36°の三角比の値はどのように求められるのでしょうか。
\begin{eqnarray}
\displaystyle \sin36^\circ、\cos36^\circ、\tan36^\circ
\end{eqnarray}
この値は高校数学や大学受験でも登場することがありますが、その導出方法を詳しく学ぶ機会はあまり多くありません。
実は、36°-72°-72°の二等辺三角形を利用すると、36°の三角比を厳密に求めることができます。
この記事では、36°-72°-72°の二等辺三角形を用いて、sin36°・cos36°・tan36°の値を図形的に導出する過程をわかりやすく解説します。
本記事で導出する sin36°、cos36°、tan36° の値
\begin{eqnarray}
\displaystyle \sin36^{\circ}&=&\frac{\sqrt{10-2\sqrt{5}}}{4} \\
\displaystyle \cos36^{\circ}&=&\frac{1+\sqrt{5}}{4} \\
\displaystyle \tan36^{\circ}&=&\sqrt{5-2\sqrt{5}}
\end{eqnarray}
■36°-72°-72° の二等辺三角形を描き、補助線を引く
実はこの二等辺三角形を描くことができれば、36°の三角比を求められたも同然です。
以下の左図のように、まずは 36°-72°-72° の二等辺三角形ABCを描きます。
そして、長い辺の長さを \(1\) 、短い辺の長さを \(x\) とおきます。

そして、∠ABCを2等分するように、点Bから辺ACに直線を引き、その直線と辺ACとの交点をDとします。(※上の左図を参照)
すると、三角形BCDは二等辺三角形となるため、BDの長さは \(x\) です。
同様に、三角形DABも二等辺三角形となるため、ADの長さは \(x\) です。
これより、CDの長さは \(1-x\) であることがわかります。
改めて、CD\(=1-x\) を求めるまでの流れを整理すると、
- ∠ABCの2等分線を引き、辺ACとの交点をDとする
- ∠CBDは36°であるため、∠BDCは72°であることがわかる
- ∠BDC=∠BCDより、三角形BCDは二等辺三角形であることがわかる
- 三角形BCDは二等辺三角形であるため、BC=BD=\(x\) であることがわかる
- 一方、∠DBA=∠DABより三角形DBAも二等辺三角形であることがわかる
- 三角形BCDは二等辺三角形であるため、BD=AD=\(x\) であることがわかる
となります。
■相似関係を用いて、\(x\) の値を求める
先ほどの図を改めて以下に描きます。

上図において、三角形ABCと三角形BCDは相似関係にあります。
なぜなら、三角形の角度がどちらも 36°-72°-72° であり、相似条件を満たしているからです。
これより、AB:BC=BC:CD の関係式が成立することを利用すると、
\begin{eqnarray}
\displaystyle AB:BC&=&BC:CD \\
\displaystyle 1:x&=&x:1-x \\
\displaystyle 1-x&=&x^2 \\
\displaystyle x^2+x-1&=&0 \tag{1}
\end{eqnarray}
となり、(1)式のような2次方程式が導出できます。
(1)を解の公式を用いて解くと、
\begin{eqnarray}
\displaystyle x=\frac{-1 \pm \sqrt{5}}{2} \tag{2}
\end{eqnarray}
となり2つの解が出てきますが、\(x\) の値は \(0 \lt x \lt 1\) を満たす必要があるため、\(x\) の値は
\begin{eqnarray}
\displaystyle x=\frac{-1+\sqrt{5}}{2} \tag{3}
\end{eqnarray}
と、ただ1つに定まります。
■ 点Bから線分CDに対し垂線を引く
次に、点Bから線分CDに対し垂線を引き、線分CDと交わる点をEと定義します。(左下図)

この垂線を引いたことにより、1つの角が36°の直角三角形ABEが完成します。(右上図)
ありがたいことに、直角三角形ABEは2辺の長さ(辺ABと辺AEの長さ)も判明しているため、後は三角関数の定義からsin, cos, tanの値を求めることができます。
■ \(\sin36^{\circ}\) 、\(\cos36^{\circ}\)、\(\tan36^{\circ}\) の値を求める
それでは作成した直角三角形ABEを利用して、\(\sin36^{\circ}\) 、\(\cos36^{\circ}\)、\(\tan36^{\circ}\) の値を求めてみましょう。
まずは簡単に求められそうな、\(\cos36^{\circ}\) から求めていきます。
① \(\cos36^{\circ}\) の導出
直角三角形ABEより、
\begin{eqnarray}
\displaystyle \cos36^\circ=\frac{AE}{AB}=\frac{1+x}{2} \tag{4}
\end{eqnarray}
となる。
なぜ \(\cos36^{\circ}\) の値が上のように求められるのかわからない方は、三角関数の基本の学習が足りていないかもしれません。
以下記事で三角関数の基礎についてまとめているので、よろしければ覗いてみてください!
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\(x\) の値は(3)で求めた値を代入すればよいので、最終的な \(\cos36^{\circ}\) の値は
\begin{eqnarray}
\displaystyle \cos36^\circ&=&\frac{1+x}{2} \\
\displaystyle &=&\frac{1}{2}+\frac{1}{2} \times \frac{-1+\sqrt{5}}{2} \\
\displaystyle &=&\frac{1}{2}+\frac{-1+\sqrt{5}}{4} \\
\displaystyle &=&\frac{1+\sqrt{5}}{4} \tag{5} \\
\end{eqnarray}
と求まる。
② \(\sin36^{\circ}\) の導出
こちらは先ほど求めた \(\cos36^\circ\) の値を利用して、三角関数の基本公式の1つ
\begin{eqnarray}
\displaystyle \cos^2 \theta+\sin^2 \theta = 1 \tag{6}
\end{eqnarray}
を利用して求めることにします。
もしくは直角三角形ABEの辺BEの長さを三平方の定理から求めて、
\begin{eqnarray}
\displaystyle \sin36^\circ=\frac{BE}{AB}
\end{eqnarray}
から求めてもOKです。(実際やってることは変わりません)
(6)の公式を利用して \(\sin36^\circ\) の値を求めると、
\begin{eqnarray}
\displaystyle \sin36^\circ&=&\sqrt{1-\cos^2 36^\circ} \\
\displaystyle &=&\sqrt{1-\left(\frac{1+\sqrt{5}}{4}\right)^2} \\
\displaystyle &=&\sqrt{1-\frac{6+2\sqrt{5}}{16}} \\
\displaystyle &=&\frac{\sqrt{10-2\sqrt{5}}}{4} \\
\end{eqnarray}
と求まる。
③ \(\tan36^{\circ}\) の導出
先ほど求めた \(\sin36^{\circ}\) と \(\cos36^{\circ}\) を、三角関数の基本公式(\(\displaystyle \tan\theta=\frac{\sin\theta}{\cos\theta}\))に当てはめて求めていくと、
\begin{eqnarray}
\displaystyle \tan36^\circ&=&\frac{\sin36^\circ}{\cos36^\circ} \\
\displaystyle &=&\frac{\frac{\sqrt{10-2\sqrt{5}}}{4}}{\frac{\sqrt{5}+1}{4}}・\color{red}{\frac{4}{4}} \\
\displaystyle &=&\frac{\sqrt{10-2\sqrt{5}}}{\sqrt{5}+1}・\color{red}{\frac{\sqrt{5}-1}{\sqrt{5}-1}} \\
\displaystyle &=&\frac{\sqrt{10-2\sqrt{5}}\sqrt{(\sqrt{5}-1)^2}}{5-1} \\
\displaystyle &=&\frac{\sqrt{10-2\sqrt{5}}\sqrt{6-2\sqrt{5}}}{4} \\
\displaystyle &=&\frac{\sqrt{(10-2\sqrt{5})(6-2\sqrt{5})}}{4} \\
\displaystyle &=&\frac{\sqrt{80-32\sqrt{5}}}{4} \\
\displaystyle &=&\frac{4\sqrt{5-2\sqrt{5}}}{4} \\
\displaystyle &=& \sqrt{5-2\sqrt{5}} \\
\end{eqnarray}
となり、これが答えとなる。
■sin36°、cos36°、tan36° の値の正当性の確認
1つの角が36°の直角三角形を作図することで、sin36°、cos36°、tan36° の値は以下の通り求めることができました。
先ほど導出した sin36°、cos36°、tan36° の値
\begin{eqnarray}
\displaystyle \sin36^{\circ}&=&\frac{\sqrt{10-2\sqrt{5}}}{4} \\
\displaystyle \cos36^{\circ}&=&\frac{\sqrt{5}+1}{4} \\
\displaystyle \tan36^{\circ}&=&\sqrt{5-2\sqrt{5}}
\end{eqnarray}
ただ、これらの値って、本当に合っているのでしょうか?
それを確認するため、求めた sin36°、cos36°、tan36° の値を小数で求め直し、その値を公式の三角関数表と比較して、求めた値の正当性を確認しましょう。
sin36°の値(小数形式)
\begin{eqnarray}
\displaystyle \sin36^{\circ}&=&\frac{\sqrt{10-2\sqrt{5}}}{4} \\
&≒& \frac{\sqrt{10-2 \cdot 2.236067}}{4} \\
&=& \frac{\sqrt{10-4.472134}}{4} \\
&=& \frac{\sqrt{5.527866}}{4} \\
&≒& \frac{2.351141}{4} \\
&≒& 0.587785 \tag{4}
\end{eqnarray}
cos36°の値(小数形式)
\begin{eqnarray}
\displaystyle \cos36^{\circ}&=&\frac{\sqrt{5}+1}{4} \\
&≒& \frac{2.236067+1}{4} \\
&=& \frac{3.236067}{4} \\
&≒& 0.809016 \tag{5}
\end{eqnarray}
tan36°の値(小数形式)
\begin{eqnarray}
\displaystyle \tan36^{\circ}&=&\sqrt{5-2\sqrt{5}} \\
&≒& \sqrt{5-2 \cdot 2.236067} \\
&=& \sqrt{5-4.472134} \\
&=& \sqrt{0.527866} \\
&≒& 0.726543 \tag{6}
\end{eqnarray}
国立大学が公表している三角関数表の値との比較
千葉大学理学部数学・情報物理学科の公式HPに載っている三角関数表を参考に、上で求めた(4)式~(6)式の値が一致しているか確認します。
上記サイト内では、sin36°、cos36°、tan36° の値はそれぞれ以下の通り記載されています。
千葉大学が公表している sin36°、cos36°、tan36° の値
\begin{eqnarray}
\displaystyle \sin 36^\circ &=& 0.5878 \\
\displaystyle \cos 36^\circ &=& 0.8090 \\
\displaystyle \tan 36^\circ &=& 0.7265
\end{eqnarray}
(4)式~(6)式の値と比較してみると、ほぼほぼ一致した結果となっていることがわかります。
■まとめ
この記事では、36°-72°-72°の二等辺三角形の相似関係を利用して、36°の三角比の値を導出しました。
36°の三角比は黄金比と深い関係を持っており、五角形や正五角星の性質にもつながる非常に美しい結果です。
ぜひ導出過程も含めて理解してみてください。
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