。

しかし、因数定理を利用すると、どのような式が因数になるのかを調べることができ、因数分解の手がかりを見つけられます。

実際に、上の三次式は、

\[ x^3-4x^2+x+6=(x-2)(x-3)(x+1) \]

と因数分解できます。

ただし、初めて因数定理を学習すると、

「因数定理はどのように使うのか?」

「なぜ数値を代入するだけで因数がわかるのか?」

と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。

この記事では、因数定理の基本的な使い方を具体例とともに解説した後、剰余の定理との関係や因数定理の証明について説明します。

特に証明では、式の変形理由を省略せず、初めて学習する方にも理解しやすいように解説します。

1. 因数定理とは?

1.1 因数定理の公式

因数定理とは、多項式 \(f(x)\) が \(x-a\) を因数にもつかどうかを判定する定理です。

具体的には、次の関係が成り立ちます。

多項式 \(f(x)\) について、

\[ \boxed{f(a)=0\iff x-a\text{ が }f(x)\text{ の因数}} \]

が成り立つ。

つまり、\(x=a\) を代入した結果が0になれば、\(f(x)\) は \(x-a\) を因数にもつということです。

例えば、

\[ f(x)=x^2-5x+6 \]

について考えます。

\(x=2\) を代入すると、

\[ \begin{aligned} f(2)&=2^2-5\times2+6\\ &=4-10+6\\ &=0 \end{aligned} \]

となります。

したがって、因数定理より、\(f(x)\) は \(x-2\) を因数にもつことがわかります。

実際に因数分解すると、

\[ x^2-5x+6=(x-2)(x-3) \]

となり、確かに \(x-2\) が因数として含まれています。


1.2 因数定理の覚え方

因数定理を覚えるときは、次の対応関係を意識しましょう。

以下の表は、それぞれの値を代入した結果が0になった場合に、どの式が因数になるかを示しています。

代入する値判定できる因数
\(x=1\)\(x-1\)
\(x=2\)\(x-2\)
\(x=3\)\(x-3\)
\(x=-1\)\(x+1\)
\(x=-2\)\(x+2\)

ポイントは、代入する値と因数の符号が反対になることです。

例えば、\(x=-2\) を代入して0になった場合、因数は \(x-2\) ではなく \(x+2\) になります。

これは、因数を \(x-a\) と表したとき、\(a=-2\) なら

\[ x-a=x-(-2)=x+2 \]

となるためです。


2. 因数定理の使い方

ここからは、因数定理を実際にどのように使うのか、具体例を使って説明します。

2.1 因数をもつか判定する

次の問題を考えます。

例題1

多項式

\[ f(x)=2x^3-3x^2-11x+6 \]

が \(x-3\) を因数にもつか判定せよ。

解答・解説

因数定理より、\(x-3\) を因数にもつかどうかは、\(x=3\) を代入すれば判定できます。

実際に計算すると、

\[ \begin{aligned} f(3)&=2\times3^3-3\times3^2-11\times3+6\\ &=54-27-33+6\\ &=0 \end{aligned} \]

となります。

したがって、因数定理より、

\[ \boxed{x-3\text{ を因数にもつ}} \]

とわかります。

一方、同じ多項式が \(x-2\) を因数にもつか調べると、

\[ \begin{aligned} f(2)&=2\times2^3-3\times2^2-11\times2+6\\ &=16-12-22+6\\ &=-12 \end{aligned} \]

となり、0にはなりません。

したがって、\(x-2\) は因数ではありません。

このように、因数定理を使えば、実際に因数分解しなくても、特定の式が因数であるかどうかを判定できます。


2.2 因数定理を使って因数分解する

次は、因数定理を使って四次式を因数分解してみましょう。

例題2

次の式を因数分解せよ。

\[ x^4-2x^3-7x^2+8x+12 \]

解答・解説

まず、

\[ f(x)=x^4-2x^3-7x^2+8x+12 \]

とおきます。

因数定理を使うには、\(f(a)=0\) となる値 \(a\) を探す必要があります。

ここで、整数係数の多項式について整数の根を探す場合、定数項の約数を候補として調べることができます。

今回の多項式の定数項は12なので、その約数である

\[ \pm1,\ \pm2,\ \pm3,\ \pm4,\ \pm6,\ \pm12 \]

を候補として調べます。

それでは、なぜ定数項の約数が候補になるのでしょうか?

その理由を、簡単に説明します。

多項式

\[ f(x)=x^4-2x^3-7x^2+8x+12 \]

について考えます。

ここで、\(f(x)=0\) を満たす \(x\) の値を「根」といいます。

例えば、\(x=2\) を代入して \(f(2)=0\) となれば、2はこの多項式の根です。

それでは、整数 \(a\) がこの多項式の根であると仮定して、\(a\) が定数項12の約数になることを示しましょう。

仮定より、

\[ f(a)=0 \]

なので、

\[ a^4-2a^3-7a^2+8a+12=0 \]

が成り立ちます。

定数項12を右辺に移項し、\(a\) でくくると、

\[ \begin{aligned} 12&=-a^4+2a^3+7a^2-8a\\ &=a(-a^3+2a^2+7a-8) \end{aligned} \]

となります。

ここで、\(a\) は整数なので、

\[ -a^3+2a^2+7a-8 \]

も整数です。

つまり、12が整数 \(a\) と別の整数の積で表されているため、\(a\) は12の約数でなければなりません。

したがって、整数の根を探す場合は、定数項12の約数を候補として調べればよいことがわかります。

なお、定数項の約数は、あくまで整数の根の候補です。

候補となる値を代入しても、必ず0になるとは限りません。

また、分数や無理数の根が存在する場合もあるため、定数項の約数を調べるだけですべての根が見つかるわけではありません。

それでは、実際に候補となる値を代入して調べてみましょう。

まず、\(x=1\) を代入すると、

\[ \begin{aligned} f(1)&=1^4-2\times1^3-7\times1^2+8\times1+12\\ &=1-2-7+8+12\\ &=12 \end{aligned} \]

となり、0にはなりません。

次に、\(x=2\) を代入すると、

\[ \begin{aligned} f(2)&=2^4-2\times2^3-7\times2^2+8\times2+12\\ &=16-16-28+16+12\\ &=0 \end{aligned} \]

となります。

したがって、因数定理より、\(x-2\) が因数であることがわかります。

ここで、\(f(x)\) を \(x-2\) で割ると、

\[ f(x)=(x-2)(x^3-7x-6) \]

となります。

次に、残った三次式

\[ g(x)=x^3-7x-6 \]

について、再び因数定理を使います。

\(x=-1\) を代入すると、

\[ \begin{aligned} g(-1)&=(-1)^3-7(-1)-6\\ &=-1+7-6\\ &=0 \end{aligned} \]

となります。

したがって、\(x+1\) が因数であることがわかります。

\(g(x)\) を \(x+1\) で割ると、

\[ g(x)=(x+1)(x^2-x-6) \]

となります。

さらに、

\[ x^2-x-6=(x-3)(x+2) \]

と因数分解できるので、

\[ \begin{aligned} f(x)&=(x-2)(x+1)(x^2-x-6)\\ &=(x-2)(x+1)(x-3)(x+2) \end{aligned} \]

となります。

よって、

\[ \boxed{x^4-2x^3-7x^2+8x+12=(x-2)(x+1)(x-3)(x+2)} \]

と因数分解できます。

このように、四次式でも因数定理を繰り返し利用することで、次数を下げながら因数分解できる場合があります。

なお、今回は整数の根が見つかる例でしたが、すべての多項式で整数の根が見つかるとは限りません。

また、因数を見つけた後の多項式の割り算には、「組立除法」という計算方法を利用することもできます。


3. 因数定理と剰余の定理の関係

因数定理は、「剰余の定理」と深い関係があります。

剰余の定理とは、多項式 \(f(x)\) を \(x-a\) で割った余りが、\(f(a)\) に等しくなるという定理です。

つまり、

\[ \boxed{r=f(a)} \]

が成り立ちます。

ここで、\(r\) は多項式 \(f(x)\) を \(x-a\) で割った余りを表します。

それでは、実際に剰余の定理を使って余りを求めてみましょう。

まず、

\[ f(x)=x^2-5x+6 \]

を \(x-1\) で割った余りを考えます。

剰余の定理より、\(x=1\) を代入すれば余りを求められるので、

\[ \begin{aligned} r&=f(1)\\ &=1^2-5\times1+6\\ &=1-5+6\\ &=2 \end{aligned} \]

となります。

したがって、\(f(x)\) を \(x-1\) で割った余りは2です。

実際に多項式の割り算を行うと、

\[ x^2-5x+6=(x-1)(x-4)+2 \]

となり、確かに余りが2であることを確認できます。

おろち
おろち

多項式を \(n\) 次式で割ったとき、余りは0、または \((n-1)\) 次以下の多項式になります。

例えば、一次式で割った場合、余りは定数(0を含む)になります。

そのため、剰余の定理では、\(x-a\) で割った余りを定数 \(r\) として表すことができます。

このように、剰余の定理を使えば、実際に多項式の割り算を行わなくても、余りを求めることができます。

次に、同じ多項式

\[ f(x)=x^2-5x+6 \]

を \(x-2\) で割った余りを考えます。

剰余の定理より、

\[ \begin{aligned} r&=f(2)\\ &=2^2-5\times2+6\\ &=4-10+6\\ &=0 \end{aligned} \]

となります。

今回は余りが0になりました。

つまり、\(f(x)\) は \(x-2\) で割り切れるということです。

実際に因数分解すると、

\[ x^2-5x+6=(x-2)(x-3) \]

となり、\(x-2\) が因数として含まれていることがわかります。

ここで、2つの例を比較してみましょう。

割る式代入する値余り因数かどうか
\(x-1\)\(x=1\)\(2\)因数ではない
\(x-2\)\(x=2\)\(0\)因数である

このように、多項式を \(x-a\) で割った余りが0になる場合、\(x-a\) はその多項式の因数になります。

つまり、

\[ f(a)=0\iff x-a\text{ が因数} \]

という因数定理は、剰余の定理において余りが0になる場合を考えたものなのです。


4. 因数定理の証明

ここからは、因数定理がなぜ成り立つのかを証明します。

因数定理は、

\[ f(a)=0\iff x-a\text{ が因数} \]

という関係を表しています。

この関係を証明するには、次の2つを示す必要があります。

  1. \(x-a\) が因数なら \(f(a)=0\)
  2. \(f(a)=0\) なら \(x-a\) が因数

それぞれ順番に証明していきましょう。

4.1 \(x-a\) が因数なら \(f(a)=0\)

まず、\(f(x)\) が \(x-a\) を因数にもつ(\(x-a\) で割り切れる)と仮定します。

このとき、ある多項式 \(Q(x)\) を使って、

\[ f(x)=(x-a)Q(x) \]

と表すことができます。

ここで、両辺に \(x=a\) を代入すると、

\[ \begin{aligned} f(a)&=(a-a)Q(a)\\ &=0\times Q(a)\\ &=0 \end{aligned} \]

となります。

したがって、

\[ \boxed{x-a\text{ が因数}\implies f(a)=0} \]

が証明できました。


4.2 \(f(a)=0\) なら \(x-a\) が因数

次に、逆向きの関係を証明します。

まず、

\[ f(a)=0 \]

と仮定します。

多項式 \(f(x)\) を \(x-a\) で割ると、商を \(Q(x)\)、余りを \(r\) として、

\[ f(x)=(x-a)Q(x)+r \]

と表すことができます。

ここで、余り \(r\) が定数であることに注意しましょう。

これは、割る式 \(x-a\) が一次式なので、余りの次数はそれより低くなるためです。

次に、両辺に \(x=a\) を代入すると、

\[ \begin{aligned} f(a)&=(a-a)Q(a)+r\\ &=0\times Q(a)+r\\ &=r \end{aligned} \]

となります。

ここで、仮定より、

\[ f(a)=0 \]

なので、

\[ r=0 \]

です。

したがって、

\[ f(x)=(x-a)Q(x) \]

となります。

これは、\(f(x)\) が \(x-a\) で割り切れることを意味します。

よって、

\[ \boxed{f(a)=0\implies x-a\text{ が因数}} \]

が証明できました。

以上より、両方向の関係が成り立つので、

\[ \boxed{f(a)=0\iff x-a\text{ が因数}} \]

が証明できました。


5. 因数定理の練習問題

ここまで学習した内容を確認するため、実際に問題を解いてみましょう。

5.1 基本問題

問題1

次の多項式が \(x-3\) を因数にもつか判定せよ。

\[ f(x)=x^3-3x^2-4x+12 \]

解答・解説

因数定理より、\(x=3\) を代入します。

\[ \begin{aligned} f(3)&=3^3-3\times3^2-4\times3+12\\ &=27-27-12+12\\ &=0 \end{aligned} \]

したがって、

\[ \boxed{x-3\text{ を因数にもつ}} \]

となります。


5.2 応用問題

問題2

次の式を因数分解せよ。

\[ x^3-2x^2-5x+6 \]

解答・解説

まず、

\[ f(x)=x^3-2x^2-5x+6 \]

とおきます。

定数項6の約数である

\[ \pm1,\ \pm2,\ \pm3,\ \pm6 \]

を候補として調べます。

\(x=1\) を代入すると、

\[ \begin{aligned} f(1)&=1^3-2\times1^2-5\times1+6\\ &=1-2-5+6\\ &=0 \end{aligned} \]

となります。

したがって、因数定理より、\(x-1\) が因数であることがわかります。

実際に \(x-1\) で割ると、

\[ x^3-2x^2-5x+6=(x-1)(x^2-x-6) \]

となります。

さらに、

\[ x^2-x-6=(x-3)(x+2) \]

と因数分解できるので、

\[ \boxed{x^3-2x^2-5x+6=(x-1)(x-3)(x+2)} \]

となります。


6. まとめ

この記事では、因数定理の使い方や証明について解説しました。

因数定理とは、多項式 \(f(x)\) が \(x-a\) を因数にもつかどうかを、\(f(a)\) の値によって判定できる定理です。

特に重要なのは、

\[ \boxed{f(a)=0\iff x-a\text{ が因数}} \]

という関係です。

因数定理は三次式だけでなく、四次式や五次式など、さまざまな次数の多項式に利用できます。

因数定理を利用することで、多項式の因数を見つけることができ、高次式の因数分解や高次方程式を解く際の手がかりになります。

また、因数定理は剰余の定理と密接に関係しており、多項式を \(x-a\) で割った余りが0になる場合に対応しています。

公式を暗記するだけでなく、なぜ成り立つのかを理解しておくと、さまざまな問題に応用しやすくなるでしょう。

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