高校数学で多項式の割り算を学習すると、「組立除法」という計算方法が登場します。
組立除法とは、多項式を一次式で割るときに、係数だけを使って商と余りを求める計算方法です。
例えば、
\[ P(x)=x^3-4x^2+x+6 \]
を \(x-2\) で割る場合、通常の筆算を使わなくても、組立除法によって簡単に計算できます。
しかし、
「組立除法はどのような手順で計算するのか?」
「通常の筆算とは何が違うのか?」
「係数が0の場合はどうすればよいのか?」
「なぜ組立除法で商と余りが求められるのか?」
と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。
この記事では、組立除法と通常の筆算との違いを説明した後、組立除法の基本的なやり方や応用例題、組立除法が成り立つ理由について解説します。
初めて組立除法を学ぶ方でも理解できるように、計算手順を一つずつ丁寧に説明していきます。
1. 組立除法とは?
組立除法とは、多項式の割り算を、係数だけを使って効率よく計算する方法です。
高校数学で一般的に学ぶ組立除法は、多項式を
\[ x-a \]
の形の一次式で割るときに使用します。
例えば、
\[ x-2,\quad x+3,\quad x-\frac12 \]
などです。
通常の筆算では、文字を含む式を使って計算しますが、組立除法では係数を並べ、掛け算と足し算を繰り返すことで商と余りを求めます。
1.1 通常の筆算で計算する場合
例えば、次の多項式を \(x-2\) で割る場合を考えます。
\[ P(x)=x^3-4x^2+x+6 \]
通常の筆算では、「割る・掛ける・引く」という操作を繰り返します。

まず、最高次の項を割ります。
\[ x^3\div x=x^2 \]
次に、求めた \(x^2\) に割る式 \(x-2\) を掛けます。
\[ (x-2)x^2=x^3-2x^2 \]
これをもとの多項式から引くと、
\[ \begin{aligned} &(x^3-4x^2+x+6)-(x^3-2x^2)\\ &=-2x^2+x+6 \end{aligned} \]
となります。

続いて、
\[ -2x^2\div x=-2x \]
なので、
\[ (x-2)(-2x)=-2x^2+4x \]
を引きます。
\[ \begin{aligned} &(-2x^2+x+6)-(-2x^2+4x)\\ &=-3x+6 \end{aligned} \]

最後に、
\[ -3x\div x=-3 \]
なので、
\[ (x-2)(-3)=-3x+6 \]
を引くと、
\[ (-3x+6)-(-3x+6)=0 \]
となります。

したがって、
\[ \boxed{\begin{aligned} \text{商}&=x^2-2x-3\\ \text{余り}&=0 \end{aligned}} \]
です。
1.2 組立除法で計算する場合
一方、組立除法では、多項式の係数だけを使って計算します。
今回の場合、係数は、
\[ 1,\quad -4,\quad 1,\quad 6 \]
です。
また、割る式が \(x-2\) なので、左側に \(2\) を書きます。
これらの数値を使って組立除法を行うと、次のようになります。

この計算によって、
\[ 1,\quad -2,\quad -3,\quad 0 \]
という数値が得られます。
最初の3つが商の係数で、最後の \(0\) が余りを表します。
したがって、
\[ \boxed{\begin{aligned} \text{商}&=x^2-2x-3\\ \text{余り}&=0 \end{aligned}} \]
となります。
つまり、通常の筆算と組立除法では、計算方法は異なりますが、得られる商と余りは同じです。
1.3 通常の筆算と組立除法の違い
通常の筆算と組立除法の違いをまとめると、次のようになります。
| 比較項目 | 通常の筆算 | 組立除法 |
|---|---|---|
| 計算に使うもの | 文字を含む多項式 | 主に係数 |
| 計算方法 | 割り算・掛け算・引き算 | 掛け算・足し算 |
| 計算量 | 比較的多い | 比較的少ない |
| 割る式 | 一次式・二次式など | 基本的に \(x-a\) |
| 商と余り | 両方求められる | 両方求められる |
組立除法は、通常の筆算で行う計算を、係数だけを使って簡略化したものと考えるとわかりやすいでしょう。
なお、組立除法の考え方を拡張すれば、二次式や三次式で割る場合にも利用できます。
ただし、二次式以上で割る組立除法は計算手順が複雑になるため、初めて学ぶ段階では無理に覚える必要はありません。
二次式以上で割る場合は、通常の筆算を使う方がわかりやすいことも多いでしょう。
この記事では、高校数学で一般的に使用する、一次式で割る組立除法について説明します。
2. 組立除法のやり方
それでは、実際に組立除法を使ってみましょう。
次の多項式を \(x-2\) で割ったときの商と余りを求めます。
\[ P(x)=x^3-4x^2+x+6 \]
2.1 係数を並べる
まず、多項式の係数を次数の高い順に並べます。
\[ 1,\quad -4,\quad 1,\quad 6 \]
また、割る式が \(x-2\) なので、左側に \(2\) を書きます。

ここで注意したいのは、割る式 \(x-2\) に対して、左側には \(2\) を書くという点です。
例えば、割る式が \(x+3\) の場合には、
\[ x+3=x-(-3) \]
なので、左側には \(-3\) を書きます。
2.2 最初の係数を下ろす
次に、最初の係数 \(1\) をそのまま下の段に書きます。

2.3 掛け算と足し算を繰り返す
次に、下ろした \(1\) に左側の \(2\) を掛けます。
\[ 1\times2=2 \]
この \(2\) を次の係数 \(-4\) の下に書き、足し算します。
\[ -4+2=-2 \]
続いて、\(-2\) に左側の \(2\) を掛けます。
\[ -2\times2=-4 \]
これを次の係数 \(1\) に足すと、
\[ 1+(-4)=-3 \]
となります。
さらに、
\[ -3\times2=-6 \]
を計算し、最後の係数 \(6\) に足すと、
\[ 6+(-6)=0 \]
となります。

2.4 商と余りを読み取る
最後の段に並んだ数値は、
\[ 1,\quad -2,\quad -3,\quad 0 \]
です。
このうち、最後の \(0\) が余りを表します。
それ以外の
\[ 1,\quad -2,\quad -3 \]
は、商の係数です。
もとの多項式は三次式なので、一次式で割った商は二次式になります。
したがって、商は
\[ x^2-2x-3 \]
です。
以上より、
\[ \boxed{\begin{aligned} \text{商}&=x^2-2x-3\\ \text{余り}&=0 \end{aligned}} \]
となります。
3. 組立除法の例題
ここからは、組立除法でよく出題されるパターンを、具体的な例題を使って解説します。
3.1 余りが0にならない場合
解答
まず、多項式の係数を並べます。
\[ 1,\quad -2,\quad 3,\quad 1 \]
割る式が \(x-2\) なので、左側には \(2\) を書きます。
組立除法を行うと、以下の通りとなります。

したがって、最後の段に並ぶ数値は、
\[ 1,\quad 0,\quad 3,\quad 7 \]
です。
最初の3つが商の係数で、最後の \(7\) が余りなので、
\[ \boxed{\begin{aligned} \text{商}&=x^2+3\\ \text{余り}&=7 \end{aligned}} \]
となります。
3.2 欠けた次数の項がある場合
解答
この多項式には、\(x^2\) の項がありません。
そのため、まずは
\[ P(x)=x^3+0x^2+3x-5 \]
と書き直します。
係数は、
\[ 1,\quad 0,\quad 3,\quad -5 \]
です。
また、
\[ x+2=x-(-2) \]
なので、左側には \(-2\) を書きます。
組立除法を行うと、以下の通りとなります。

したがって、最後の段に並ぶ数値は、
\[ 1,\quad -2,\quad 7,\quad -19 \]
です。
以上より、
\[ \boxed{\begin{aligned} \text{商}&=x^2-2x+7\\ \text{余り}&=-19 \end{aligned}} \]
となります。
3.3 \(x\) の係数が1でない一次式で割る場合
解答
まず、割る式を次のように変形します。
\[ 2x-1=2\left(x-\frac12\right) \]
そこで、いったん \(x-\frac12\) で割る場合を考えます。
組立除法では、左側に \(\frac12\) を書きます。
計算すると、以下の通りとなります。

したがって、\(x-\frac12\) で割った場合は、
\[ P(x)=\left(x-\frac12\right)(2x^2-2x+3)-\frac72 \]
です。
ここで、
\[ x-\frac12=\frac12(2x-1) \]
なので、
\[ P(x)=(2x-1)\left(x^2-x+\frac32\right)-\frac72 \]
と変形できます。
したがって、
\[ \boxed{\begin{aligned} \text{商}&=x^2-x+\frac32\\ \text{余り}&=-\frac72 \end{aligned}} \]
となります。
4. なぜ組立除法で計算できるのか?(証明)
ここまでは、組立除法の計算方法について説明しました。
しかし、なぜ係数を使った掛け算と足し算だけで、商と余りを求められるのでしょうか。
ここでは、三次式の場合を例に、組立除法が成り立つ理由を証明します。
4.1 多項式の割り算の基本式
三次式
\[ P(x)=ax^3+bx^2+cx+d \]
を \(x-r\) で割る場合を考えます。ただし、\(a\neq0\) とします。
商を
\[ Q(x)=Ax^2+Bx+C \]
余りを \(R\) とすると、多項式の割り算の性質から、
\[ P(x)=(x-r)Q(x)+R \]
が成り立ちます。
これに商の式を代入すると、
\[ ax^3+bx^2+cx+d=(x-r)(Ax^2+Bx+C)+R \]
となります。
右辺を展開すると、
\[ \begin{aligned} &(x-r)(Ax^2+Bx+C)+R\\ &=Ax^3+(B-rA)x^2\\ &\quad +(C-rB)x-rC+R \end{aligned} \]
です。
4.2 係数を比較する
両辺の係数を比較すると、
\[ \begin{cases} a=A\\ b=B-rA\\ c=C-rB\\ d=R-rC \end{cases} \]
が成り立ちます。
これを、商の係数 \(A,B,C\) と余り \(R\) について整理すると、
\[ \boxed{ \begin{aligned} A&=a\\ B&=b+rA\\ C&=c+rB\\ R&=d+rC \end{aligned} } \]
となります。
この式をよく見ると、組立除法の計算手順と一致していることがわかります。
具体的には、
- 最初の係数 \(a\) をそのまま下ろす。
- \(A\) に \(r\) を掛け、\(b\) に足して \(B\) を求める。
- \(B\) に \(r\) を掛け、\(c\) に足して \(C\) を求める。
- \(C\) に \(r\) を掛け、\(d\) に足して余り \(R\) を求める。
という流れになります。
つまり、組立除法は、多項式の割り算における係数の関係を利用した計算方法なのです。
以上で、組立除法が成り立つ理由が示されました。
5. 組立除法と因数定理・剰余の定理の関係
組立除法は、因数定理や剰余の定理とも深く関係しています。
5.1 剰余の定理との関係
剰余の定理とは、多項式 \(P(x)\) を \(x-a\) で割ったときの余りが、
\[ \boxed{P(a)} \]
になるという定理です。
例えば、
\[ P(x)=x^3-2x^2+3x+1 \]
を \(x-2\) で割ったときの余りは、
\[ \begin{aligned} P(2)&=2^3-2\cdot2^2+3\cdot2+1\\ &=8-8+6+1\\ &=7 \end{aligned} \]
となります。
これは、3.1節で組立除法によって求めた余りと一致しています。
つまり、組立除法と剰余の定理は、どちらも多項式を一次式で割ったときの余りを求めるために利用できます。
ただし、剰余の定理では余りだけを求めるのに対し、組立除法では商と余りの両方を求められるという違いがあります。
剰余の定理については、以下記事で詳しく解説しています。
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5.2 因数定理との関係
因数定理とは、多項式 \(P(x)\) について、
\[ \boxed{P(a)=0\iff x-a\text{ は }P(x)\text{ の因数}} \]
が成り立つという定理です。
例えば、
\[ P(x)=x^3-4x^2+x+6 \]
について、
\[ \begin{aligned} P(2)&=2^3-4\cdot2^2+2+6\\ &=8-16+2+6\\ &=0 \end{aligned} \]
となります。
したがって、因数定理より、\(x-2\) は \(P(x)\) の因数です。
さらに、組立除法を使うと、
\[ P(x)=(x-2)(x^2-2x-3) \]
と求められます。
ここで、
\[ x^2-2x-3=(x-3)(x+1) \]
なので、
\[ \boxed{P(x)=(x-2)(x-3)(x+1)} \]
と因数分解できます。
このように、因数定理で因数を見つけ、組立除法で商を求めることで、高次式を効率よく因数分解できます。
因数定理については、以下記事で詳しく解説しています。
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6. 組立除法でよくある間違い
最後に、組立除法で間違えやすいポイントを整理します。
| よくある間違い | 正しい考え方 |
|---|---|
| \(x+2\) で割るときに \(2\) を書く | \(-2\) を書く |
| 欠けた項を省略する | 係数 \(0\) を補う |
| 最後の数値を商に含める | 最後の数値は余り |
| 商の次数を間違える | 一次式で割ると次数が1つ下がる |
| \(2x-1\) で割るときに商を修正しない | \(x-\frac12\) で割って得た商を \(2\) で割る |
特に、符号の間違いや、欠けた項に \(0\) を補い忘れるミスが起こりやすいので注意しましょう。
まとめ
この記事では、組立除法の基本的なやり方から、通常の筆算との違い、具体的な計算例、組立除法が成り立つ理由まで解説しました。
重要なポイントをまとめると、次のとおりです。
- 組立除法は、多項式を \(x-a\) の形の一次式で割るときに使える計算方法である。
- 通常の筆算と異なり、係数だけを使って計算する。
- 最初の係数を下ろし、掛け算と足し算を繰り返す。
- 最後の数値が余り、それ以外が商の係数になる。
- 欠けた次数の項がある場合は、係数 \(0\) を補う。
- \(x\) の係数が1でない一次式で割る場合は、商の調整が必要になる。
- 組立除法は、因数定理や剰余の定理と組み合わせることで、高次式の因数分解にも活用できる。
組立除法は、計算手順さえ理解すれば、多項式の割り算を効率よく行える便利な方法です。
最初は難しく感じるかもしれませんが、基本的な例題を繰り返し解き、計算の流れを身につけていきましょう。