高校数学Ⅱで多項式の割り算を学習すると、「剰余の定理」という定理が登場します。
剰余の定理とは、多項式を一次式で割ったときの余りを、実際に割り算することなく求められる定理です。
例えば、多項式
\[ P(x)=x^3-2x^2+3x+1 \]
を \(x-2\) で割ったときの余りは、\(x=2\) を代入するだけで求められます。
実際に計算すると、
\[ \begin{aligned} P(2)&=2^3-2\cdot2^2+3\cdot2+1\\ &=8-8+6+1\\ &=7 \end{aligned} \]
となるため、余りは \(7\) です。
しかし、
「なぜ数値を代入するだけで余りが求められるのか?」
「剰余の定理と因数定理は何が違うのか?」
と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。
この記事では、剰余の定理の基本的な使い方を具体例とともに解説した後、多項式の割り算を利用して公式を証明します。
さらに、練習問題や因数定理との関係についても説明します。
1. 剰余の定理とは?
1.1 剰余の定理の公式
剰余の定理は、次のように表されます。
剰余の定理
多項式 \(P(x)\) を \(x-a\) で割ったときの余りを \(R\) とすると、
\[ \boxed{R=P(a)} \]
が成り立つ。
つまり、多項式を \(x-a\) で割ったときの余りは、\(x=a\) を代入するだけで求められるということです。
例えば、
\[ P(x)=x^2+3x+5 \]
を \(x-2\) で割ったときの余りは、
\[ \begin{aligned} P(2)&=2^2+3\cdot2+5\\ &=4+6+5\\ &=15 \end{aligned} \]
より、\(15\) となります。
通常、多項式の割り算では筆算などを利用しますが、剰余の定理を使えば、割り算をする必要がありません。
1.2 剰余の定理を使うときのポイント
剰余の定理を使うときは、割る式を \(x-a\) の形で考えることが重要です。
例えば、
- \(x-3\) で割る場合は \(x=3\) を代入する
- \(x+2\) で割る場合は \(x=-2\) を代入する
- \(2x-1\) で割る場合は \(x=\frac12\) を代入する
というように、割る式が \(0\) になる \(x\) の値を代入します。
これは、剰余の定理の証明で説明するように、割る式が \(0\) になる値を代入することで、商を含む部分が消え、余りだけが残るためです。
特に、\(x+2\) で割る場合は \(x=2\) ではなく、\(x=-2\) を代入する点に注意しましょう。
2. 剰余の定理の使い方
ここでは、剰余の定理を使って余りを求める方法を、3つの例題で説明します。
2.1 \(x-a\) で割る場合
解答
剰余の定理より、余りは \(P(2)\) です。
したがって、
\[ \begin{aligned} P(2)&=2^3-3\cdot2^2+2\cdot2+4\\ &=8-12+4+4\\ &=4 \end{aligned} \]
よって、求める余りは
\[ \boxed{4} \]
です。
2.2 \(x+a\) で割る場合
解答
割る式 \(x+2\) は、
\[ x+2=x-(-2) \]
と表せます。
したがって、剰余の定理より、余りは \(P(-2)\) です。
\[ \begin{aligned} P(-2)&=(-2)^3+2(-2)^2-5(-2)+3\\ &=-8+8+10+3\\ &=13 \end{aligned} \]
よって、求める余りは
\[ \boxed{13} \]
です。
このように、\(x+a\) で割る場合は \(x=-a\) を代入します。
2.3 \(ax+b\) で割る場合
解答
まず、割る式が \(0\) になる \(x\) の値を求めます。
\[ \begin{aligned} 2x-1&=0\\ 2x&=1\\ x&=\frac12 \end{aligned} \]
したがって、余りは \(P\left(\frac12\right)\) です。
\[ \begin{aligned} P\left(\frac12\right) &=2\left(\frac12\right)^3-3\left(\frac12\right)^2+\frac12+5\\ &=\frac14-\frac34+\frac12+5\\ &=5 \end{aligned} \]
よって、求める余りは
\[ \boxed{5} \]
です。
一般に、\(a\neq0\) のとき、多項式 \(P(x)\) を \(ax+b\) で割った余りは、
\[ \boxed{P\left(-\frac ba\right)} \]
で求められます。
3. 剰余の定理の証明
ここでは、剰余の定理がなぜ成り立つのかを証明します。
3.1 多項式の割り算の基本
まず、整数の割り算を考えてみましょう。
例えば、\(17\) を \(5\) で割ると、
\[ 17=5\cdot3+2 \]
と表せます。
これは、
\[ 割られる数=割る数\times商+余り \]
という関係が成り立つことを表しています。
多項式の割り算でも、同様の関係が成り立ちます。
多項式の割り算では、余りが \(0\) でない場合、余りの次数は割る式の次数よりも小さくなります。
例えば、二次式を一次式で割る場合を考えてみましょう。
\[ x^2+3x+5=(x-2)(x+5)+15 \]
この式では、割る式 \(x-2\) は一次式で、余りの \(15\) は定数です。
なぜなら、余りに \(x\) の項が残っている場合は、さらに一次式で割り算を続けられるからです。
そのため、一次式で割ったときの余りには \(x\) の項が残らず、定数になります。
したがって、多項式 \(P(x)\) を一次式 \(x-a\) で割った場合は、
\[ P(x)=(x-a)Q(x)+R \]
と表せます。
ここで、\(R\) は定数です。
3.2 剰余の定理の証明
多項式 \(P(x)\) を \(x-a\) で割ったときの商を \(Q(x)\)、余りを \(R\) とします。
多項式の割り算の関係より、
\[ P(x)=(x-a)Q(x)+R \]
が成り立ちます。
ここで、両辺に \(x=a\) を代入すると、
\[ \begin{aligned} P(a)&=(a-a)Q(a)+R\\ &=0\cdot Q(a)+R\\ &=R \end{aligned} \]
となります。
したがって、
\[ \boxed{R=P(a)} \]
が成り立ちます。
以上で、剰余の定理が証明されました。
4. 剰余の定理の練習問題
ここでは、剰余の定理を使った問題を3問紹介します。
4.1 基本問題
解答
剰余の定理より、余りは \(P(3)\) です。
\[ \begin{aligned} P(3)&=3^3+2\cdot3^2-4\cdot3+1\\ &=27+18-12+1\\ &=34 \end{aligned} \]
よって、求める余りは
\[ \boxed{34} \]
です。
4.2 余りから係数を求める問題
解答
剰余の定理より、
\[ P(2)=5 \]
が成り立ちます。
したがって、
\[ \begin{aligned} 2^3+a\cdot2^2+2\cdot2+1&=5\\ 8+4a+4+1&=5\\ 4a+13&=5\\ 4a&=-8\\ a&=-2 \end{aligned} \]
よって、
\[ \boxed{a=-2} \]
です。
4.3 二次式で割った余りを求める問題
解答
今回は、割る式が二次式なので、余りは一次以下の式になります。
そこで、余りを
\[ R(x)=ax+b \]
とおきます。
また、
\[ x^2-1=(x-1)(x+1) \]
と因数分解できるため、
\[ P(x)=(x^2-1)Q(x)+ax+b \]
に \(x=1\)、\(x=-1\) を代入して考えます。
まず、\(x=1\) を代入すると、
\[ \begin{aligned} P(1)&=a+b\\ 1+2+3+4&=a+b\\ a+b&=10 \end{aligned} \]
となります。
次に、\(x=-1\) を代入すると、
\[ \begin{aligned} P(-1)&=-a+b\\ -1+2-3+4&=-a+b\\ -a+b&=2 \end{aligned} \]
となります。
よって、
\[ \begin{cases} a+b=10\\ -a+b=2 \end{cases} \]
を解くと、
\[ \begin{aligned} 2b&=12\\ b&=6 \end{aligned} \]
となります。
さらに、
\[ \begin{aligned} a+6&=10\\ a&=4 \end{aligned} \]
となるので、求める余りは
\[ \boxed{4x+6} \]
です。
なお、この問題では剰余の定理そのものを二次式に直接適用しているわけではありません。割る式を因数分解し、余りの式に \(x=1\)、\(x=-1\) を代入することで求めています。
5. 剰余の定理と因数定理の関係
剰余の定理とよく似た定理に、「因数定理」があります。
剰余の定理は、多項式を一次式で割ったときの余りを求める定理です。
一方、因数定理は、多項式が一次式で割り切れるかどうかを判定する定理です。
5.1 剰余の定理と因数定理の違い
多項式 \(P(x)\) を \(x-a\) で割ったときの余りは、剰余の定理より、
\[ R=P(a) \]
です。
ここで、余りが \(0\) の場合を考えます。
\[ R=0 \]
ならば、
\[ P(a)=0 \]
となります。
つまり、多項式 \(P(x)\) が \(x-a\) で割り切れる条件は、
\[ \boxed{P(a)=0} \]
です。
これが因数定理です。
両者の違いをまとめると、次のようになります。
| 定理 | 公式 | 用途 |
|---|---|---|
| 剰余の定理 | \(R=P(a)\) | 余りを求める |
| 因数定理 | \(P(a)=0\) | 割り切れるかを判定する |
このように、因数定理は剰余の定理において余りが \(0\) になる場合を考えたものです。
5.2 因数定理との関連
例えば、
\[ P(x)=x^2-5x+6 \]
について考えます。
\(x-2\) で割ったときの余りは、
\[ \begin{aligned} P(2)&=2^2-5\cdot2+6\\ &=4-10+6\\ &=0 \end{aligned} \]
です。
したがって、\(P(x)\) は \(x-2\) で割り切れます。
実際に因数分解すると、
\[ x^2-5x+6=(x-2)(x-3) \]
となり、\(x-2\) が因数に含まれていることが確認できます。
因数定理の使い方や証明については、以下の記事で詳しく解説しています。
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まとめ
この記事では、剰余の定理の使い方や証明、練習問題について解説しました。
剰余の定理は、多項式を一次式で割ったときの余りを、数値の代入だけで求められる定理です。
特に重要なのは、次の公式です。
\[ \boxed{R=P(a)} \]
また、\(ax+b\) で割ったときの余りは、\(a\neq0\) のとき、
\[ \boxed{R=P\left(-\frac ba\right)} \]
で求められます。
剰余の定理を理解すると、多項式の割り算だけでなく、因数定理や高次方程式の問題にも応用できます。
公式を覚えるだけでなく、なぜ数値を代入することで余りが求められるのかも理解しておきましょう。