高校数学で多項式の計算を学習すると、「多項式の割り算」が登場します。
多項式の割り算とは、文字を含む式を別の式で割り、商と余りを求める計算のことです。
例えば、多項式
\[ x^3+2x^2+3x+5 \]
を \(x+1\) で割ると、商は \(x^2+x+2\)、余りは \(3\) になります。
実際に、
\[ x^3+2x^2+3x+5=(x+1)(x^2+x+2)+3 \]
という関係が成り立ちます。
しかし、
「多項式の割り算はどのような手順で計算するのか?」
「筆算では、どの項から計算すればよいのか?」
「割り切れずに余りが出る場合はどうすればよいのか?」
「なぜ筆算によって商と余りが求められるのか?」
と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。
この記事では、多項式の割り算の基本的なやり方を、筆算の手順に沿ってわかりやすく解説します。
また、余りが出る場合や途中の項がない場合の計算方法、組立除法との違いについても説明します。
1. 多項式の割り算とは?
多項式の割り算とは、多項式を別の多項式で割り、商と余りを求める計算のことです。
例えば、整数の割り算では、
\[ 17\div5=3\text{ あまり }2 \]
となります。
これは、
\[ 17=5\times3+2 \]
という関係が成り立つことを意味しています。
実は、多項式の割り算でも同じような関係が成り立ちます。
1.1 多項式の割り算の基本公式
多項式 \(A(x)\) を、\(0\) でない多項式 \(B(x)\) で割ったときの商を \(Q(x)\)、余りを \(R(x)\) とすると、次の関係が成り立ちます。
\[ \boxed{A(x)=B(x)Q(x)+R(x)} \]
ここで、それぞれの多項式は次の意味を表します。
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| \(A(x)\) | 割られる式 |
| \(B(x)\) | 割る式 |
| \(Q(x)\) | 商 |
| \(R(x)\) | 余り |
ただし、余り \(R(x)\) は \(0\) であるか、割る式 \(B(x)\) よりも次数が低い多項式になります。
例えば、多項式
\[ x^3+2x^2+3x+5 \]
を \(x+1\) で割る場合を考えます。
このとき、
\[ \begin{aligned} x^3+2x^2+3x+5 &=(x+1)(x^2+x+2)+3 \end{aligned} \]
と表せます。
実際に右辺を展開すると、
\[ \begin{aligned} &(x+1)(x^2+x+2)+3\\ &=x^3+x^2+2x+x^2+x+2+3\\ &=x^3+2x^2+3x+5 \end{aligned} \]
となり、元の多項式と一致します。
したがって、
\[ \boxed{\text{商 }x^2+x+2,\quad\text{余り }3} \]
となります。
このように、多項式の割り算では、商と余りを求めることで、元の多項式を「割る式×商+余り」の形に表すことができます。
1.2 多項式の割り算と整式の割り算の違い
高校数学では、「多項式の割り算」のほかに「整式の割り算」という言葉も登場します。
整式とは、文字と数の掛け算や足し算、引き算によって表される式のことで、単項式や多項式が含まれます。
例えば、
\[ 3x^2,\quad x^2+2x+1,\quad x^3-4x+2 \]
はいずれも整式です。
高校数学では、「整式の割り算」と「多項式の割り算」は、基本的に同じ計算を指すことが多いため、この記事では「多項式の割り算」という表現に統一して説明します。
2. 多項式の割り算のやり方【筆算の基本手順】
それでは、実際に多項式の割り算を計算してみましょう。
次の問題を考えます。
2.1 手順①:次数の高い順に並べる
まず、割られる式と割る式を、\(x\) の次数が高い順に並べます。
今回の式は、
\[ x^3+2x^2+3x+5 \]
および
\[ x+1 \]
なので、すでに次数の高い順に並んでいます。

2.2 手順②:最高次の項を割る
次に、割られる式の最高次の項 \(x^3\) を、割る式の最高次の項 \(x\) で割ります。
\[ x^3\div x=x^2 \]
したがって、商の最初の項は \(x^2\) です。
この \(x^2\) を筆算の商の部分に書きます。

2.3 手順③:割る式を掛けて引く
続いて、先ほど求めた \(x^2\) に、割る式 \(x+1\) を掛けます。
\[ (x+1)\times x^2=x^3+x^2 \]
これを元の式から引きます。
\[ \begin{aligned} &(x^3+2x^2+3x+5)-(x^3+x^2)\\ &=x^3+2x^2+3x+5-x^3-x^2\\ &=x^2+3x+5 \end{aligned} \]
これにより、最高次の項 \(x^3\) が消えました。

2.4 手順④:同じ計算を繰り返す
次に、残った式
\[ x^2+3x+5 \]
について、同じ操作を繰り返します。
まず、最高次の項を割ります。
\[ x^2\div x=x \]
したがって、商に \(x\) を追加します。

続いて、
\[ (x+1)\times x=x^2+x \]
を計算し、残った式から引きます。
\[ \begin{aligned} &(x^2+3x+5)-(x^2+x)\\ &=2x+5 \end{aligned} \]

さらに、残った式
\[ 2x+5 \]
について、同じ操作を繰り返します。
\[ 2x\div x=2 \]
したがって、商に \(2\) を追加します。

続いて、
\[ (x+1)\times2=2x+2 \]
を計算し、引き算します。
\[ \begin{aligned} &(2x+5)-(2x+2)\\ &=3 \end{aligned} \]
ここで、余り \(3\) は定数であり、割る式 \(x+1\) よりも次数が低いため、計算を終了します。

以上より、
\[ \boxed{\text{商 }x^2+x+2,\quad\text{余り }3} \]
となります。
2.5 多項式の割り算の筆算方法まとめ
ここまで説明した多項式の割り算の筆算手順をまとめると、次のようになります。
- 多項式を次数の高い順に並べる
- 最高次の項どうしを割り、商の項を求める
- 求めた商の項に割る式を掛ける
- 引き算によって最高次の項を消す
- 余りが \(0\) になるか、割る式よりも次数が低くなるまで繰り返す
この手順を覚えておけば、次数の高い多項式でも同じ方法で計算できます。
3. 多項式の割り算の例題
ここからは、さまざまなパターンの多項式の割り算を解いてみましょう。
3.1 余りが0になる場合
解答
まず、最高次の項を割ります。
\[ x^3\div x=x^2 \]
次に、
\[ (x-2)\times x^2=x^3-2x^2 \]
を元の式から引きます。
\[ \begin{aligned} &(x^3-4x^2+x+6)-(x^3-2x^2)\\ &=-2x^2+x+6 \end{aligned} \]

続いて、
\[ -2x^2\div x=-2x \]
なので、
\[ (x-2)\times(-2x)=-2x^2+4x \]
を引きます。
\[ \begin{aligned} &(-2x^2+x+6)-(-2x^2+4x)\\ &=-3x+6 \end{aligned} \]

さらに、
\[ -3x\div x=-3 \]
なので、
\[ (x-2)\times(-3)=-3x+6 \]
を引きます。
\[ \begin{aligned} &(-3x+6)-(-3x+6)\\ &=0 \end{aligned} \]

したがって、
\[ \boxed{\text{商 }x^2-2x-3,\quad\text{余り }0} \]
となります。
このように、余りが \(0\) になる場合は、割られる式が割る式で割り切れることを意味しています。
3.2 途中の項がない場合
解答
この問題では、割られる式に \(x^2\) の項がありません。
このような場合は、係数が \(0\) の項を補って考えると計算しやすくなります。
\[ x^3+2x+3=x^3+0x^2+2x+3 \]

まず、最高次の項を割ります。
\[ x^3\div x=x^2 \]
次に、
\[ (x+1)\times x^2=x^3+x^2 \]
を元の式から引きます。
\[ \begin{aligned} &(x^3+0x^2+2x+3)-(x^3+x^2)\\ &=-x^2+2x+3 \end{aligned} \]

続いて、
\[ -x^2\div x=-x \]
なので、
\[ (x+1)\times(-x)=-x^2-x \]
を引きます。
\[ \begin{aligned} &(-x^2+2x+3)-(-x^2-x)\\ &=3x+3 \end{aligned} \]

さらに、
\[ 3x\div x=3 \]
なので、
\[ (x+1)\times3=3x+3 \]
を引きます。
\[ \begin{aligned} &(3x+3)-(3x+3)\\ &=0 \end{aligned} \]

したがって、
\[ \boxed{\text{商 }x^2-x+3,\quad\text{余り }0} \]
となります。
このように、途中の項がない場合は、係数が \(0\) の項を補ってから筆算することがポイントです。
3.3 二次式で割る場合
解答
まず、最高次の項を割ります。
\[ x^3\div x^2=x \]
次に、
\[ (x^2+1)\times x=x^3+x \]
を元の式から引きます。
\[ \begin{aligned} &(x^3+2x^2+3x+4)-(x^3+x)\\ &=2x^2+2x+4 \end{aligned} \]

続いて、
\[ 2x^2\div x^2=2 \]
なので、
\[ (x^2+1)\times2=2x^2+2 \]
を引きます。
\[ \begin{aligned} &(2x^2+2x+4)-(2x^2+2)\\ &=2x+2 \end{aligned} \]
ここで、余り \(2x+2\) は1次式であり、割る式 \(x^2+1\) は2次式です。
余りの次数が割る式の次数より低くなったため、計算を終了します。

したがって、
\[ \boxed{\text{商 }x+2,\quad\text{余り }2x+2} \]
となります。
このように、多項式の割り算では、割る式が一次式でなくても同じ方法で計算できます。
4. なぜ多項式の割り算は筆算で計算できるのか?
ここまで、多項式の割り算の手順を説明してきました。
しかし、なぜ最高次の項どうしを割り、掛け算と引き算を繰り返すことで、商と余りを求められるのでしょうか?
その理由は、割られる式から、割る式の倍数を順番に取り除いているからです。
第2章で扱った、
\[ x^3+2x^2+3x+5 \]
を \(x+1\) で割る場合を考えます。
最初に、
\[ x^3\div x=x^2 \]
と計算しました。
これは、割る式 \(x+1\) に何を掛ければ、最高次の項 \(x^3\) を作れるかを考えていることになります。
実際に、
\[ (x+1)\times x^2=x^3+x^2 \]
となるので、これを元の式から引くと、
\[ \begin{aligned} x^3+2x^2+3x+5 &=(x+1)x^2+(x^2+3x+5) \end{aligned} \]
と表せます。
次に、残った \(x^2+3x+5\) の最高次の項 \(x^2\) を消すために、
\[ (x+1)\times x=x^2+x \]
を引きます。
すると、
\[ \begin{aligned} x^2+3x+5 &=(x+1)x+(2x+5) \end{aligned} \]
となります。
さらに、残った \(2x+5\) についても、
\[ (x+1)\times2=2x+2 \]
を引くと、
\[ 2x+5=(x+1)\times2+3 \]
となります。
以上の式をまとめると、
\[ \begin{aligned} x^3+2x^2+3x+5 &=(x+1)x^2+(x^2+3x+5)\\ &=(x+1)x^2+(x+1)x+(2x+5)\\ &=(x+1)x^2+(x+1)x+(x+1)2+3\\ &=(x+1)(x^2+x+2)+3 \end{aligned} \]
つまり、筆算では、
\[ \boxed{\text{割られる式}=\text{割る式}\times\text{商}+\text{余り}} \]
という関係を保ちながら、商を少しずつ求めています。
また、各段階で最高次の項を消すため、残った式の次数は次第に低くなっていきます。
この操作を繰り返し、残った式の次数が割る式よりも低くなれば、それが余りになります。
5. 多項式の割り算でよくある間違い
多項式の割り算では、特に次の2点に注意しましょう。
5.1 途中の項を省略してしまう
例えば、
\[ x^3+2x+3 \]
のように \(x^2\) の項がない場合は、
\[ x^3+0x^2+2x+3 \]
と考えましょう。
特に筆算では、同じ次数の項を縦にそろえる必要があるため、途中の項を省略すると計算ミスにつながることがあります。
5.2 余りが0になるまで計算しようとする
多項式の割り算では、必ずしも余りが \(0\) になるとは限りません。
例えば、二次式で割る場合は、余りが一次式になることもあります。
重要なのは、余りの次数が割る式の次数よりも低くなったら計算を終了するということです。
6. 多項式の割り算と組立除法の違い
多項式の割り算には、通常の筆算のほかに「組立除法」という計算方法があります。
組立除法とは、係数だけを使って商と余りを求める方法です。
例えば、
\[ x^3-4x^2+x+6 \]
を \(x-2\) で割る場合、通常の筆算でも組立除法でも、
\[ \boxed{\text{商 }x^2-2x-3,\quad\text{余り }0} \]
という結果が得られます。
両者の主な違いは、次のとおりです。
| 比較項目 | 通常の筆算 | 組立除法 |
|---|---|---|
| 計算方法 | 多項式をそのまま使う | 係数を使う |
| 計算量 | 比較的多い | 比較的少ない |
| 割る式 | 一次式・二次式など | 基本的に \(x-a\) の形 |
| 特徴 | 計算の仕組みを理解しやすい | 計算を短縮できる |
組立除法は便利ですが、まずは通常の筆算の仕組みを理解しておくことが大切です。
組立除法の具体的な計算方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
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組立除法とは?やり方・計算方法を
例題付きでわかりやすく解説2026/11/8
高校数学で多項式の割り算を学習すると、「組立除法」という計算方法が登場します。 組立除法とは、多項式を一次式で割るときに、係数だけを使って商と余りを求める計算方法です。 例えば、 \[ P(x)=x^ ...
まとめ
この記事では、多項式の割り算の基本的なやり方について説明しました。
多項式の割り算では、
\[ \boxed{A(x)=B(x)Q(x)+R(x)} \]
という関係が成り立ちます。
筆算の基本的な手順は、次のとおりです。
- 多項式を次数の高い順に並べる
- 最高次の項どうしを割り、商の項を求める
- 求めた商の項に割る式を掛ける
- 引き算によって最高次の項を消す
- 余りの次数が割る式よりも低くなるまで繰り返す
特に重要なのは、最高次の項を順番に消していくという考え方です。
また、途中の項がない場合は係数が \(0\) の項を補うこと、引き算では符号に注意することも忘れないようにしましょう。
多項式の割り算は、因数定理や剰余の定理、高次方程式を学習する際にも役立つ重要な計算方法です。
基本的な筆算を理解したら、組立除法についても学習してみましょう。