今回の記事では、初めて「相加相乗平均」という言葉を聞いた人でも理解できるように、
- 相加平均と相乗平均とは何か
- 相加平均と相乗平均の大小関係
- 相加相乗平均の不等式がなぜ成り立つのか
- 等号成立条件
- 「積が一定」のときの使い方
- 相加相乗平均を使うときの注意点
について、具体例や式を使いながらわかりやすく解説します。
相加相乗平均は、単なる公式として覚えるだけでなく、最小値を求める問題などで非常に便利な不等式です。
本記事では、相加相乗平均の基本について初学者でもわかるように丁寧に解説していきます。
1. 相加平均・相乗平均とは?
まずは「相加平均」と「相乗平均」の定義をしっかり理解しておきましょう。
相加平均とは
- 相加平均とは、足し合わせた時の平均です。
- サンプルの値を足し合わせて、その値をサンプルの数で割ることで計算ができます。
- 一般的に「平均値」とだけ言う場合は、この相加平均のことを指すことがほとんどです。
(例1) あるテストで、Aさんが40点、Bさんが90点取ったとします。その時の相加平均の値は
\begin{eqnarray}
\displaystyle \frac{40+90}{2}=65
\end{eqnarray}
と求まります。
(例2) あるテストで、Aさんが40点、Bさんが90点、Cさんが50点、Dさんが60点を取ったとします。その時の相加平均の値は
\begin{eqnarray}
\displaystyle \frac{40+90+50+60}{4}=60
\end{eqnarray}
と求まります。
相乗平均とは
- 相乗平均とは、サンプルが全て正の値の時の、掛け合わせた時の平均です。
- サンプルの数を \(n\) 個とした時、サンプルの値を掛け合わせたものの \(n\) 乗根が相乗平均です。文字だと少しわかりづらいので、以下の2種の例を参照してください。
- 相乗平均を求める際の条件として「サンプルが全て正の値であること」という条件があります。この条件がないと、サンプルの値を掛け合わせた結果が負となってしまい、ルートの中身が負となるケースが出てきてしまうためです。
(例1) あるテストで、Aさんが40点、Bさんが90点取ったとします。その時の相乗平均の値は
\begin{eqnarray}
\displaystyle \sqrt[2]{40 \times 90}=60
\end{eqnarray}
と求まります。
(例2) あるテストで、Aさんが40点、Bさんが90点、Cさんが50点、Dさんが60点を取ったとします。その時の相乗平均の値は
\begin{eqnarray}
\displaystyle \sqrt[4]{40 \times 90 \times 50 \times 60}=57.32...
\end{eqnarray}
と求まります。
2. 相加平均と相乗平均の大小関係(相加平均と相乗平均の公式)
2つの正の数 \(a\), \(b\) の相加平均・相乗平均の間では、以下の関係が成立します。
\begin{eqnarray}
\displaystyle \frac{a+b}{2} \geqq \sqrt{ab} \tag{1}
\end{eqnarray}
上記があの有名な、相加平均と相乗平均の大小関係です。
ちなみに、(1)式は変数が2個の場合の大小関係ですが、3個の場合は以下の関係が成立します。
※ただし、\(a>0, b>0, c>0\) とする。
\begin{eqnarray}
\displaystyle \frac{a+b+c}{3} &\geqq& \sqrt[3]{abc} \tag{2}
\end{eqnarray}
お察しの通り、変数が4個の場合は、以下の関係が成立します。
※ただし、\(a>0, b>0, c>0, d>0\) とする。
\begin{eqnarray}
\displaystyle \frac{a+b+c+d}{4} \geqq \sqrt[4]{abcd} \tag{3}
\end{eqnarray}
そして既にお察しの通り、変数が \(n\) 個の場合は、以下の関係が成立します。
※ただし、\(a_i>0 \ (i=1,2,\dots,n)\) とする。
\begin{eqnarray}
\displaystyle \frac{a_1+a_2+ \dots +a_n}{n} \geqq \sqrt[n]{a_1 a_2 \dots a_n} \tag{4}
\end{eqnarray}
本記事では、(1)式について重点的に解説していきます。
(2)~(4)式については、筆者に余裕があれば別記事にてまとめる予定です。
3. 相加平均と相乗平均の大小関係の証明
先ほど確認した、2つの正の数 a, b の相加平均と相乗平均の大小関係
\begin{eqnarray}
\displaystyle \frac{a+b}{2} \geqq \sqrt{ab} \tag{1}
\end{eqnarray}
を証明していきます。といっても、難しいことは何もありません。
まずは以下のように、(相加平均)ー(相乗平均)の形を考えてみます。
\begin{eqnarray}
\displaystyle \frac{a+b}{2}-\sqrt{ab} \tag{5}
\end{eqnarray}
となります。ここで、\(a=(\sqrt{a})^2, b=(\sqrt{b})^2\) であることを利用しつつ、(5)を変形していくと、
\begin{eqnarray}
\displaystyle \frac{a+b}{2}-\sqrt{ab}&=&\frac{1}{2}(a+b-2\sqrt{ab}) \\
\displaystyle &=&\frac{1}{2}((\sqrt{a})^2+(\sqrt{b})^2-2\sqrt{ab}) \\
\displaystyle &=&\frac{1}{2}(\sqrt{a}-\sqrt{b})^2 \geqq 0 \tag{6}
\end{eqnarray}
となるため、(5)式は0より大きいことがわかります。つまり、
\begin{eqnarray}
\displaystyle \frac{a+b}{2}-\sqrt{ab} \geqq 0
\end{eqnarray}
が成立することから、(1)式が証明できます。
4. 等号が成立するのはいつ?
先ほど証明した(1)式より、基本的には相加平均の値は相乗平均の値より大きくなります。
ただし例外的に、相加平均の値が相乗平均の値と等しくなる場合があります。
では、どんな時に相加平均の値が相乗平均の値が等しくなるのでしょうか。
これも難しいことは何もなく、(6)式を見れば一目瞭然です。
つまり、
\begin{eqnarray}
\displaystyle a=b \tag{7}
\end{eqnarray}
の時、相加平均の値が相乗平均の値と等しくなります。
(7)の条件は相加平均と相乗平均の等号成立条件と呼ばれ、相加平均・相乗平均の大小関係を利用する上で非常に重要な条件のため、必ず覚えておくようにしましょう。
5. なぜ「等号成立条件」が重要なの?
相加平均・相乗平均の大小関係の等号成立条件は(7)式の通りですが、(7)式を満たす時、相加平均の値と相乗平均の値が等しくなります。
これは具体的に何を意味するのか、以下の例題を元に確認してみましょう。
この問題の解法の1つとしては、\(f(x)\) を以下のように定義し、微分してグラフを求める方法があります。
\begin{eqnarray}
\displaystyle f(x)=x+\frac{16}{x} \tag{8}
\end{eqnarray}
まずは試しに、相加相乗平均の関係式を使用せずに微分で最小値を求めて見ましょう。
(i) 微分を用いて解く方法
\(f(x)\) を \(x\) で微分すると、
\begin{eqnarray}
\displaystyle f'(x)=1-\frac{16}{x^2} \tag{9}
\end{eqnarray}
となるため、これらの情報を元に増減表を書くと以下のようになります。(問題文より、\(x>0\) の場合だけ考えればよいことに注意しつつ増減表を書きます。)
| \(x\) | \(0\) | ・・・ | \(4\) | ・・・ |
| \(f'(x)\) | 未定義 | - | 0 | + |
| \(f(x)\) | 未定義 | \(\searrow\) | 8 | \(\nearrow\) |
増減表より、\(x>0\) の時、\(f(x)\) は \(x=4\) の時、最小値は \(8\) を取ることがわかります。
微分を学んだ高校生であれば、上記のような解き方でも十分正解です。
しかし、相加相乗平均の関係式を利用することで、もっと簡単に例題1を解くことができます。やってみましょう。
(ii) 相加平均・相乗平均の大小関係を利用して解く方法
相加平均・相乗平均の大小関係より、
\begin{eqnarray}
\displaystyle x+\frac{16}{x} \geqq 2 \sqrt{x \cdot \frac{16}{x}} \\
\displaystyle \therefore \ \ x+\frac{16}{x} \geqq 8 \tag{10}
\end{eqnarray}
が成立します。
(10)式は、\(x>0\) を満たすどのような \(x\) の値を代入しても、\(\displaystyle x+\frac{16}{x}\) の値は \(8\) 以上となる、ということを意味します。
納得が難しい方は、実際に \(\displaystyle x+\frac{16}{x}\) に色々な値を代入して確かめてみることをおススメします!
どのような正の数を \(x\) に代入しても、\(8\) 以上の値になるはずです。
では(10)式をもって、\(\displaystyle x+\frac{16}{x}\) の最小値は \(8\) であるということができるかというと、実はできません。
何故ならば、「\(\displaystyle x+\frac{16}{x}\) が \(8\) 以上である」ということと、「\(\displaystyle x+\frac{16}{x}\) の最小値が \(8\) である」ということは、同じ意味ではないからです。
「\(\displaystyle x+\frac{16}{x}\) が \(8\) 以上である」
⇒最小値が \(9\) や \(10\) となる可能性もある(「\(8\) より大きい値を取るよ」としか言っていない)。
「\(\displaystyle x+\frac{16}{x}\) の最小値が \(8\) である」
⇒最小値は \(8\) 以外あり得ない。
そのため、最小値が \(8\) であることを示すためには、実際に \(\displaystyle x+\frac{16}{x}=8\) を満たす \(x\) が存在することを示さなければいけません。
ここで活躍するのが、相加平均と相乗平均の等号成立条件です。
等号成立条件より、以下の等式を満たす \(x\) の値が存在するとき、相加平均の値と相乗平均の値は等しくなる(≒相加平均は最小値を取る)。
\(x>0\) であることに注意して、等号成立条件を満たす \(x\) の値を求めると、
\begin{eqnarray}
\displaystyle x=\frac{16}{x} \\
\displaystyle \therefore \ \ x=4 \tag{11}
\end{eqnarray}
となり、等号成立条件を満たす \(x\) の値が存在することが確認できたため、ここで初めて最小値が \(8\) だと言えるわけです。
つまり例題1の回答は、以下のようになります。
相加平均と相乗平均の大小関係を利用して最小値を求める際は、必ず等号成立条件を確認するようにしましょう。
6.「積が一定」のときに使うと強力
先ほど見ていただいた通り、相加相乗平均の大小関係は、最小値を求めるような問題で非常に有効です。
特に、積の値が定数として与えられているような問題では特に有効であり、答えが一瞬で求められる場合があります。
具体的な例で見て見ましょう。以下のような問題があったとします。
このような問題では、相加平均と相乗平均の大小関係を利用しましょう。以下、回答です。
このように、積の値が定数として与えられている場合、非常に強力な道具となるので、頭の片隅に入れておくとよいでしょう。
7. 相加相乗平均を使うときの注意点
これまで説明してきたように、相加平均と相乗平均の大小関係は数学問題を解く上で非常に強力です。
しかし、この大小関係を利用するためにはいくつか注意点が存在します。
最後にその注意点について、まとめておきましょう。
相加平均と相乗平均の大小関係を利用する上での注意点
- 大小関係に利用する変数がいずれも正の値であること。
- 最小値を求める問題でよく利用する。
- 大小関係を用いただけでは最小値を求めたことにはならない(必ず等号成立条件を確認するようにする。)
- 積の値が定数となる場合に非常に強力。
上記に注意しつつ、相加平均と相乗平均の大小関係を使いこなすようにしましょう。
まとめ
今回は、相加相乗平均について解説しました。
相加相乗平均は、特に「積が一定のときの和の最小値」を求める問題で威力を発揮します。
単に公式を暗記するのではなく、
「正の数について、相加平均は相乗平均以上になる」という意味と、等号成立条件はセットで覚えておきたいですね。
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