高校数学Aで円の性質を学習すると、「接弦定理」という定理が登場します。
接弦定理は、円の接線と弦がつくる角が、その弦に対する円周角と等しくなることを表す定理です。
この定理を使うと、円に接線が引かれている図形問題でも、角度を簡単に求められることがあります。
しかし、
「接弦定理はどの角度が等しくなるのか?」
「接弦定理はどのように覚えればよいのか?」
「なぜ接線と弦がつくる角が円周角と等しくなるのか?」
と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。
この記事では、接弦定理の基本的な使い方や覚え方を具体例とともに解説した後、円周角の定理を利用して接弦定理を証明します。
1. 接弦定理とは?
接弦定理とは、円の接線と弦がつくる角が、その弦に対する円周角と等しくなるという定理です。
円周上に3点 \(A\)、\(B\)、\(C\) があり、点 \(A\) における接線上に点 \(T\) をとります。

このとき、点 \(T\) を弦 \(AB\) に対して点 \(C\) と反対側の半平面にとると、次の関係が成り立ちます。
\[ \boxed{\angle TAB=\angle ACB} \]
つまり、接線 \(AT\) と弦 \(AB\) がつくる角は、弦 \(AB\) に対する円周角 \(\angle ACB\) と等しくなります。
ここで重要なのは、接線と弦がつくる角に対して、弦の反対側にある円周角に注目することです。
なお、接線と弦がつくる角には2つの側があるため、どちらの角を考えるかによって、対応する円周角も変わります。
2. 接弦定理の覚え方
接弦定理を覚えるときは、公式を丸暗記するよりも、角度の対応関係を理解することが重要です。
次の手順で考えると、どの角度が等しくなるのかを判断しやすくなります。
- 円の接線と弦を見つける。
- 接線と弦がつくる角に注目する。
- その弦を見込む、反対側の円周角を探す。
例えば、接線 \(AT\) と弦 \(AB\) がつくる角 \(\angle TAB\) に注目した場合、弦 \(AB\) に対する円周角 \(\angle ACB\) を探します。
すると、接弦定理より、
\[ \angle TAB=\angle ACB \]
が成り立ちます。
「接線と弦の角度は、反対側の円周角と等しい」
と覚えておくとよいでしょう。
3. 接弦定理の使い方【例題】
ここでは、接弦定理を使って角度を求める例題を紹介します。
3.1 基本例題:円周角を求める
解答

接弦定理より、接線 \(AT\) と弦 \(AB\) がつくる角は、弦 \(AB\) に対する円周角と等しくなります。
したがって、
\[ \angle ACB=\angle TAB \]
ここで、
\[ \angle TAB=50^\circ \]
なので、
\[ \boxed{\angle ACB=50^\circ} \]
となります。
このように、接弦定理を使うと、接線と弦がつくる角から円周角を求めることができます。
3.2 応用例題:三角形の角度を求める
解答

まず、接弦定理より、
\[ \angle ACB=\angle TAB \]
したがって、
\[ \angle ACB=65^\circ \]
となります。
次に、三角形の内角の和は \(180^\circ\) なので、
\[ \angle BAC+\angle ABC+\angle ACB=180^\circ \]
ここに、
\[ \angle ABC=45^\circ \]
\[ \angle ACB=65^\circ \]
を代入すると、
\[ \angle BAC+45^\circ+65^\circ=180^\circ \]
よって、
\[ \angle BAC=180^\circ-45^\circ-65^\circ \]
\[ \boxed{\angle BAC=70^\circ} \]
となります。
このように、接弦定理と三角形の内角の和を組み合わせることで、複数の角度を求めることもできます。
4. 接弦定理の証明
ここからは、なぜ接弦定理が成り立つのかを証明します。
接弦定理は、円周角の定理と、接線が接点を通る半径に垂直であることを利用して証明できます。
4.1 証明の準備
中心を \(O\) とする円を考えます。
円周上に点 \(A\)、\(B\)、\(C\) をとり、点 \(A\) における接線上に点 \(T\) をとります。
ここでは、\(T\) を直線 \(AB\) に対して \(C\) と反対側にとり、\(\angle TAB\) を \(90^\circ\) 以下の角とします。
このとき、
\[ \angle TAB=\angle ACB \]
を証明します。
まず、点 \(O\) と点 \(A\)、点 \(O\) と点 \(B\) をそれぞれ結びます。

すると、\(OA\) と \(OB\) は同じ円の半径なので、
\[ OA=OB \]
が成り立ちます。
したがって、三角形 \(OAB\) は二等辺三角形です。
4.2 円周角の定理を利用する
\[ \angle OAB=\angle OBA=\alpha \]
とおきます。
三角形 \(OAB\) の内角の和より、
\[ \angle AOB+2\alpha=180^\circ \]
したがって、
\[ \angle AOB=180^\circ-2\alpha \]
となります。
ここで、円周角の定理より、同じ弧に対する円周角は中心角の半分になります。
今回の図では、点 \(C\) を含まない弧 \(AB\) に対する中心角が \(\angle AOB\) なので、
\[ \angle ACB=\frac{1}{2}\angle AOB \]
が成り立ちます。
よって、
\[ \angle ACB=\frac{180^\circ-2\alpha}{2} \]
\[ \angle ACB=90^\circ-\alpha \]
となります。
円周角の定理に関しては以下記事でまとめていますので、不安な方は是非ご覧ください。
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4.3 接線と半径の関係を利用する
次に、接線 \(AT\) と半径 \(OA\) に注目します。
円の接線は、接点を通る半径と垂直なので、
\[ \angle OAT=90^\circ \]
が成り立ちます。
また、
\[ \angle OAB=\alpha \]
なので、
\[ \angle TAB=90^\circ-\alpha \]
となります。
一方、4.2で求めたように、
\[ \angle ACB=90^\circ-\alpha \]
でした。
したがって、
\[ \boxed{\angle TAB=\angle ACB} \]
となり、接弦定理が証明できました。
なお、ここでは接線と弦がつくる角が \(90^\circ\) 以下の場合を証明しました。\(90^\circ\) より大きい場合も、反対側の角が補角の関係にあることを利用すれば証明できます。
4.4 鈍角の場合の証明
ここまでは、接線と弦がつくる角が \(90^\circ\) 以下の場合について証明しました。
それでは、接線と弦がつくる角が \(90^\circ\) より大きい場合も、接弦定理は成り立つのでしょうか?
実は、鈍角の場合も、鋭角の場合の接弦定理と補角の関係を利用して証明できます。
点 \(A\) における接線上で、点 \(T\) と反対側に点 \(T'\) をとります。
ここでは、\(\angle TAB\) が鈍角になるように点 \(T\) を選び、\(\angle T'AB\) は鋭角になるものとします。
また、円周上の点 \(C\) に対して、弦 \(AB\) の反対側の弧上に点 \(D\) をとります。

鋭角の場合の接弦定理より、
\[ \angle T'AB=\angle ADB \]
が成り立ちます。
ここで、点 \(T\)、\(A\)、\(T'\) は一直線上にあるため、
\[ \angle TAB+\angle T'AB=180^\circ \]
したがって、
\[ \angle TAB=180^\circ-\angle T'AB \]
となります。
また、四角形 \(ACBD\) は円に内接しているため、向かい合う角の和は \(180^\circ\) です。
よって、
\[ \angle ACB+\angle ADB=180^\circ \]
したがって、
\[ \angle ACB=180^\circ-\angle ADB \]
となります。
ここで、
\[ \angle T'AB=\angle ADB \]
なので、
\[ 180^\circ-\angle T'AB = 180^\circ-\angle ADB \]
よって、
\[ \boxed{\angle TAB=\angle ACB} \]
となります。
したがって、接線と弦がつくる角が鈍角の場合にも、接弦定理が成り立つことが証明できました。
5. 接弦定理と方べきの定理の関係
接弦定理は、円に接線が引かれている図形問題でよく使われます。
特に、方べきの定理のうち、接線と割線に関する関係を証明するときにも利用できます。
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使い方・証明をわかりやすく解説2026/10/31
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円の外部に点 \(P\) があり、点 \(P\) から引いた接線の接点を \(T\)、割線と円の交点を \(A\)、\(B\) とします。
ただし、点の並びは \(P\)、\(A\)、\(B\) の順番とします。

このとき、方べきの定理より、
\[ \boxed{PT^2=PA\cdot PB} \]
が成り立ちます。
この関係は、接弦定理を使って三角形 \(PTA\) と三角形 \(PBT\) が相似であることを示すことで証明できます。
実際に、接弦定理より、
\[ \angle PTA=\angle PBT \]
が成り立ちます。
また、点 \(P\)、\(A\)、\(B\) は一直線上にあるため、
\[ \angle TPA=\angle BPT \]
です。
したがって、2組の角がそれぞれ等しいので、
\[ \triangle PTA\sim\triangle PBT \]
となります。
対応する辺の比より、
\[ \frac{PT}{PB}=\frac{PA}{PT} \]
両辺に \(PB\cdot PT\) を掛けると、
\[ \boxed{PT^2=PA\cdot PB} \]
となります。
このように、接弦定理は角度を求めるだけでなく、三角形の相似を証明する際にも役立ちます。
まとめ
この記事では、接弦定理の使い方や覚え方、証明について解説しました。
最後に、重要なポイントを整理します。
- 接弦定理は、接線と弦がつくる角が、その弦に対する円周角と等しくなる定理である。
- 接弦定理を使うときは、接線と弦がつくる角に対して、対応する円周角を探すことが重要である。
- 接弦定理は、円周角の定理と、接線と半径が垂直であることを利用して証明できる。
- 接弦定理は角度の計算だけでなく、三角形の相似や方べきの定理の証明にも利用できる。
接弦定理は、円の性質を利用した図形問題で重要な役割を果たします。
公式を丸暗記するのではなく、どの角度が等しくなるのかを図で確認しながら理解しておきましょう。