数学基礎

【微分でなぜ接線の傾きがわかる?】
微分の意味や使い方を解説!

数学が嫌いな人でも、『微分』という言葉自体は知っている人がほとんどだと思います。

高校数学でこれらについて学びますが、「微分って何?」とか「微分って結局何に使うの?」と疑問に思っている方の対し、本記事で応えていけたらと思います。

■まず結論!”微分”をする意味!

微分をする意味。色々あるかとは思いますが、私は基本的には『グラフの傾きを知ることで、関数の形を知りたいから』に集約されるかなと思います。

例えば、以下のような関数 \(f(x)\) があったとします。

\begin{eqnarray}
\displaystyle f(x) = \frac{1}{3}x^3+2x^2+3x \tag{1}
\end{eqnarray}

この関数のグラフを描け、というような問題が学校で出された時、まず皆さんは以下のように微分するかと思います。

\begin{eqnarray}
\displaystyle f'(x) &=& x^2+4x+3 \\
\displaystyle &=& (x+1)(x+3) \tag{2}
\end{eqnarray}

そして、 \(f'(x)\) が \(0\) となる時は \(x=-1, -3\) の時だからここで極大値、極小値を持つので、\(f(x)\) のグラフは以下のような形になることがわかるわけですよね。

利用サイト様:<https://www.geogebra.org/graphing?lang=ja>

上のグラフを見ると、確かに \(x=-1, -3\) の時に極大、極小となっていそうなことがわかりますね。

ではここで、逆に考えて見ましょう。

なぜ \(f'(x)=0\) となる \(x\) を求めることで、極大、極小となる \(x\) を求められるのでしょうか

それはズバリ『\(f'(x)=0\) を満たす \(x\) において、\(f(x)\)の関数グラフに引いた接線の傾きが 0 となるから』に他なりません。

「何を言ってるかよくわからないよ!」という方は、試しに上で描写したグラフの \(x=-1, -3\) の極大、極小の部分で接線を引いてみて下さい。

その接線は、\(x\) 軸に平行になる感じで引けるはずです。それは『傾きが \(0\) の直線』ですよね。

要するに、傾きが \(0\) となる \(x\) の値を知りたいから \(f'(x)=0\) を求めたわけです。これが例えば 「\(f(x)\) のグラフで傾きが \(3\) となる時の \(x\) の値を求めたい!」というような場合には、\(f'(x)=3\) を満たす \(x\) の値を求めればいいわけです。

ここまでの話をまとめると、『\(f'(x)\) は \(f(x)\) の関数グラフの傾きを求めるための道具』ということです。

以降では、微分が実際に傾きを求めるための道具であることの具体的な説明をしていきます。



■”傾き”と”導関数”の関係性!

簡易な絵で恐縮ですが、以下のような関数 \(f(x)\) のグラフについて考えて見ます。

上記画像において、例えば以下のような問題であれば、中学生でも解ける問題になります。

【問1】
点A、点Bの2点を通る直線の傾き \(L\) を求めよ。

2点を通る直線の傾きは、\(\displaystyle \frac{yの増加量}{xの増加量}\) で求めることができるので、

\begin{eqnarray}
\displaystyle L = \frac{f(b)-f(a)}{b-a} \tag{3}\\
\end{eqnarray}

で求めることができ、点A、点Bの具体的な座標がわかれば一瞬で解くことができます。

では次に、以下の問題を考えて見ましょう。

【問2】
点Aを通る \(f(x)\) の接線の傾き \(l\) を求めよ。

これはどのようにして求めることができるでしょうか?

考え方としましては、実は結構シンプルです。

点Bを限りなく点Aに近づけて、(3)式を利用することを考えればよいのです。

そうすれば、点Aと点Bは同一点上に存在することになり、その2点を通る直線の傾きは点Aを通る接線の傾きに等しくなります

以上より、傾き \(l\) は以下のように極限記号を用いて

\begin{eqnarray}
\displaystyle l = \lim_{b \to a} \frac{f(b)-f(a)}{b-a} \tag{4}\\
\end{eqnarray}

と表現することができるわけです。

おろち
おろち

上の説明を聞いて、「ん?でもこの考え方だと、点Aと点Bが一致しちゃうから、(4)式で右辺の分数って分母分子0になっちゃって、訳わからなくならない??」と思う方もいるかと思います。

ポイントは、『点Bを限りなく点Aに近づけるタイミング』です。

具体的な話は、本記事の下の方で【補足】として説明します。

(4)式において、突然ですが以下のように \(h\) を定義してみます。

\begin{eqnarray}
\displaystyle h := b-a
\end{eqnarray}

おろち
おろち

ちなみに「\(:=\)」は左辺を右辺の式で定義することを意味する記号です。

そして \(b\) を消去する形で(4)式を変形すると、\(f(b)=f(a+h)\) であることと、\(b \to a\) の時 \(h \to 0\) となることに注意して

\begin{eqnarray}
\displaystyle l = \lim_{h \to 0} \frac{f(a+h)-f(a)}{h} \tag{5}\\
\end{eqnarray}

と表現できます。これが【問2】の答えです。

左辺は一般的に \(l\) ではなく \(f'(a)\) で表現され、

\begin{eqnarray}
\displaystyle f'(a) = \lim_{h \to 0} \frac{f(a+h)-f(a)}{h} \tag{6}\\
\end{eqnarray}

と表現するのが一般的です。

また、(6)式は点Aに限った場合の接線を求める式になってしまってますよね。

点Aに限らず、\(f(x)\) 上のどの点でも接線が求められるように(6)式を一般化させるには、 \(a \to x\) に変換すればよいので、

\begin{eqnarray}
\displaystyle f'(x) = \lim_{h \to 0} \frac{f(x+h)-f(x)}{h} \tag{7}\\
\end{eqnarray}

となります。この(7)式こそが \(f(x)\) の導関数の定義式となります。

皆さんが普段、関数を微分する際に利用している (\((x^n)'=nx^{n-1}\)) とかの公式は、 全てこの(7)式が大元となっています。

おろち
おろち

その証明についてはこちらの記事で実施していますので、余力がある方は是非お立ち寄りください!



■導関数の定義式を利用して微分してみる!

最後に、導出した(7)式の「導関数の定義式」を利用して、最初に出てきた(1)式

\begin{eqnarray}
\displaystyle f(x) = \frac{1}{3}x^3+2x^2+3x \tag{1}
\end{eqnarray}

を微分してみたいと思います。微分した結果、(2)式と同じになることを確かめることが目的です。

\begin{eqnarray}
\displaystyle f'(x) &=& \lim_{h \to 0} \frac{f(x+h)-f(x)}{h} \\
\displaystyle &=& \lim_{h \to 0} \frac{\left(\frac{1}{3}(x+h)^3+2(x+h)^2+3(x+h)\right)-\left(\frac{1}{3}x^3+2x^2+3x\right)}{h} \\
\displaystyle &=& \lim_{h \to 0} \frac{\left(\frac{1}{3}(x^3+3x^2h+3xh^2+h^3)+2(x^2+2hx+h^2)+3(x+h)\right)-\left(\frac{1}{3}x^3+2x^2+3x\right)}{h} \\
\displaystyle &=& \lim_{h \to 0} \frac{\left(\frac{1}{3}x^3+x^2h+xh^2+\frac{1}{3}h^3+2x^2+4hx+2h^2+3x+3h\right)-\left(\frac{1}{3}x^3+2x^2+3x\right)}{h} \\
\displaystyle &=& \lim_{h \to 0} \frac{x^2h+xh^2+\frac{1}{3}h^3+4hx+2h^2+3h}{h} \\
\displaystyle &=& \lim_{h \to 0} \left(x^2+4x+3+\underset{h \to 0 で消える項}{\underline{xh+\frac{1}{3}h^2+2h}}\right) \\
\displaystyle &=& x^2+4x+3 \\
\end{eqnarray}

となり、無事(2)式と同じ結果になることが確認できました。



■【補足】\(h \to 0\) の極限を取るタイミングに注意

(4)式を導出する時の考え方として、点Bを点Aに限りなく近づけると説明しました。

しかし、これをそのまま考えて、「じゃあ点Bも点Aと同じ位置に移すから、点Bの座標は最終的に \((a, f(a))\) となって、、、」と考えて(4)式にそのまま代入してしまうと、分母も分子も \(0\) となってしまい、変なことになってしまいます。

では、どのタイミングが適切なのでしょうか。答えは、『(7)式を利用して、分母の \(h\) が消去されたタイミング』です。

先ほど(1)式を(7)式の定義式を利用して微分しましたよね。その際、分母の \(h\) が綺麗に消去されているはずです。

そして最後に \(h \to 0\) として余計な項を消去し、導関数 \(f'(x)\) を求めることができます。

おろち
おろち

(4)式のように具体的な座標成分で考えたら手詰まりになってしまうものが、(7)式のように変数 \(x\) を用いて考えることにより、一見不可能な課題も解決してしまうところが凄いですよね。



■まとめ:微分の意味を明確にしつつ、ガンガン微分しよう!

私が学生の時もそうでしたが、特に意味もわからず、「この数式を微分せよ」とか「この関数のグラフを描け」とかの問題が出た時に機械的に微分していました。

しかし大人になって改めて復習した時、微分というツールの凄さに気づきました。

本記事を通じて少しでも微分に対する知見が深まった方が多くいればとても嬉しく思います。

最後まで本記事をお読みいただき、ありがとうございました!

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